事務局 
 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきたいと思います。本日は「くらしとあかり」エキシビション・キックオフミーティングにご参加いただき、ありがとうございます。まず今回の「くらしとあかり」実行委員長の、私ども遠藤照明代表取締役社長、遠藤良三からごあいさつをさせていただきます。


遠藤 
 ご紹介いただきました遠藤でございます。今日は本当にお忙しい中を多数お集まりいただき、また日ごろは大変ご愛顧をいただき、ありがとうございます。この企画についての趣旨は、このあと、真壁さんの方から詳しくご説明させていただきます。

トーク写真

 すべての生き物の源といいますか、私どもは「あかり」や「光」の中で、光がすべてというぐらいに、生まれ、育まれているのですが、その割には、意外と光に対して無頓着で、あまり考えることも少ない。光についてどうこう言っても、つかみどころがなく、難しいので、もっとわかりやすくできませんかと、ある機会に真壁さんに相談したところ、この企画が生まれました。


 私どもは照明という仕事を通して、「光」「あかり」を通してこれだけお世話になっているにもかかわらず、特に何もできておりませんでしたので、社会貢献と言いますと口幅ったいのですけれど、我々遠藤照明ということではなく、一つの社会貢献として、「光」「あかり」というものをもう少し身近に感じられるようなものを、ご提供したいと思っておりました。


 そして、光の与える影響や効果やいろんなことを身近に感じられる、そういった啓蒙活動ができれば、我々にとって幸せかと思っております。関係者の方にはかなりご負担をかけ、ほとんど無償で運用をお願いしているような状態ですが、大変時間をとっていただいて、「光」をみんなと一緒に考えていただいております。


 この「光」という業界も、最近やっと体内時計の研究などが進み出したり、あるいは、LEDを代表としたいろいろな光源が今、日進月歩で開発されており、本当に目が離せない、おもしろい業界になって参りました。そういうことも含めまして、皆さまと一緒に「光」について考えたり、議論できればと思っております。今日お集まりの皆さまにも、参加なりご協力なりをいただきながら、ぜひ、この企画が成功するようにご支援のほどをよろしくお願い致します。本当に今日はお忙しいところ、ありがとうございました。


事務局 
 それでは、ここからは、今回のプロデュースをしていただいている真壁さんに進めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


真壁 
 真壁でございます。今般、遠藤照明さんから、今、遠藤良三さんのお話にありましたようなご理解を経て、「くらしとあかり」プロジェクトをスタートすることができました。


 このプロジェクトは、大きく二つのもので構成されております。一つは、今日皆さんにご説明申し上げる、建築家と照明家のコラボレーションによる6回のエキシビション。もう一つは、このエキシビションの内容も咀嚼しながら「くらしとあかり」に関するわかりやすい本をつくるというものです。この本は、照明をわかりやすく伝える本というよりは、あかりのあるくらしに希望が持てるような本になっていかなくてはいけないだろうと考えています。ですから、あくまで従来的な照明のわかりやすい本ではなく、くらしを軸にあかりを考えた、そういう楽しさのある本にしていければと思っております。


 エキシビションは2009年の前期まで続きます。まず建築家が「くらしとあかり」のイメージをプロポーザルしてアイデアを出し、それに対して照明家がテクニカルな肉づけ、あるいは技術的な可能性を示唆する、というところから、このプロジェクトは始まりました。今日これから6人の建築家、6人の照明家がそれぞれのプロポーザルを発表するわけですが、あかりというのは大いにセンスが関係していると思いますので、皆様には建築家・照明家の6回のエキシビションの組み合わせをお考えいただき、それを事務局の方で参考にしていきたいと思っております。


 それでは、一番肝心なこの「くらしとあかり」のプロジェクトの背景にあるものを、ご説明申し上げます。


 おおむね建築家は住宅における照明に対して、いら立ちとあきらめを根底に持っていると思います。一つは灯具主導型のあかりに辟易している。もう一つは照度・配光主義によるあかり。これも、あまりに教科書的でうんざりしている。この状態が長く続いているわけです。


トーク写真

 商業施設は、売り場環境としてホスピタリティーの高い空間ということで、灯具や照度・配光技術が比較的受け入れられやすいのですが、住宅は、物と技術も当然重要だけれども、そこに向かうべきコンセプトやビジョンが非常に重要になってきます。ところがそれらがどうも見えづらい。この状態をそろそろ何とかしなければいけない時期に来ていると思います。


 例えば北山恒さんは、デコン以降、あまりにも形態に依拠した建築が、だんだん骨抜きになって、ファッション化して、消費の仕組みにどんどんはまっているとおっしゃっていますが、そうした軽い建築の中に、作り手と受け手がもっと距離を縮めるような、塚本由晴さんの言葉を拝借しますと、弱い主体に向けた建築ということになってきていると思います。


 つまり、今、建築の中で生じている明らかなことは、軽い建築の中に意思を持った建築が生まれ出してきているということです。これは、今日のプロポーザルの中に色濃く出ていると思います。どうしたら住まい手の今の状況を打破できるのかという、くらし方とあかりの提案がここにあるわけです。こうした建築の動きも含めて、建築家と照明家が同じテーブルで、先ほど申しましたようないら立ちを解消していくような、あるいはクリエーティブに前に進めていくような場面をどうしてもつくりたかった。これが、「くらしとあかり」プロジェクトの背景にある一つの大きな考えです。


それでは、建築家のトラフさんの提案から説明していただきます。トラフさんは、目黒にあるホテル「クラスカ」というビジネスホテルのリノベーションを手がけられ、見事に蘇生した施設の一つとして評価されています。ある意味では凡庸なものに手を加えていきながら、自分たちの感性を加えて価値を上げていくという、言ってみれば、今の若い建築家の資質を十分に持った代表格ではないかと思います。


 お2人は32、33と最年少なのですが、「くらしとあかり」をテーマに、住宅の中にどのような「あかり」をイメージしてプロポーザルをおつくりになったのかを聞いてみたいと思います。では、お願いします。