<オンラインセミナー>〈照明デザイナーによるオンライン実践講座その2〉色鉛筆を使って、人の視線や行動を考える 画像

全4回-照明デザイナーによるオンライン実践講座 第2回目です。

2021年12月9日、照明デザイナー/灯デザイン 主宰 早川亜紀さんをお招きし、色鉛筆を使って、人の視線や行動を考えていきました。

Speaker

早川亜紀

早川 亜紀 Aki Hayakawa(照明デザイナー/灯デザイン 主宰)

1976:埼玉県生まれ

2001~2005:Lighting Planners Associates Inc.

2006~2012:有限会社サワダ ライティングデザイン&アナリシス(SLDA)

2013:灯デザイン 設立


主なプロジェクト:「「だんだん」保内児童センター・保内保育所」「山中湖村平野交差点バス待合所・観光案内所」「小学館ビル」「道の駅ファームス木島平」など

https://www.toh-design.com/

「だんだん」保内児童センター・保内保育所 画像「だんだん」保内児童センター・保内保育所
設計:アンブレ・アーキテクツ 写真:鈴木研一

道の駅ファームス木島平 画像道の駅ファームス木島平
設計:STARPILOTS 写真:Toshio Kaneko

見逃し配信



参加者の声

  • 照明の3つの要素「ふわっ」「ぱしっ」「きらっ」を組み合わせるということがわかりやすく参考になりました。
  • 実例に沿って実践的なお話で参考になりました。 単純で手入れしやすい器具選びや配灯時のシーンへの配慮など、捉え方考え方を再認識することができました。
  • 楽しく拝聴させて戴きました。 どう見せたい、どう過ごしたいからこうした。 というプロセスが、共感とともにとても勉強のなりました。

イベントレポート

事務局:本日は〈照明デザイナーさんによるオンライン実践講座その2〉色鉛筆を使って人の視線や行動を考える」と題しまして、早川さんには照明をデザインされる時、まず意識すること大切にされていること、そのイメージのまとめ方、そしてその手法について、盛り沢山お話をいただきます。今回、事前にたくさんのご質問を頂いておりまして、その中から事前に質問を5つ選ばせていただきました。そのご質問にどんどんとお答えいただきたいと思います。

質問1:プロジェクトで最初に取りかかることは何ですか?

早川「図面に黄色い色鉛筆をもってグリグリ塗るところから始めます。」

トークテーマ画像

そこに流れる時間を紐解く、黄色い色鉛筆

早川:住宅をベースにまずはお話させてもらおうと思うんですが、住宅だと皆さんイメージしやすいかなと思っております。ここに描いているのは、逗子の方の別荘のだいぶ最初の頃のスキームになります。建物のボリュームが1、2、3、4、5個。四角いボリュームが5個ずれながらあって、真ん中にコリドーとして、軸線が通っているというような建物です。住宅照明っていうと、いろんなセミナーだったりとか本とかで、キーワードが出てくること多いと思います。JIS照度基準にも書いてありますが、全般照明と局部照明をうまく使ってくださいということが書いてあったりとか、タスク&アンビエント、あと一室一灯に対して多灯分散照明をしなさいとか、いろいろ書かれてることがあると思うんですが、横文字だったり四字熟語だったり、分かったようでなんだろうみたいなところもあると思うので、その辺を紐解いていきたいなと思います。

黄色い色塗り説明 画像

あえてラフなものを出す

早川:先ほどのプラン、黄色くグリグリ塗っていたのがどういうことを言おうとしているかというと、どこにどんな明かりが必要かっていう、1番最初のキックオフミーティングの段階で使うような、ダイアグラムを描いていました。本当に入り口から図面の中を歩きながら、玄関入ってどこ行ってみたいなことを歩きながら、ここにはこんな明かりがいるよね、とっても単純なんですけど、ダイニングテーブルにダイニングの明かりがいるよねって、本当にそのまんま過ぎてあれなんですけど、キッチンには作業の明かりがいるよねとか、ダイニングテーブルの後ろの壁面は背面の明かりとして少し明るくできるといいよねとか、お庭を明るくすることで夜でも外の夜景が見えて、一体として広く伸びやかに使うことができるよねとか、そういったことを黄色くグリグリ塗りながら紐解いていきます。

これ設計者さん向けの打ち合わせ資料ではなくて、個人のお客様向けに描いていた話で、非常に簡単なことなんですけど、こういうことを描いていくと、図面で見た時って本当に図面でしかないんですが、黄色く塗っていくとイメージしやすいというか、そこに時間が流れ出すというか、ここでご飯食べてるとか、ここでコーヒー飲みながら本読んでるとか、そこで行われることが、なんとなくイメージできてくることが多いんです。逆にこれくらいふんわりした描き方をしないで、いきなりダイニングにはダイニングペンダント、こんなもの吊りましょうとか、ここには間接照明しますみたいなことを言ってしまうと、そうじゃないってなってしまうことも多くて、照明デザイナーって素敵なペンダントを吊りたいとか、素敵な間接照明をやりたい人達なわけではなくて、それはあくまで手段であって、そこにどんな明かりが必要で、どういう風にそれを叶えていくかっていうことを紐解いていくことが仕事なので、そういうことを相互確認するために、あえてこういう黄色いダイアグラムみたいなものをキックオフの段階で提示していく。そうするとお客様の方でも、「お食事するだけじゃなくてこのテーブルは新聞も読むからある程度明るくしてほしいの」とか、「暖炉のところは暗くもしたいけれども、音楽も聴く、プロジェクションもするのよ」とか、いろいろ具体的な要望が出てくるんです。最初から光に関わる要望くださいと言っても、なんだろうと思ってしまうところを、やっぱりこういう絵を見ながら話をしていくと、だんだん出てくることがあるので、そういうことを拾いながらこの方はどういうことを大事にしているのかとか、あと明るさ感とかも、「暗くていいの」と仰っていたりとか「やっぱり明るくないと」とか、そういうのをヒアリングするきっかけとして、こういうものを使ったりしています。

赤く囲っているところが、単純ななになにの明かり、ここにこんな明かりが必要ですってことを書いているのと、あと青い矢印がそこから見えるものなんですけれども、先ほどのダイニングのところからお庭が見えるよねとか、あとこのプランでいくと、ダイニングのところからコリドーを挟んで、小穴を通してリビングが見えたりするんです。それがダイニング側の手前の壁を照らしてしまうと、ここで空間が終わるんですけれども、ここをあえて照らさずに奥のリビングが見えていると、すーっと穴ぼこからその先が垣間見えたりとかするので、どこで何をみせたいか、逆に見せたくない時もあると思いますし、どこで何が見えるか見せたいかということを紐解いていくようなかたちで、こういうものを最初にお出ししたりしています。これは平面上の黄色い塗り絵ですけど、パースでも、最初はラフにこんなものを描いたりしていて、がちがちに作りこんだパースを作ってしまうと、「ペンダント、丸じゃなくて四角がいいの」とか、そういう話になってしまって、ちょっと聞きたいことから逸れてしまうので、「ここはこんな感じですよね」ってことであえてラフなものを出したりすることも多いです。

住宅 画像

最後はお客様に委ねることも

早川:そのお宅の出来てからのお写真なんですが、このお宅に限って言うと、お客様がインテリアもすごくお好きで、プロフェッショナルな方達で、照明器具に関しては新しい器具がお嫌いで現行品であったとしても、わざわざ海外から取り寄せて、時間が経った器具の存在感が好きっていうお客様達だったので、全部器具はご用意されていたんです。それをどこにどう置くとか、どんなボリュームのものがどこに来るとか、そういったものを整理していったり、あとは制御の話だったり、そういったことをやっていたおうちになります。ですので、本当に機能照明ってここに付けたダウンライトぐらいです。私あんまり仕事してない感じになってるんですけど、やっぱりどんな器具をお持ちで、どこに何を置きたいかとか、どうコントロールするかっていうことの制御をした感じです。最後はもう委ねて、やっぱり自分で選んだことによる満足感とかもあるじゃないですか。だから、ここはペンダントがいいんですってなったら、じゃあこんなサイズのものがあるといいですとか、光の出方は下向きに出るとか、拡散光で広がるとか種類はあるので、こういったタイプのものがいいと思いますっていう話はしますけど、最後の物の決定とかは委ねたりとかするようなかたちで進めたりしてます。


                 

質問2:意匠性や機能性など、どのようにバランス取ってますか?

早川「バランス大事です。」

意匠性と機能性 画像

早川:先ほどのはファーストお絵かきみたいな感じだったんですけど、このスケッチはその次のステップぐらいで、すごく具体的に照明手法におとしています。例えばダイニングペンダントとか、ソファー周りにフロアスタンドがあったり、意匠的な形が見えてくる器具を置いてみたりしてるんですけれども、1つは意匠的に見える器具の平面的なバランス。例えば、スタンド、ペンダント、またスタンドが横一文字に並んでいて、バランスがあまりよろしくなくて、最終的に右端のは無しにしてるんですけど、生け花でもそうなんですけど、不等辺三角形を作って生けるっていう。形を取るのにすごくバランスが良いというか、そういうものは意識しながら前後左右やったりします。空間も一緒で明かりをずらして置いていくというか、右奥、左下の手前の真ん中奥とか、空間に置いてく感じです。

意匠的に見える器具を、アンバランスにバランスを取ってくみたいなやり方を、平面上もそうですし、高さもそうですし、置いてくというのが1つあるのと、あと今ここにダウンライト類の下にうっすら赤い丸を描いてるのが見えると思うんですけど、何を描いてるかというと、カタログのダウンライトとかに記載されている配光データです。例えばダウンライトの30°配光の広角があったとします。普通3mの床で何lx取れてるかなって、230lx取れてるなとか、そういう見方すると思うんですけど、このお絵描きで描いてる丸は、左にφって書いてます。φって書いてあるところの1550、1.5mφとかをここに書いてます。1/2照度角とか1/2ビーム角って言うんですけど、一つダウンライト置いて、その直下3m下だと230lxだ。それが半分の115lxになる時の丸が大体1.5mぐらいの丸ですっていうふうな目安なんですけど、大体見た目の感じとしてもそれぐらいの光に広がって見えてくるので、床面で1.5mの広がりだなっていう丸を描いていくと、例えばソファー周りでも、ソファー周りの明かりって1番最初のファーストお絵描きで描いてたものも、この丸を三つぐらい重ねると、ソファー周りの明かりが作れるなっていうふうなかたちで丸を重ねて、アジャスタブルダウンライトが3台、そこを黄色く塗るっていうふうなやり方をしています。具体的な計画に落としてくんですけれども、この時に必要なところに必要な明かりを置くっていう最初の考え方でいくと、ダイニング周りのテーブル周りの明かりとソファー周りの明かりがあって、その間に何も置かないことで、ここにすごく気持ちの良いグラデーションができるんです。ここがすごい肝というか、必要なところは必要なところに置いて、真ん中心配でダウンライト置く必要全くなくって、そこにちょうど良い心地よさが生まれてくるので心配せずに。ど真ん中で新聞読みますとかになるとまた話は別なんですけど、ただの通過動線だったらあえて置かないとかっていうふうにしていくと、ちょうどメリハリのある良い空間ができてくるかなと思います。

光の性質 画像

光の性質

早川:あともう1つはバランスをとるって光の性質があるかなと思っていて、あえてふわっとした言い方してますけど。「ふわっ」て書いたのが、反射・拡散する光で、間接光とかもそうですし、ウォールウォッシャーとかもそうだなって思ってるんですけど、右下の「バシッ」っと書いてあるのが、指向性のある光が物を照らしている様子、アジャスタブルとかスポットとか、ダウンライトとかもそうなんですけど、どっかに向かって、何かに物が当たって見えているような光。左下の「キラッ」っていうのは、そのまんま煌めきだったりとか、それは点光源でも線光源でもいいんですけど輝度として見せる器具だったり、そういうものがあるので、「ふわっ」と「バシッ」と「キラッ」を光の性質として書いてます。例えばスポットも下に向けたら「バシッ」なんですけど、天井に向けたら「ふわっ」になるので、器具で決まらないというか光の質だなと思っていて、おすすめは質の違う光を2種類以上組み合わせると、バランスが取れると私は思っています。

やっぱり1種類だとのっぺりしてしまうので、2種類以上組み合わせるとメリハリが出てきて空間が面白くなってく。その事例をご紹介します。

光の性質説明 画像

「ふわっ」×「キラッ」×「バシッ」

ちょっとした集会所のような、酒蔵に付属したスペースなんですけれども、これ3点揃いでして、「ふわっ」って書いてるのは、この螺旋階段の下にちっちゃな小上がりがあるんです。小上がりの両隅に間接照明を足元に入れていて、それが床面にふわっと広がってるんですけど。間接照明と言ってもちっちゃいランプを隠してるだけのシンプルな主張なんですが、これが「ふわっ」。この梁型の下にちっちゃいスポットがいてテーブル面を照らしているのが、「バシッ」です。「キラッ」っていうのが電球がキラッと光っていて、3点揃った照明手法の写真になります。

光の性質説明 画像

「ふわっ」×「キラッ」

先ほどの逗子の別荘なんですけれども、先ほどもご説明した通りスポットとか間接照明とかダウンライトとかは、極力使わないでくれってお客さんだったんで、ここは意匠的な器具がオールスター勢揃いというか、キラッとした煌めきもあるし、そこから柔らかい拡散光も放たれる、ふわっとしたキラッとした大人のリラックスした空間という感じの写真になります。

光の性質説明 画像

「ふわっ」×「バシッ」

ワインを扱う会社さんのサロンになりまして、ここで試飲したりとか商談したりするところになるんですけど、長いテーブルがあって、ちっちゃいキッチンがあります。間接照明が壁側にあって「ふわっ」を作ってまして、天井にちっちゃいアジャスタブルダウンライトがクロスして照らしてるんですけど、これが「バシッ」を作っています。ここってワインを当然見ないといけない、相手方を見ながらワインを見ながら、色もかざして見たいので、あえて壁が白くて透かして見えるように建築側でもプレーンに作られているんです。なので、純粋にきれいな間接照明と、ワインがちゃんと見えて、あとグラスにキラッと輝度が映り込むようにちっちゃいアジャスタブルをいっぱい入れているということになってます。あえて「キラッ」て入れてないのは、元々建築家さんから貰ったパースの天井面の真ん中の天井材が艶のある素材が、手前のサロンから奥のロビー、外に向かって1本ズバッと通ってるんです。外の景色をこの天井面に映しこみたいというふうな意図が建築家さんおありだったので、これが「キラッ」なんです。外の景色が映りこんで、行き交う人だったり、そういったものが天井にキラッキラッとたまに動きが出てくるので、またワイングラスにもキラッと器具の輝度が映りこんだりするので、あえて照明器具での「キラッ」を排除しているという空間になります。

光の性質説明 画像

「若干ふわっ」×「キラッ」×「バシッ」

これはフィットネスジムなんですけど。ここ細いスリムライン照明がキラッとした輝度を作っていて、スポットライトが機器周りだったり筋肉を見せるっていうふうなかたちになっているんですけども、「キラッ」と「バシッ」が主体になった結構ストイックな空間ではあるんです。床も天井も真っ暗なので「ふわっ」を入れてもあんまり効きが悪いんですけど、ただこのミラーの上に「ふわっ」を入れてるんです、若干。これは照度を期待するとかそういう話では全く無くって、ストイックになりすぎてしまうので、あえてほんのり入れてるというのと、あとこの「ふわっ」が無いと、この細いライン照明のあるところが天井の高さに感じてしまって、その奥は暗い闇になっちゃうんですけど、うっすらでも「ふわっ」があることで奥行きが感じられてるので、そういう意味であえて若干「ふわっ」を入れたりしております。

光の性質説明 画像

光の質の違いから考える、ダウンライトの選び方

そんなものを紐解きながら、ダウンライトにも種類があるので、先ほどの「ふわっ」とか「バシッ」とか、「バシッ」加減がいろいろあって、ダウンライトもいろんな種類があると思うんですけど、我々が多く使うのは1番左側のグレアレスタイプ。住宅でよく見かけるかなっていうのが1番右側の拡散カバータイプ。白くふわっと空間全体に広がるものがよく住宅とかでも使われてたりすると思うんですけど、この写真よく見ていただくと何が違うかというと、グレアレスタイプを左側使っている時、エアコンにかかっている光がほぼほぼ無いと思うんです。「バシッ」は、ベッドの足元の上にダウンライトが1個あるので、ちょうどベッドスローの生地の光沢が1番キラッと出ている。手前にもう1台あって、それはこちらのテーブル周りを照らしてる。2台のダウンライトで2ヶ所照らしていて、ベッド周りにスタンドがあるということなんですけど。右側のカバータイプで見ていくと、エアコンが結構照らされてしまっているの分かります。天井が折りあがってるんですけど、梁型の部分も結構照らされてしまう。照らしたくないものがあからさまに見えてきてしまうっていうのが拡散カバータイプです。ただ、カーテン側にも光が回るので、全体が明るい感じにはなるんですけど、例えば、せっかく眩しいからと思って足元の上に入れていたダウンライトは、右側の拡散カバータイプだとギラギラ眩しいみたいなところもあったりするので、結構効果がこれくらい変わってくる。先ほどご説明した、必要なところに必要な明かりを置いてくってことをやろうと思うと、やっぱりグレアレスタイプになってくんです。拡散カバータイプを使っちゃうと、ここにこの明かりって作ってたものが全部繋がってしまうので、間の心地よい陰影とかも全部とんでしまうので、そういう意味で我々は結構グレアレスタイプを使うことが多いです。

グレアレスタイプって存在感無くていいんですけど、それだけで使うと明るい暗いのギャップが強くて、なんか暗いんだけどってなりがちなんですけど、「ふわっ」っていう光と組み合わせてグレアレスを使ってるから、空間として成り立っているわけで、我々はそういう上手い組み合わせ方を体感的に分かっているので、それを組み合わせて使ってるんですけど、ただただダウンライトを置き換えてしまうと明るい暗いの話になってしまうので、さっきの質の違う組み合わせっていうのはダウンライトの決め方にも重要な役割があるかなと思ってます。


                 

質問3:生活に潤いを与える演出、住まいの雰囲気を良くする方法は?

早川「調光を入れてください。」

説明 画像

早川:1番面白いというか分かりやすいというか、どんどん入れていったらいいと思います。先ほどのスタートから言っている、どこにどんな明かりが必要か、分散させてくわけじゃないですか。で、組み合わせて考えようと思うと、必然的にアイテム数が増えるんです、一室一灯じゃないので。ここにはここって入れてくと、アイテム数が増えました。そのままやってしまうと、壁にずらずらずらっとスイッチが並びますってことになるので、そこでシーンコントロールをしましょうって話になってくると思うんです。ましてや今LEDになって、皆さん専用調光器って各社さん出されるので、我々やっぱりメーカーさんもいろんなものを使って並べた時に、A社さんこれ、B社さんこれっていう調光器が並ばれるのがすごく嫌で。施設的なもので裏方に隠れてるならいいんですけど、先ほどみたいに住宅レベルで心地よく作ろうとしてるのに、並んでくる調光器がより取り見取りなものがずらずらって並ぶのがすごく興ざめなので、やっぱりLEDになってからすごく悩ましくて、どちらかというと制御をどうしようかな、今回はって考えて器具決めをしたりとか、そういうことが増えました。なので、アイテム数いろいろ入れました、いろんなシーンが作れます。でも照明デザインって、そこでの時間の過ごし方というか、そこでどんな明かりでどんな時間を過ごすかっていうことを提供することでもあると思うので、そうなった時に全部オーケストラのようにこっち上げてこっち下げてっていうのはすごく大変なので、まず調光入れること。で、アイテム数が増えたらシーンがあってもいいだろうってことなんですけど、そんなかたちで遊べるといいと思います。

例えばホテルの最終調整とかしていて、最後に全部アイテムが揃ってエーミングも済んで、じゃあ調光のレベル決めるってすごく楽しいんです。もちろん我々設定レベルとか事前にベースになるものをお送りしていて、あとは微調整って現場でやってくんですけど、もう皆わいわい集まってきて、電気屋さんと現場の人もそうですし、設計者さんもそうですし、あとお施主さんも入ってこられて、「ここもうちょっと暗い方がいいんじゃないか」「ここもうちょっとこうじゃないか」っていうのが、すごく楽しいんです、皆さん。面白いのが上げ下げしてくと皆が良いって思う瞬間が絶対あって、「もうちょっと下げて下げて下げて、あ、いいね」って言う時、皆「うんうんうん」って頷いてるんです。やっぱりそういうの凄い楽しくて、光のチューニングができるってやっぱり面白いので、そういう装置を最初に入れとくのはすごく有意義なことだと思います。


                 

質問4:こだわりはありますか?

早川「こだわりが特に無くて、プロジェクト毎に違うんです。」

やっぱり求められるものが違うので、こだわらなければいけないポイントがプロジェクト毎に違うなって思います。こちら側があるというよりかは、毎回初めましてで、プロジェクトでこだわりに出会う感じです。今まで住宅レベルで基礎的な初級のお話をさせてもらって、ここから設計者さんだったりオーナーさんだったりが、こういうこだわりの何かを作りたいって言うふうにやってきたプロジェクトをいくつかご紹介させてもらいたいなと思います。

道の駅 美郷 画像

道の駅美郷

早川:秋田県の美郷町の道の駅の改修になるんですけど、これは改修前の道の駅です。課題をお伺いした時に「入り口の感じが分からないんだよ」って話だったりとか、「既存の売り場の格子は残すけど天井抜こうと思ってます」っていう話をお伺いしたりとか、「座敷になってるところはカウンターにして、今障子が貼られてる窓の所をおっきく窓にして外を見せたいんですよ」って話とかを現地でヒアリングしました。



道の駅 美郷  画像

外をみせたいって、奥に何が見えるかっていうと、こういう田んぼの風景が広がっています。この時はちょうど夕暮れ時で、ミレーの絵みたいに綺麗じゃないですかって凄い感動してしまいました。設計者さんもこの町のご出身の方だったりして、皆さん地元愛に溢れていらっしゃって、「良くしたいんです」なんて話からスタートしました。



道の駅 美郷  画像

愛される建物に照明でできること

図面の下側が駐車場、入り口側になりまして、入り口が分かるような設えだったりとか、売り場は売り場で先ほどの光でいくと「バシッ」と物に当たる光が必要になってくるんですけど、その奥に行くとカウンターがあってその先、図面で言う上の方向に先ほどの田園風景が広がっていたりとか、逆に図面の左側の方には、移築してきた古民家の曲がり屋、古民家を改修したレストランがあるので、そちらにも引き込みたいとか、どこにどう人を入れていきたい、売り場があるけどちゃんとレジが分かるようにしたいとか、そういったことの予見とか課題の洗い出しをしたりしております。



道の駅 美郷  画像

断面手法的にも、1番図面の左側が田んぼの風景見せたいというところを書いているんですけど、PD2って書いてるペンダントを吊ってるんですけど、これもやり取りの中で風景見せたいからペンダントあったらどうなんだろうかとか設計者さんともやり取りをしていて、ただ売り場にいる人をまず休憩スペースに引き込まなければいけないので、「あっちになんか良さそうな雰囲気の場所がありそうだぞ」って分かるための物でもあり、且つ窓ガラスがおっきく開いていて、そこに人が休憩していて、そこにペンダントがあるっていうと1つ居場所ができるので、額縁の中にペンダントがあるっていう付け方だったらどうですかって話とか、あと当然田んぼ側から見る視線ってそんなには無いと思うんですけども、田んぼ側から見た時に窓辺に人が佇んでいて、あの建物の中に入ってみようって思わせたりとか、いろんな役割もあるので吊ったらいいかなと思いますっていうやり取りを断面手法図でもしたりはしています。



道の駅 美郷  画像

点灯し始めた頃、工事の終盤の方の写真なんですけど、駐車場の入り口側に向かってお店から漏れてくる光をあえて積極的に、軒下にグレアレスのダウンライトを追加してあえて作ってるんです。漏れてくるだけの光だと、もっとほわっとしちゃうんですけど、漏れてますっていうのを誇張する。開いてますっていう、光のカーペットを敷いてるような感じにしていて、特に雪の多い国とか寒い国とかは、なるべく暖かめな光が漏れるように心がけるようにしています。



道の駅 美郷  画像

レジカウンターとメインの売り場のところで、先ほど既存の写真で天井抜いたところです。格子は既存の物なんですけれども、上向きにアッパーを入れて、広く明るくなるようにしています。

ちなみに、遠藤照明のスポットをいっぱい入れてます。スポットって、真下から90度真横くらいまで向く商品が多いんですけど、遠藤照明のスポットはもうちょっと上向くんです。壁画とかが、一面壁画きますなんていうと、そのちょっとが結構効いたりするので、多用しています。



道の駅 美郷  画像

シンプルなもので分かりやすく作る

先ほどの話をした休憩スペースで、外が雪で白くとんじゃってるんですけど、窓の外が田園風景が広がってるところです。奥からも見えてくるし、ここにいる人の場にもなってくるので、なるべく邪魔しなくてちっちゃくて透明性の高い小ぶりなペンダントを入れたりしています。奥の休憩スペースとか古民家のレストラン、お水やお米が美味しいところなので、釜炊きのご飯を出されたりしてるんですけど、そちらに目線がいくように天井明るくしたりしています。ペンダントも何種類か使ったりしてるんですけど、球が共通で入れられるようにしていて。やっぱり先々手を入れられて地元の人たちがちゃんと運用できるようにって長く考えると、ランプが共通とか替えられるとかってすごく大事なことだなと思っていて、なるべく特殊なものを使わないようにしてます。もちろん金額的なところもありますけど、長く使ってもらえる、「全然分かんないよ、俺達」ってなってしまうと手をかけてもらえなくなってしまうので、ちゃんと分かるもので作るというか、シンプルなもので分かりやすく作るっていうのは心がけるようにしています。



道の駅 美郷  画像

また、秋田杉のこだわりの家具類がいろいろ置かれてるんです。ライスっていう椅子のご提案があったりとか、すごく愛が溢れていて、照明でも何か是非って言われたので、先ほどのレジ周りのペンダントは美郷町のミズモの頭を特注加工して、地元の方が気付いてらっしゃるか分からないですけど、隠れキャラとして入れたりしています。愛される建物になるといいなと思って作っております。


牧之原市の図書交流館 いこっと 画像

牧之原市の図書交流館 いこっと

早川:道の駅も交流館も今年の4月ぐらいにオープンしたんですが、面白いのがホームセンターの改修だったんです。結構珍しい官民連携プロジェクトだと思います。民のスペースを改修して、官がテナントとして入るみたいな感じなんですけど。とはいえ、元々がホームセンターなので、中身はこんな感じでした。改修で図書交流館にしようと思ってますって話をいただいて、天井どうしましょうかっていう相談があったんです。お金もないし、なるべくお金かけずに天井張らずにいきたいって話がいただいて、いろいろ付いてるグリッドとか取るのもお金かかるんだけどどうしようみたいな相談が建築家さんからあって、じゃあもうこのまま残して使いましょうって話をこちらからさせていただいて、今下向きに蛍光灯が既存では付いてるんですけど、ぐるっと上向きに180度回転して付けましょうってご提案をさせてもらったんです。

                  
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蛍光灯だったので、器具自体は新規で更新ということなんですけど、考え方としてはぐるっとするっていうふうにしたのがこちら改修した現場で。本当にグリッドとか全部残して上向きになっています。右側が受付カウンターで学習机とかPCコーナーとか、いろんな図書があるんですけれども、ここで何をしようとしたかと言うと、雰囲気変わっていいねとはなるんですが、図書館として使ったときにどうかって言うと、空間が散漫となりすぎてしまう。元々ホームセンターでだだっ広くて、スケルトンで使ってっていうと、どんなに家具が入って本が入ったとしても人のスケールに対しておっきすぎるので、真ん中に中心性を持たせた何かを置きたい、しかも低く吊りたい、それがリングだったんです。

                  
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マップ的な扱いとしてのペンダントライト

4つリングを入れませんかっていう話をしています。シャンデリアが吊りたいんですってことでは当然なくて、目線を抑えたいし、広くってどこにどのコーナーがあったかってなるんじゃなくて、真ん中がちゃんとできていて、右奥に児童書とか左奥に一般書とか、そういうことが分かるためのマップ的な扱いとして、こんなものがやりたいと思うんですというふうなやり取りを最初にしてたものになります。黒い柱があるのでその周りに3mぐらいあるんですけどリングを吊っていて、PCコーナーとかソファースペースとかがでてきていて、リングは照明器具で作ると凄いことになるので、家具工事で作っていただきまして、電球だけ電気工事で入れさせてもらってます。なので、メンテナンスも電球替えてやるっていうふうな考え方で、先々も手が入れられる。先ほどの秋田と一緒ですけど、変な物使って後で困らないようにということは気を遣っております。これも、「ふわっ」「バシッ」「キラッ」でいくと、天井間接が「ふわっ」で、「バシッ」も一応、間接照明だけでも明るいんですけど、本に当たってる光が無いと本が見え辛かったりするのでスポットを最小限足していて、真ん中が分かる明かりとして「キラッ」としてリングを入れてるというかたちになります。図書館って今電子書籍とかもいっぱいあって、電子図書館もあるなかで、こういうリアルな図書スペースをどう考えるかっていうのを最初に建築家の方とも話していて、本物の本を開いてめくる感じとか、紙とか、リアルな感じがやっぱりいいって話になっていて、このリングも元々はスチールで作ろうと思っていて、マグネットとかでいろんなものを吊り下げてもらっていいやって思ってたんです。イベントの案内でもいいですし、お気に入りの絵本の1ページでもいいですし、リアルな物がいっぱいあるみたいな、ごちゃっとした感じも面白そうかなと思ってご提案をしてたんですけど、ちょっと重さ的にクリアできず、マグネットが付かない仕様にはなってるんですけど。ただ、触っちゃいけない素敵なものが付いてますとかではなくて、使い倒してほしくて真ん中に象徴的なものとして入れさせてもらってます。

                  
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あとは学習スペースで、中高生が使ったりするような自習室ですとか、こちらキッズスペースの方も家具が一段低くなってくるので、上に吸音板みたいなものを吊ってもらいながら、そこにダウンライトを付けさせてもらったりとか、こういったことをやっております。

                  
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地元の方達に愛着を持って使ってほしい

窓際のスタンドが、実はちょっとした特徴になってまして、A3の紙がくるっと丁度入るんです。シリンダーがスポッと抜けて、A3の紙をくるっとして入れられるスタンドになってまして、今入ってるのはサインデザイナーさんが作ってくださったちょっとお洒落な紙が入っているんですけど、お子さん描いた絵でもいいですし、司書さんが書いたような何か案内でもいいですし、何かA3でとにかく紙に何かを書いて巻けばスタンドになるっていうものになっていて、やっぱり各自治体の公共空間って、「デザイナーさんが来てなんか作ってくれたよ、かっこいいの」っていうのだとやっぱり成り行かないなと思っていて、地元の方達が手を加えて愛着を持って使っていくことで人って集まって来たりする、本当にソフトってすごい大事だなと思っていて、そのきっかけの一つになるといいかなっていうかたちで、遊べるようにA3紙入れられるスタンドを作ったりしております。

                  
牧之原市の図書交流館 いこっと 画像

たぶん図書館側としては、不足の無い光環境で宜しくっていうことだと思いますし、建築家さんとしては思いもある中でいろいろ聞いていくと、やっぱり地元の人たちに良くして欲しいっていうところから、デザインをただ提供しましたじゃなくて、使ってもらえるように、いい意味でいろんな手垢付けてもらえるようにしたいって雑談レベルで話したりするなかで、じゃあペンダントちょっと特注しますか? みたいな話をしたりしてます。これ外から見るとちょうどそのスタンドのところが。ここだけホームセンター、光入ってなかったんですけど、外から見て中に人がいて本もあって、ちょっと寄ろうかっていうスペースにしたいって仰ってたので、ここはスタンドを置いていて、照度を取るためのスタンドではないので、それこそ濃い色で絵描かれても大丈夫なように、そこで照度は頼っていないので、そういうアイテムとして作ってます。窓明かりみたいな感じになってます。


                 

質問5:照明デザインで最も重視してることはなんですか?

早川「最終的にそこを使われる方がどう感じられるかとか、いろんな紆余曲折、苦労があっても、最後それをどう使ってどう感じてもらえるかってことが1番大事だと思っています。」

Googleの口コミとかも見たりします。でも、設計者とかデザイナーがいいとか言っても、一般の方がどう感じられるかってまた違うじゃないですか。もちろん専門用語とか全然出てこないですけど、例えば先ほどの道の駅美郷なんですけど、「明るく垢抜けた」とか「田んぼの風景がおっきくて開放感があるよ」とか「柔らかくて素敵な印象です」とか書いてあると、大体意図通りに伝わってるなっていうところで安心したりしていて、言葉は専門用語じゃなくても、それをどう感じられてるかとかをちゃんと把握しとかないと、結局デザイナーのエゴで終わりたくないので、なんかかっこよくいったなってことじゃないと思っているので、最終的に使われた方達がどう感じられてるかなとかってのはすごく思います。

                  
重要なこと 画像

にしあわくらほいくえん

早川:岡山の西粟倉村。保育士さんたちと事前にすごく打ち合わせをしてヒアリングをしたりして、そうすると保育園子どものための光環境どうあったらいいのかなとかって設計者としては思ったりするけど、現地のローカルな声を聞いてると、お昼寝するからこことここで分けて切りたい、あと簡単にしてほしいとか、球が切れたら困るからすぐ付けられるものにしてほしいとか、手配するのに1週間2週間とか本当に困るからやめてとか、そういうことが多いんです。その通りだなと思います。やっぱり保育士さんの手間になってしまったら、最終的に子どものためにならないと思うので、そういうこととかすごく大事だなと思います。

                  
重要なこと 画像

もちろん建築としてのこだわりもあるので、西粟倉ってとても林業が有名なところで。木をふんだんに使うところだったんですけど、真ん中に建築の部材の1個みたいに吊ってもらって、これも中の光源だけ電気工事にさせてもらったので、すごいお安く作れました。

                  
重要なこと 画像

遊戯灯は、結構いろんなアイテムを突っ込みまして、体操とかなんかやる時には間接照明とベースライトを使ってもいいですとか、セミナーとかそういった使い方もされると思うし、あとお遊戯会みたいなこともあると思うので、子供たちにリアルな体験として、いろいろ変わりますとかって話じゃなくて、舞台で演じてる時にスポットライトを浴びるみたいな体験をさせたくて、そういうバリエーションということでご用意してます。もちろんお泊まり会みたいなこともあるかなとか、いろんなことを考えていくつかアイテムを作ってます。シーンコントローラーも考えたんですけど、それをしちゃうと微調整が効かないので、お遊戯会とかって先生方が子どもの動き見ながらスポットゆっくり調光して絞ったりとかあるから、あえて全部アナログで壁に調光スイッチが付いてるみたいなやり方をしてます。


                  
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だんだん ‐保内児童センター・保内保育所‐

早川:もう1つ子どもに関わる施設で、愛媛県八幡浜なんですけど、八幡浜って西宇和のみかんの名産地というか、山が見えていて、全部みかんの山なんです。建築家さんがだんだんの山とだんだんの屋根を合わせて作られていて、全部ハイサイドライトから燦燦と外光が入ってくるので、日中もう人工照明ほぼいらないっていうような感じなんですけど、すごい綺麗な建物で、各教室が低い天井側にあるんですが、真ん中に高天の場所があって、これは年齢の違う子達がここでご飯を食べたりとかそういった活動ができるようなスペースがあるんです。見ていただくと陽の光が日中は入ってくるので、ほとんど点けない感じです。

                  
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どういう照明が子どもたちにとっていいのか話し合いました。最終的に保育室は本当にシンプルにライン照明を天井に埋め込んでいて、直付けの器具をあえてスリットを作ってピタピタに入れていて、現場の方達がパックまで作っていただいて、ぎりぎりメンテナンスのできるピタピタ戦法、感動するようなディテールで作っていただきました。ここでは、太陽の光が入ってくる天井のグラデーションを見せたかったんです。やっぱり子ども達っていろんなところ見てるので、奥に壁に入ってきてる光もそうなんですけど、天井面にもふわっと光が入ってて、器具が直付けで付いててブチっと切れるのが嫌で、スススーっと入ってくる様子を作りたくて、こんなディテールをしています。私達はそういうディテールもやった結果、ピタピタ過ぎると天井面から施工誤差でちょっと出るかちょっと引っ込むかで、天井面の見え方変わっちゃうじゃないですか。だから、安全みて5mmとか10mmとか引っ込めたりとか、横も指の太い電気屋さんでも交換できるように、ちょっと余裕のあるディテール図として最初はお出ししてるんですけど、そこを建築家さんと現場の方たちがもうちょっと攻めれるって頑張ってくれました。いつもそういうところで感動が生まれるというか、自分で想像していた以上のことをしてくださるので、「わあ凄い」ってなりました。現場行ったときに感動のディテールだと思って見てたんですけど、すごい綺麗におさめてくださってました。

                  
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引き算した環境照明

八幡浜の駅に降り立った時に駅にあったんです。クリスマスツリーにみかんが付いていて、最初折り紙かなんかでみかんツリー作られてるのかなって思って、近づいたら本物なんです。皮をたぶん乾かして、中にイルミネーションを付けてらっしゃって光るんです。生のみかんの皮を乾かして閉じて、そこにイルミネーションを突っ込んでみかんツリーを作られてるっていうのを八幡浜に最初に降り立った時に見ましてすごい感動した。本当は保育室とかも建築家さんといろんなアイデアを出し合ってた時に、当然そのみかん出したくて、みかんをモチーフにして眩しくない拡散照明、みかんというかみかん型というか、そういう膜照明みたいなものとか、いろいろご提案する中でも、子ども達が可愛いと思えるようなものとか、いくつかご提案させてもらって、ぐるーっと1周2周3周ぐらいして、先ほどのライン照明に落ち着いたんですけど、やっぱり地元でクリエイティビティというか熱量があるから、環境照明としてみかん照明とか違うなと思って、やっぱり手を加えていく方達がいるので、運営者というかユーザーとしての熱量がちゃんと出てくるので、そこはユーザーを信じてというか、環境照明としては引き算の黒子の方にまわってっていうふうにしてたんです。

                  
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意匠性を排除して、ちゃんと光の効果が出る器具に徹してあげた方が、あまり子ども子どもしないというか、空間としてシンプルに作ってあげた方が今回は良かったなって思ってます。下向きの「バシッ」のタスクライトも付いてますけど、お迎えの時なんかは夜薄暗くなったら上向きのアッパーライトだけで十分歩けますので、そういったかたちで入り切りしてもらったりしていて。これ入り口側です。これ中庭側からみたもので、使ってるアイテムって保育室のライン照明と、高天のとこのペンダントとアッパーブラケットの3種類だけって感じなんですけど、デザイナーが入りました感ってそんなに無いと思うんですけど、結構現場の監督さんとかが建築家さんに、「この建物すごい夜がなんかいいんですよ」って仰ってくださってたみたいで、「なんかいいんですよ」って言ってくださったのがすごい嬉しいなって思っていて、凄いデザインしましたってことじゃなくて引き算して引き算して、その結果、夜なんかいいって言われるのって、設計冥利に尽きるなと思ってやってます。


事務局:早川さん、今日は楽しい時間をありがとうございました。今回は早川さんにお話しいただきました。照明デザイナーさんのオンライン実践講座、あとまだ2回続きます。次回は、2月に照明デザイナーの榎並さんをお迎えしてお届けしますので引き続き、宜しくお願いいたします。 ※このページは、2021年12月9日(木)に行われたオンライントークイベントのレポートです。

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