<オンラインセミナー>〈照明デザイナーによるオンライン実践講座その1〉自然界の光の現象を、建築に取り込む 画像

全4回-照明デザイナーによるオンライン実践講座 第1回目です。

2021年10月28日照明デザイナー/株式会社 フェノメノン ライティング デザイン オフィス 代表取締役 永津努さんをお招きし、自然界の光の現象をどのように建築に取り込むか、お話しいただきました。

Speaker

永津努

永津努 Tsutomu Nagatsu
(照明デザイナー/株式会社 フェノメノン ライティング デザイン オフィス 代表取締役)

1979:神奈川県生まれ

2005~2012:Lighting Planners Associates Inc.

2013:Phenomenon Lighting Design Office 設立

2015:株式会社 フェノメノン ライティング デザイン オフィス 設立


主なプロジェクト:「慈恵大学病院 外来棟」「TOMORU」「Wellith One Aoyama」「ホテルリソルトリニティ大阪」など

http://phenon.jp/

ホテルリソルトリニティ大阪 画像ホテルリソルトリニティ大阪
設計:式座 写真:小川重雄

TOMORU 画像TOMORU
設計:大成建設 写真:五島健太郎

見逃し配信



参加者の声

  • 光で風を表現することや、器具の意匠よりも光そのものを表現の手段とする考え方が素晴らしいと感じました。
  • 自然界の光からインスピレーションを得ていたり、 光が精神的に与える影響を考えたり、 どれも意味のある光で、伺っていてとてもわくわくしました。
  • 照明デザインに関する実務の内容について知れる貴重な時間を過ごさせていただきました。 照明の計画をされる際に、明るさというよりも、何か超越したものを見据えて計画されているのだと感じました。このセミナーから、さらに照明に興味を持つようになりました。

イベントレポート

事務局:本日は〈照明デザイナーさんによるオンライン実践講座その1〉と題し、永津さんには、”自然界の光の現象を建築に取り込む”をテーマとして、照明デザインをされる時に、まず意識する事、大切にされている事、そのイメージのまとめ方、そしてその手法についてお話いただきたいと思っております。

『照明デザインにおいて大切にしていること』について

永津「いろいろと整理していく中で、うちのスタッフとも普段どうゆう話をして、何を大切にしているのか、どのプロジェクトでも常に気にしている6項目をピックアップしてきました。」

トークテーマ 6項目 画像

人に寄り添う空間と光環境

永津:1つ目は”利用者の気持ちに寄り添う”という事です。ついつい建築とかインテリアの空間で、こうしたらかっこいいとか、こういう所に光を置いたらすごい綺麗に見える、というのはビジュアル的な部分のバランスで直感的に感じる事はあるんですが、それ以前に気をつけてるのが、実際の利用者の目線に立った時に、その人がそこに訪れるシーンです。例えばホテルだったら、滞在して泊まってどういう1日を過ごすのか。商業でも、基本商業は”晴れの日”を楽しみに来る場所なので、晴れの日を楽しみに来る心情だったりとか。わくわくしながらそこに訪れる、じゃあどういう”わくわく”が必要なのか、そういうのを考えていく必要性がすごいあるなと思っています。なので1番は利用者の気持ちに寄り添うことがすごい大事だなと思います。

2つ目の”空間の魅力を引き出す”です。先ほど言った、その空間の予算とか建築家の方々、インテリアデザイナー、ランドスケープの方々が設計した空間の魅力をさらに照明で引き出していくっていうのは常に考えています。

3つ目は”人と空間の間で生まれる感情や呼吸を意識する”です。1つ目に近いんですけど、そこに訪れる利用者が1番最初にここに一歩足を踏み入れた時に、どういう気持ちになってもらいたいかっていう事です。例えば、「はっ」と息をのんで欲しいのか、「はぁ~」と落ち着いて欲しいのか、呼吸と空間の間には、なんかそういうものがあるんじゃないかと思っていて、僕もいい場所に行くと、自然と呼吸もリラックスした呼吸になったり、逆にピリッとした空気感の場所だと少し息をぐっと止めたりするので、そういう感覚と光って密接だと思っていて、意識してやっています。

4つ目が”周辺環境の相性や土地の特徴との親和性”です。例えば、真っ暗な周辺環境にすごい煌々と明るい建物が本当にいいんですか?とか。東京で流行っているものをそのまま地方に持ってきて本当に流行るんですか?とか。ちゃんとその土地柄だったり、光環境として周辺環境とのバランスっていうのはとても大事だと感じています。

次に、5つ目の”照度感”です。いろんなプロジェクトをやっていると、本当にその照度感で本当にいいのかどうかは、いまだに悩みます。例えば、後ほど見せます、駅の場合とかだと平均照度の500Lx取りなさい、300~700Lxで取りなさいとかルールが決まっている部分があります。でも実際、床面でその照度を取って本当に大丈夫かって考えたときに、日本人の頭の髪の毛って大体黒いんですよ。それが、例えば東京駅とか品川駅とか新宿駅とか、乗車数・利用者数がすごい多い駅だと床が見えないんです。いくら明るくても、結局暗く見えたりするんですよ。そうした時に数値だけでないだろとか。商業は商業で500Lxとか1000Lxだったり、ホテルとかになると急に100Lxになったり、その感覚の違いというのは、毎回周辺環境を含めて悩ましいところです。

最後6つ目の”光と影のバランス”です。これもとても重要視しています。大きくはこの6つが整理すると自分の中ではあるかなと思います。


                 

自然界の光の現象を取り込む

永津:自分の中でもそれは割と意識をしているので、実際のプロジェクトを通して説明していきます。


木漏れ日 画像

心地よい時を感じる現象

永津:まず1番の”心地よい時を感じる現象”という事で、これは自然光の写真ですけど、こういう木漏れ日感を感じる演出ができるかもしれないから、ちょっと頑張ってみませんかっていう提案をして、皆さんもぜひやってみましょうということになったので、実験した時の動画です。(動画上映→詳しくは、アーカイブ動画をご覧ください)
こういうような形で、この木漏れ日という効果を、デジタルなんだけどなるべくデジタル感を感じさせないようにできないか考えて、デザインしたパンチングパネルの穴あきのところから、裏に光源を仕込んで、そこから光を漏らすことによって、1つの光であっても、複数の穴からいろんな形で出てくる。それが逆にデジタルではなかなか表現できない偶発性ができたりしてくるのですごい面白くて、これなら割とナチュラルな木漏れ日のイメージが作れるんじゃないかっていう事で提案しました。

実験 画像

光源は1個?

永津:光源は中にグリット状に入っています。
それが点滅して、こういうような形の演出ができる。先ほどの動画は光源も素子1個じゃないと光が綺麗じゃないんです。素子がたくさんあると、光の出方も過重になってしまうので1つの光で出さないと自然光に見えない。ただそれを、普通のアクリル越しやガラスフィルムでやると透過率が低いのであんまり明るく出ない。その為に、アクリル自体も拡散率と透過率の高いものを選んでいます。どれが1番明るく見えるか、表現に近いかを実験していました。こういうような光の演出で、光がぷわーっと当たってきたりとかっていうのを、特別な場所・空間として設えられないかというプロジェクトです。ちょっとした動きですごい木漏れ日のような演出もできるし、その木漏れ日の位置が低くなると、夕暮れのような感じにも見えてくるし、さらに点滅の仕方や速度とかを変えると、窓に雨粒がポンってかかってスッと消えるようなしっとりとした表情もでるし、いろんな表現ができるっていうのですごい面白いです。実際に昼は重心が高く、夕方に低くなっている演出をしています。


慈恵大学病院外来棟 画像

降り注ぐ太陽光の安らぎ

永津:これは、西新橋にある慈恵大学病院外来棟です。一般外来の人たちが訪れる場所で、竹中工務店さんと一緒にやらせていただいたプロジェクトです。空間がずれて、吹き抜けがあり、6階の部分からハイサイドライト入ってくる計画になっています。利用する患者さんは、予約してから外出たり院内で過ごしたりします。”1つの街としてここを使いたい”というのが建築のテーマでもありました。僕はそうゆう話を聞いて、ここの吹き抜け空間をどうにか生かせないかと考えました。ずれている、でも一体感として見せたいなと。実際、元気な時ってなかなか病院って行かないですよね。何か患って行くじゃないですか。従来の病院って、割と寂しい空間だったり、冷たい空間だったりするので、それをどうにか払拭したいなと思いました。患者さんがほっとできる、ここに来ると前向きになれる。そして、そこに付き添う家族や毎日毎週来られる方の陰の気や不安をなるべく減らして、少しでも安らげる空間を作ってあげたいなと思って、”サニーステップ”いうコンセプトで、光が上から降り注いでくる計画をしました。ちょうどこのハイサイドライトから壁を伝って、天井を伝って下に光が落ちてくるイメージで、この空間の骨格が作れないかなとチャレンジしました。竹中工務店さんがすごい賛同してくれて、実現しました。



慈恵大学病院外来棟 画像

プロジェクトの実現に大切なこと

永津:僕ら照明デザインだけでも前に進みませんし、みんなでお互いの力を合わせながらやったからこそ実現できたと思っています。そう感じるんで、建築さんとはよく話すべきです。こういう空間だから、ここに光をおいてっていうのではなく、どう施設としてしてあるべきかっていうところから一緒になって議論できるとよりいいなととても感じます。



慈恵大学病院外来棟 画像

自然と上を見上げたくなる仕掛け

永津:さらに、この光膜で演出ができないかということで、”プレゼントウィンド”街の光風っていう形で、街の中に吹く風を表現できないかという提案をさせてもらいました。病院で時間を感じるとつらいんです。なので15分に1回とかなるべく時間を感じさせない時間設定をしています。そこで自然と流れる。これが、1階の部分と3階、4階と続く形で、気が付いたときに光膜の中で、そのような演出が流れるというなことになっています。なるべく利用者がここに来ると楽しめる空間になって欲しいなと思い、提案をしてみました。動画があるので流します。(動画上映→詳しくは、アーカイブ動画をご覧ください)

吹き抜け空間のところでは、ダウンライトなどを一切使わずに、この光膜だけにしています。そうする事によって、見上げた時の解放感が作れるかなと思いました。なので、吹き抜け部分が1つの庭園のような、みんなの広場的な形になっています。診察側へ行けば行くほど、だんだん室内になっていく形なので、室内にいながら外と内を作る計画しました。この送管部分を送管として見せたくなくて。でも、そうすると送管部分で暗くなるので、吹き抜け部分にダウンライトでベースを取らなくちゃいけなくなってくるんです。でも、せっかく病院で気持ちを上にあげてもらいたいのに、目線が上に上がらない空間ってすごく窮屈になるなと思ったので、こういう空間の方が上下にもつながってきますし、自然と上を見たくなると思いました。数値で言うと大体光膜の下で2000Lxくらいとれるようになっています。周辺の環境が大体200~300Lxで計画しているんです。メインの人が通るこのルーバー部分だと、もう少し明るくて400Lx弱としています。そのくらいの照度差が必要です。あとは色温度の差。自然光を表現するなら、5000Kとか6000Kで出せるんじゃないか、というのもあるんですけど、自然光をただただ表現するだけが目的ではなくて、ここを利用する方の気持ちを和らげられるかが目的なので、ここでの色温度の差は500Kしかないんです。全体が3000Kで光膜が3500K、日中も使うし夕方以降も使うっていうことも考えた時に、あんまり昼間になりすぎず適応できるようにこの設定になりました。


上野駅の公園口駅舎 画像

光風流れる景観

永津:光風って”春に吹く風”ということで辞書に載っているんですけど、そうゆうような風を感じる景観です。上野駅の公園口駅舎は、4・5年前から関わらせていただいて、この写真の半分から向こうが旧公園口駅舎で、その駅舎を利用しながら新しい駅舎を組み合わせて作られています。建築はJR東日本建築設計事務所さんです。どしっとした重厚感あふれる建物というよりかは、このルーバーがうねっているような形だったりとか軽やかで動きがあるような設計でした。じゃあ照明で何ができるかというところで、ここの上野公園自体が、恩賜公園なので動物園もありますし、世界遺産になった西洋美術館もありますし様々な文化が生まれてきた場所として、駅もただ駅舎として見せるだけではなく、少しここの感受性を表現できないかなということで、あまり景観を壊さずかつ少しアート性を感じるような流れで風を吹かせたいということになりました。なのでここも、ルーバーに光を纏わせて、その中で風が流れるようにしています。なぜ流れるようにしたかというと、存在感を感じないでほしい時と、感じてほしい時があるんです。利用するお客さんも、ここはアプローチが長いので、歩きながら上野が新しい場所として見せていきたいなっていう思いで計画しました。

上野駅の公園口駅舎 画像

コストとメンテナンス性も考慮した計画

永津:ルーバーの間に光源を仕込んで、照らしています。断面でいうと、このような形です。ルーバーより照明器具が出てしまうと日中に照明が見えしまうので、なるべく抑えながら。また、1つのルーバーにたくさん照明器具をつけてしまうと、コストもかかるので、ルーバーの間に1つの照明器具を下と上につけています。あとは、取り付け位置は一緒なんですが振り向きの角度調整ができるようになっています。ルーバーが建物に対して、少し斜めに出ているんです。建物自体も垂直・水平になってるわけではないので、縦軸横軸の振り分けができないといけない。ルーバーの角度も、下がってくるものもあれば、上がってくるものもあるので、それに1つの器具で順応しなければならないので、調整できるようにしました。かつ、鳩が止まらないようにとか汚れがあっても流れるように断面形状を山なりにして、メンテナンスもできるように考えました。そして、器具1つ1つは調光と調色ができるようになっているので、光が風に流れるように設定しました。色温度を変えるにあたって、ただ色温度を変えるのは面白くないので、色温度ってやっぱり温度というだけあって目から感じるんです。僕は特に、夏に電球色で明るいと暑苦しく感じるんです。逆に冬につめたい白色の白い光って寂しくて、お酒を飲んで気を紛らわしたくなるじゃないですか。なので、冬は暖かい光。夏は涼しい光。春は春。秋は秋で、2700K、3000K、4000Kで構築しています。やっぱり、春は春の風が吹くし、夏は夏の風が吹くし、ということで、その季節に合わせた色温度、光の風をながしていく計画にしています。


FAN JAPAN 画像

縁側越しに眺める庭

永津:光の細かい現象を表現するという事とは、また違ったやり方を取り込んだ内容になります。これはマレーシアにあるFUN JAPANというショッピングモールに入っている店舗です。このモールの吹き抜け空間の中から、1番よく見える場所なので、外からの見えも意識したい。日本の文化も伝えたいショップだったので、中に入ってきた人を、1つの舞台の演者になるような空間を作っても面白いんじゃないかっていう話をさせてもらいながら計画しました。今回は建築さんがインテリアデザインもされたんですけど、山﨑 健太郎さんと一緒にやらせてもらったプロジェクトです。1番最初にお声がかかった時に、「陰影礼賛をテーマとしてやりたいです。」ということで、ハードルが高いなと。それで、心地よい陰影のグラデーションを作っていきましょうと提案しました。店舗の場所の関係性を考えたときに、陰影礼賛でただ影の世界を作りましょう。というわけではなく、1つの舞台のように見せれたら面白いなと。なので外から見た時にここで買い物をするお客さんが1つの舞台に上がったら、演者さんに見えるよねっていう事と、その空間の中でのゾーニングとして、室内から外の庭を楽しむような、日本建築の居間があって縁側があって、庭園がある。といったときに、ここのエリアもそうゆうゾーニングをにしませんか、ということで、手前の什器物販から奥のカフェをルーバーの格子越しに、用は日本家屋でいうと、障子越しに庭を楽しむ感覚の空間を作りませんかということで計画しました。

FAN JAPAN 画像

日本文化を表現したゾーニングの考え方

永津:実際の環境としては、奥に行けば行くほど中じゃないですか。だけど、ゾーニングの考え方としては、中から外を楽しむ。そして、その店舗から離れていくと1つの舞台として見える。なので、什器も横に並べてもらって、高さを変えてもらって、そうすることで、人が入ってきたときに、見えなかったり見えたりする提案をさせてもらいました。そして、中から外を見るっていう景色を作りたかったので、基本的にはこの縁側ゾーンにある格子の什器には照明を一切当てるのをやめましょうというところから始めました。ショッピングモールの店舗と考えると、しっかり光を当てて全体的に明るくするところですが、海外だから許されるかなという期待もあったのと、日本の文化を出したいっていうお客さんの要望もあったので、じゃあもう従来の店舗の考えじゃなくて、もっと思い切って振り切ってもいいんじゃないですかっていう事で実現しました。

FAN JAPAN 画像

素材と光

永津:写真だと、すごくルーバーが明るくなっているんですけど、実際はもっとシルエットになっています。照明器具もなるべく見せないように、かつ什器とかは今後変わる可能性もあるので、ライティングレールを2本はさんで、なるべく1つのところからどちらにも演出ができるように、こうゆう納まりを現地の職人に作ってもらいました。間の格子には光が当たってなくて、奥の壁は錫箔なんですけど、この錫箔がよく見えるように、中から外を楽しめるようにしました。錫箔って、普通に張ってしまうと、光がのらないんです。それも建築さんと議論して、もう少ししわを入れてくださいとお願いしました。とはいえ建築さんは綺麗に張りたいじゃないですか、でも綺麗に張ると結果、綺麗に見えませんよ、というところで、どうにか納得してもらいました。またこれが間接照明だと全然見え方が変わって、上の方に光が溜まってくるんですが、当時はウォールウォッシャーでやわらかく照らしたいという感じでやっていました。


LOQUAT 画像

夜空を楽しむ古民家

永津:これは、西伊豆にあるLOQUATです。もともと住まわれている方々がいて、母屋と蔵があります。そこをホテルの一角としてリニューアルしたい、というところで始まったプロジェクトです。これは乃村工藝社さんと一緒にやらせていただきました。古民家再生計画っていうところで、いかに建物そのものを活用しながらできるかという事と、その土地柄ですね。西伊豆の土肥というところなんですけど、もともと木炭とか炭、あと金を作っている場所なんです。歴史がある場所でもあったので、インテリアの方には炭のような素材を入れ込んだり、照明にもちょっと金を感じる要素を入れました。それで現地調査に行ったら、やっぱり星空がきれいだったんです。水銀灯とかLEDとかで、遮るものはあるんですけど、ある一角に入ると星空がすごい綺麗で、これは大事にしていきたいねっていうところで、あんまり華美にならず、心地よい光環境を作っていこうという事になりました。よくプロジェクトでこういう説明をします。適光適所とかグレアコントロール、適正な色温度と照度設定を掲げながら、お客さんにどういうストーリーで、どういう動線を作って、どこで驚きを感じてもらいたいか、ポイントをつくって計画をしました。これが実際出来上がったものです。なるべく煌々とせず、歩いていて楽しい。そんなに広い場所ではないので、植栽とかはなるべく光の重心を低くして、その分目線から上、空を見やすくすることを意識したプロジェクトです。庭の樹木とかも煌々と明るすぎると、空が消されちゃうんで、輝度感も大事にしました。

                 
ペンダント 画像

その土地の要素を感じる照明

永津:部分的なペンダントの内側は金のような仕上げになっていて、この場所ではダウンライトは使わずに、このペンダントだけで過ごしてもらうようになっています。改めて思うと、ペンダントってもともと明るさを取るための照明器具じゃないですか。最近僕もテーブルタッチでダウンライトとか入れちゃうんですけど、ペンタントって用途として意匠だけじゃないよねっていうことで、今回はこのような計画になりました。

                 
お風呂 画像

夜空を楽しむ古民家

永津:ここの露天風呂は、夜空を見上げながら楽しめるようにしています。お風呂って毎回難しいと思っているんです。扉を開けてここに入ったときのインパクトとしては、上からすっと光が落ちている方がかっこよく見えるし、印象的に見えるし、綺麗なんです。でも実際お風呂に入った時って、上に照明があるとすごく眩しいんです。なので、なるべく上を見上げた時も目になるべく入らないようにずらして計画します。ただ、水盤の中がある程度明るくないと階段とか湯舟の中でけがをすると危ないので、ある程度明るさは取らないといけないです。かといって上にブラケットがあるとかっこ悪いし邪魔だしとか、毎回悩むところです。


ホテル 画像

自然の中に佇む山小屋

永津:これはタカオベというホテルですね。外を楽しむ、アクティブで山登りを楽しみながら泊まれるホテル。山小屋的なホテルを作りましょうということで照明器具もあまりプロダクト過ぎない、アナログ感を感じながら楽しめる空間にしましょうということで計画しました。かつ、やっぱりここの特徴を出したいっていうのもあって、ここはロビーなんですが、内装はすごいシンプルなんですけど、照明の方で色付けをさせてもらいました。蛍光灯みたいなのが、乱雑で入ってるとか、ちょっと無機質なんだけど印象に残るような計画をしてます。ちょっと手作り感を感じながら、山小屋の暖かさを感じながら高尾山を楽しむ計画にしています。

ホテル 画像

アイキャッチとしての照明

ここは、カフェエリアなんですけど、スリム管みたいなものを両サイドに持ってきて、これが外から見ると1つの輪郭のように見えてきて、1つのアイキャッチとして、ここの特性を作っていくという感じです。どこか手作り感もあるし、どこか温かみがありながらも、かつ無機質になりすぎず、というところを狙いました。2階は、合宿でも使うから全体的に明るくしてくれということで、1階はラインだから2階は印象変えましょうかと。わりと建築の方もこうゆうのが好きな方で、サークラインをフレーム無しで取り付けました。一応調光はできるようにしています。


事務局:人に寄り添った光だったり、光にインパクトを与える動きだったり、はっとさせられる事が沢山ありました。
そんな永津さんに”発想の原点”を教えていただきました。

発想の原点

さまざまな光をご提案されてきたと思うんですが、難しい時を乗り越える為に普段から意識していることって何ですか?

発想 画像

永津:難しいですね。乗り越えなきゃいけない時は、歯を食いしばって頑張るんですけど。なにか来た時に準備はしておきたいなとは思うので、来てから考えるよりは、いろんな情報は仕入れるようにしています。体験をすることはとても大事だと思っています。
間接照明1つとっても良く思うのが、ちゃんと綺麗にやるとすごい綺麗なんですよ。よく間接照明で、光源かくして間接光です。ってなるじゃないですか。ただ、カットオフライン。光がどこまで伸びるのかを意識されているのって、特に照明デザイナーが入っている場合は気を付けるんですけど、そうじゃない場合に、間接照明こういう感じですよねでやっちゃうと光が汚かったり、光のラインが出てしまうと、せっかくの間接照明がすごく損なわれる。それをすごい綺麗にすることによって、手法はありきたりかもしれないですが、空間としてはすごい美しく見えるっていうのは大事なのかなと思います。ただ新しいことは新しことですごく大事ですけど、やっぱりそういったところがあった上での新しいチャレンジだと思います。その乗り越えるためのポイントというところでは、やっぱりそこに行き着くのかなと思いますね。1個1個やっぱり丁寧にしていくっていうことが、その結果に結び付いてくるなって思います。

                                   
発想 画像

発想の原点は、いろんな光を体験するとか、自分が楽しめるって事だと思っています。なのでこういうちょっと写真撮った時に、ああすごい景色が面白いなとかそこの奥に何か新しい空間見えてきそうだなとか。ただ見て綺麗というよりかは、そっから先どういったことが起きているんだろうと頭の中で想像するのもすごい勉強なので、そうゆうのを常に考えて、物事を見るようにしていますね。例えばこれはチャンプとか行くんですけど、その時にこれ月明かりに照らされてる富士山なんですよ。昼じゃないです。これ夜空で雲の切れ間から月明かりが入って照らされている富士山、やっぱりすごい透明感があったりとか、すごいわずかな光の中でのその綺麗さというものを、やっぱり見ないと感じられないので、なるべくそうゆうのを感じ取って、いろんな自分の引き出しを多くつくっていくのは大丈夫かなと思っています。


事務局「永津さん、今日は楽しい時間をありがとうございました。9月に続き、今回は永津さんにお話しいただきました。12月は早川さんという照明デザイナーさんと続いていきます。また永津さんとは違う切り口でお話しをうかがえると思います。まだまだ続きます。引き続き、宜しくお願いいたします。」 ※このページは、2021年10月28日(木)に行われたオンライントークイベントのレポートです。

時間や季節に応じて色温度や明るさを変え「自然界の光の現象」に近づける事ができる、次世代調光調色『Synca』は、以下WEBページで詳細をご確認いただけます。

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