<オンラインセミナー>〈照明デザイナーによるオンライン実践講座その3〉照明計画、何から始めますか? 画像

全4回-照明デザイナーによるオンライン実践講座 第3回目です。

2022年2月17日、照明デザイナー/L . GROW 代表 榎並宏さんをお招きし、照明計画の”はじめ方”についてお話頂きました。

Speaker

榎並宏

榎並 宏 Hiroshi Enami(照明デザイナー/株式会社 L . GROW lighting planning room 代表取締役)

1979 : 岡山県生まれ

2001~2008 : 株式会社 USHIO SPAX(現 Modulex inc)

2009 : L . GROW lighting planning room 設立


主なプロジェクト:「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」「和光本館(1・2F)」「浅草ビューホテルロビー」「草津温泉 kei」など

http://www.l-grow.com/

SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE 画像SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE
設計:乃村工藝社 写真:Takumi Ota

草津温泉 kei 画像草津温泉 kei
設計:beatnik inc 写真:NACASA & PARTNERS INC.

見逃し配信



参加者の声

  • 実務に役立つポイントでした。
  • 『WHY』を深く理解することでブレない潔い提案ができる。 どのような職種でも通じる考え方だと、改めて学びました。
  • とても面白かった。仕事しながら拝聴しようと思っていたのに仕事進みませんでした。 普段は建築設計をしているのですが、照明計画のヴィジョン・意義みたいなものを深く考える機会がなかったので非常に参考になりました。 設計者としても事前に準備ができるように心がけたいです。

イベントレポート

事務局:本日は〈照明デザイナーさんによるオンライン実践講座その3〉照明計画、何から始めますか?と題しまして、榎並さんには照明をデザインされる時、まず意識すること大切にされていること、そのイメージのまとめ方、そしてその手法について、盛り沢山お話をいただきます。今回、本当たくさんの質問を頂戴しまして、皆さんまずは題目どおり「照明計画、何から始めますか?」っていうのが知りたいという方が圧倒的に多かったです。皆さんが期待しているその始め方について教えてください。

照明計画、何から始めますか?

榎並:照明配灯って丸を描いたり三角を描いたりするんですけど、それを描く前に「図面の中歩きなさい」ってよく言われませんでした?

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図面の中歩きなさい

榎並:依頼をいただいた際に「今度お寿司屋さんのプロジェクトがあるんだけど何ルクスにしたらいいかな?」っていきなり始まったりするんですけど、デザイン性を求められてない、例えば機能だけの空間ってことだとすると、もしかしたら図面をみて、単純に明るさを決めるってこともあるかもしれません。「イメージを書き込む」これもよく言われたんですけど、いきなりさっき言ったように丸や三角を描くんじゃなくて、まず図面に色を塗ってから光の当たっているとこのイメージを書き込んで、そこから配灯しなさいってよく入社当時怒られた記憶があります。

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Why?から始める

榎並:人それぞれいろいろやり方があると思うんですけど、僕なりの始め方っていうのを今回紹介させていただくと、「Why?から始める」つまり「なぜ?」から始めることをやってます。「WHYから始める」ってことで「ゴールデンサークル理論」って聞いたことありますか?イギリスのサイモン・シネックさんがTEDカンファレンスっていう世界的講演会で語った理論なんです。Apple社だとかマーティンルーサーキング、ライト兄弟といった人たちが行動や伝え方が全く同じっていうことを説いていて、多くの人がWHATから始めることを、彼らはWHYから始めてるって言ってるんです。僕もこのゴールデンサークル理論を数年前に見たときに思って、この考え方って僕らの照明のデザインとかプランニングっていう部分でも当てはまるなっていうところにたどり着きました。まず「WHY」なぜこの建物を建てるのか。なぜこの空間を作るのか。なぜこのデザインになっているのか。実現したい未来、すなわちVISIONを考えましょうっていうところです。次に行うのが「HOW」。その「WHY」を実現させるためにはどうすればいいのかっていうミッションが必ず出てくるはずなんです。最後にそこから「WHAT」。計画、何をするっていうことでプランニングやデザインに取り掛かれっていう順番です。もう一度言いますね。実現したい未来を考えて、それを達成するための課題は何か、それからプランニングに入るっていうことをやってます。この順番にすることで、プレゼンテーションだとか説明のときに、プランに軸を持って話がしやすいっていう利点や、減額が必要になりましたって言うときにこの順番でやっていくと、自然と優先順位がはっきりしてくるんですね。


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西村屋 泉霊の間

榎並:具体的な物件で説明したいと思います。こちらご存じの方もいらっしゃるかと思うんですけれども、西村屋さんは兵庫県の城崎温泉にある創業150年の旅館で、国の有形文化財にも指定された大広間がこの泉霊の間なんです。この天井なんかは、桐の格天井で釘を一本も使ってなかったり、奥の部分。「泉霊」って漢字でどーんとで書いてると思うんですけど、この掛け軸は犬養毅の直筆の書だったりします。この手のものが好きな人にはたまらない感じの大広間で、この大広間を新たに食事処として生まれ変わらせたいっていうところからこのプロジェクトはスタートしました。

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まずはVISION、「WHY」の部分です。「登録有形文化財に指定されている泉霊の間。時を重ねて磨かれた本物の美しさを保ちつつ、新たな食事処に生まれ変える」これが「WHY」の部分、すなわちみんなが目指しているゴールだったんです。それを達成するために何が課題になってくるかと考えると、大きく三つのMISSIONを考えました。

1つ目は格天井を美しく魅せること。さっきVISIONの中の言葉でもあった「本物の美しさ」この部分をキーワードに、「格天井を美しく魅せる」っていうMISSIONを打ち出しています。

2つ目が食事処として「料理を豊かに演出する」ってことです。1つ目のMISSION「格天井を美しく魅せる」を果たすためには、極論でいうと天井に照明をつけない方がいいんですけど、大事なのはあくまでもここを食事処に生まれ変えることなので、料理がよりよくみえないと駄目ってことですよね。なので料理を豊かに演出することが課題の2つ目になってくる。

そして3つ目、この泉霊の間は実は東西と南側の三方から採光されていて、窓側近辺がかなり自然光の影響があるんです。その自然光とうまく付き合っていく必要性があるよねっていうことで、3つ目は建築的予見になちゃうんですけど自然光と共存していきましょうということを挙げています。

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まず1番目の「格天井を美しく魅せる」ということで、周囲の欄間の上部、この部分です。ここの上部に照明を入れて、柔らかく天井面を照らし出してます。さらにこの中央に、ここにつり照明を入れてさらに天井を柔らかく照らしました。このつり照明なんかも実は昔の泉霊の間にあった照明の形をそのままオマージュして作ったもので、なので割と桐の格天井とマッチしたデザインのものを取り入れたりしています。1番目がその形ですね。
2番目、「料理を豊かに演出する」っていうことで、料理の色艶がよくみえるダウンライトで料理に当てる光を入れてるんですけど、この黒い抜きの部分です。この照明器具を入れてる場所はもともとさっきあった四角い面発光の器具があった箇所を使っていて、極力既存の天井を触らないような形で配線や工事が進められるような計画にしています。さらに本物の素材なんで、桐の板にダウンライトの円形の穴をそのまま開けて取り付けるのはちょっと違うなと思いまして、なのでその桐材とはきっちりと円を切ってあえて黒いボックス状のものにダウンライトが埋め込まれてるような、桐の面がより大きく残るような配置と納め方にしていると。それによって料理を照射して豊かに演出していきましょうっていうのが2番目です。
3つ目の「自然光との共存」なんですけど、これ実は昼間の写真です。自然光が入っているのは窓側から見てこの二列目ぐらいまでなんです。つまり、この中央部分は実は人工光で。天井からの光の明るさとか色温度を、窓側からじわじわとリンクさせていきながら変化させてます。今写真見てなかなか分からない感じで、実際現場でもかなり自然光っぽい感じが作れたかなと思ってるんです。うまくいった事例かなと思っています。

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こういう形でシーンがそれぞれ日没から夜っていう形で切り替わっていくというプロジェクトを行ってます。昼間のバージョンは午後一ぐらいの写真だと思うんですけれども、色温度を検証していくと6000Kぐらいでした。そこから同じように中央も同じ色温度で作ったらよりリアルなんじゃないかと思ってやってみたんですけど、さすがに青白く染まりすぎてしまって、料理があんまりおいしそうに見えないという観点から、6000Kの状態から徐々に4500Kぐらいにグラデーションさせてじわじわリンクさせていっているような状況です。明るさに関しても太陽光にはもちろん勝てないので、そこから徐々に明るさを落としていくような、極端に落ちないような形で明るさを落としているということをやってます。ダウンライトと横の欄間の上のアッパー照明。真ん中の球体も実は色が変わってます。白っぽいものから徐々に赤みを帯びてくるような状況です。時間との戦いでもあったんですけど、日が沈む前にまず昼のシチュエーションを作って、そこから夕暮れ時に作って、日没後に作ってみたいな形で行いました。日没は、2400Kぐらいまで下げたと思います。

色温度の幅、それから明るさ、さらにはさっき言った料理の色艶をちゃんと魅せられる照明、ハードっていうところで今回遠藤照明さんの「Synca」っていうシリーズのハードを入れさせてもらっています。うまく自然光との共存、それから料理、料理はちょっと載ってないので分からないと思うんですけど、その辺りのMISSIONっていうのは、おかげさまでうまくクリアできたかなと思ってます。


CONFERIUM 画像

CONFERIUM

榎並:お台場の乃村工藝社さんの新しいオフィスです。平面レイアウトは、まず入り口の扉を開けると、大きなカウンターが出てきます。真ん中に大きな会議室がどーんと鎮座していまして、その周りを小さな会議室が取り囲んでいるような状況です。なので動線としてはここから入ってきてぐるっとそれぞれの会議室に入っていくようなシチュエーションです。この時のプロジェクトのVISIONっていうのが、「働き方の行動展示」「個性的な会議を敢えて積極的に見せる」ということだったんです。なかなかユニークというか面白いVISIONだったんです。会議を積極的に見せる。割とクローズになりがちな会議室だったりすると思うんですけど、そこをあえて積極的に見せるというゴールVISIONを皆の共有として持ってました。それを実現させるための照明は、このときは2つMISSIONを打ち出してます。1つ目が、当初は各会議室がテーマ別に異なるデザインと個性を持ってたので「各会議室のデザイン意図を汲み取った差別化」を行ったらいいんじゃないかということを1つ目のMISSIONとしてました。行動展示っていうことを意識しているので、室内側に視線を促さないと駄目じゃないですか。なので室内に自然に視線が行くような、導いていくような動線の明るさっていうのを作るべきなんじゃないかなということで、2つ目は「室内に視線を導く動線の明るさ設定」というMISSIONを採りました。

CONFERIUM 画像

 実は1つ目のMISSIONは諸事情で実現できなかったので、2つ目のMISSIONを軸に実際どうなったかを見ていただきます。さっきの入り口の扉をバーンと開けると、こんなカウンターがドンと見えてくると。見て分かるように周囲真っ暗です。カウンターだけが浮き上がっているような状況で、意図としてはこのCONFERIUMの世界観に一気に没入してもらえるようにそういう環境にしています。

CONFERIUM 画像

 このカウンターの横を抜けると、こういう形です。こういう感じで会議室が見えてくるんです。内装は真っ黒なんです。さっきのカウンターって別に暗くしてるわけではなくて、真っ暗なんです本当に。で会議室がこうやって見えてくると。照明は廊下に一切ついていない、点灯していない状況を作っていて、水族館なんかを思い浮かべると分かりやすいと思うんですけど通路は暗くて水槽は明るいじゃないですか。そのコントラストで水槽の中の展示がよく見える仕掛けなんですけど、ここでいうと中の会議をしている人たちがよく見える照明の仕掛けを作っている。なかなか面白いでしょ。会議しているところを見せるということでこういう演出を行ってます。

CONFERIUM 画像

 違うカットで見るともっと分かりやすくて、こうやって真っ暗な通路の中に会議室だけがストンと見えてくる。こうすることによって、極めてシンプルな手法なんですけど、VISIONである「個性的な会議を敢えて積極的に見せる」っていうことがうまく達成できたじゃないかなプロジェクトだったと思います。絵面的には怖かったり、危険な暗さっていうのは駄目なんですけど、ここは暗くするっていうVISIONを明確に持っていたので、あえて暗くしますっていう説明をきっちりしました。ただ、写真見ても分かるように、室内からの漏れ光っていうのがどんどん出てくるんで、それなりに危険を回避するような明るさは確保しているというのは、デジタルな検証を使って、数値的にみて大丈夫かなっていうことはやってます。会議室は常点していて、点いていることでこの空間が成立しているっていう考え方で計画しました。


東京ギフトパレット 画像

東京ギフトパレット

榎並:東京駅の八重洲北口にオープンした東京ギフトパレットていう施設なんですけど、これ既存の写真です。写真左側、これがJR東海ツアーズさんのエリアとなっていました。右側に見えるカラフルなダウンライトが点いているところ、ここが東京ミタスのエリアで、土産物だとか食物販を扱っている施設でした。それとその間を柱がいっぱい立ってるんですけど、ここが改札から自由通路になってるんです。この自由通路を挟んでミタス側とJR東海ツアーズ側を改装して新たな物販場を作るのが今回のこの東京ギフトパレットっていうプロジェクトでした。

東京ギフトパレット 画像

このプロジェクトでのVISIONは大きく2つありました。
1つ目が「明確なコンセプトと力強いアイデンティティを備えて、経年劣化に陳腐化しないモダンデザインを具現化する」っていうこと。
2つ目は東京駅なので「日本の玄関口にふさわしい改札前商業空間としての存在感を示してどこにも負けない物販ゾーンを設置する」という、この2つのVISIONでした。まずは「コンセプトと力強いアイデンティティ」っていうところのキーワードから、力強く見せるっていうことでいうと空間だとかMDをしっかり主張していかないと駄目だよねっていうことで、1つ目のMISSIONとしました。次に「陳腐化しない」っていうキーワード。これを基に、訪れた人たちが上質だとか心地いいって思うような明かり感が必要なんじゃないかっていうことで「訪れる人が感じる上質な心地よさ」としました。
3つ目は「改札前の商業空間としての存在感」ここから施設に向かって、自然にそのエリアに導いていかなきゃ駄目だなというふうなMISSIONを打ち出してます。
最後、4つ目が「どこにも負けない物販ゾーン」っていうことで、やっぱりお客様が買い回りすることが物販ゾーンとかエリアって大事だと思っているので、環境通路からテナント、テナントからテナントへ「リレーション効果」が大事なんじゃないかということでMISSIONの4つ目は「環境通路、テナントへのリレーション」ということにしてます。

東京ギフトパレット 画像

この資料は、実際プレゼンテーションの時に使わせてもらったんですけど「空間とMDの主張」ともう1つ「上質な心地よさ」っていうところの説明資料です。自由通路からのカットになってるんですけど、アイコニックで非常に印象的なデザインの連立する柱。あと今回特徴的な暖簾型のファサードっていうものの見せ方をちょっと考えている部分で、それぞれのデザインを主張するには、グラデーションによる演出がいいんじゃかなっていうところでの提案になってます。ちなみに暖簾のこの部分が、プチ情報なんですけど新幹線の車両を再利用したものだったりしていて、東京駅に行かれた際には是非ご覧になってください。なかなか美しさと今の時代のSDGsじゃないですけど、そういったところを視点に入れたデザインになっていると思ってます。
照明は1番目のMISSIONと2番目のMISSIONを心地よいグラデーションで表現したらどうかという形になってます。

東京ギフトパレット 画像

これは、3つ目と4つ目のMISSIONに関わってくる資料で、色温度について説明しているものです。改札から自由通路にたどり着くまで実際現場実測してみると、4000Kっていう白っぽい色だったんです。そこから現状のミタス、お土産屋・食物販を扱っているスペースの色温度測定と、今後改装していったときにどういう見せ方がいいかを設計者とのやりとりの中で、こっちのテナント内は3000Kがいいんじゃないかっていう結論に達しました。そうすると、改札からのこの通路が4000Kの白色で、急にテナントに入ると3000Kになってくるんですね。急に変わることは訪れる人たちにとって、自然な形で導いていくような気持ちにさせるにはちょっと落差が大きいんじゃないかと思っていて、前のページで説明した柱だとか暖簾型のファサードっていう衣装に対しての演出を、3500Kっていう中間色で行うことによって、その色温度のギャップを中和できるんじゃないかっていう提案になってます。つまり改札から徐々に色温度をテナントに近づけていくような雰囲気を想像していただくと分かるんですけど、そういう形の自然な導きだったり、4つ目のMISSIONの自由通路を挟んでテナントからテナントへのリレーションっていうものが行えるんじゃないかなと。

さらに、明るさと抑揚について説明していて、改札付近の照度を測定してみると1000lx弱っていう床面でかなり明るいフラットな印象で、さらに現状のお土産や食物販を扱うミタス側っていうのがかなり暗い印象を受けたので、お客さんの方からも「既存より明るくしたい」っていう要望もあったことから「少し照度を上げていきましょう」と。単に明るくするっていうことだけじゃなくて、ショーケースが浮き立つような抑揚をつけながら、テナントからテナントへ買い回りしたいような抑揚がつけれたらという資料になってます。それってどういうことかというと「コントラスト弱」とか「コントラスト小」とか書いてるんですけど、コントラストが弱い所から徐々にコントラストをつけていきましょうみたいなプランになっていて、さっきの色温度の話じゃないですけど、徐々にコントラストだとか照度を上げていくことによってゲストが自然に導いていけるようなそういう効果を狙っています。

東京ギフトパレット 画像

その3つの効果をさらに紐解いていくと、照明の演出の中で大きな要素が3つあるんですけど、それにそれぞれグラデーションを与えていきましょう。それが今回のVISIONの達成になるんじゃないかっていうところを導いていきました。1つは明るさのグラデーション。上質なグラデーションで照らしていきましょうっていうこと。2つ目が色温度のグラデーション。これによって自然に導いていきましょう。3つ目がコントラストのグラデーション。こいつで買い回りを促進していきませんかという、この3つのグラデーションを今回は大事にしていると。こういう結論に達した案件でした。

東京ギフトパレット 画像

じゃあどんなのが出来上がったのっていうのが、こんな感じです。自由通路のカットです。ミタス側がこっちで左側が東海ツアーズ側。上にあるのは既存のダウンライト穴を使ってたんで切って考えていただきたいんですけど、暖簾はグラデーションで柔らかく照らしている。柱の上部も同じくグラデーションです。上質な雰囲気を出しながらこのスペースの雰囲気を作り出していく。色温度に関しても、床面が真っ白な状態っていうのを分かっていただけると思うんですけど、こういう状態から少しテナント内から滲み出してる明かり分かります。この滲み出し光がうまく混ざっていったときに中間色の、この暖簾だとか柱を照らしている色温度につながってくるような形です。

東京ギフトパレット 画像

このカットを見ると分かりやすいです。前の通路は4000Kで中は3000K。滲み出す辺り、中間色っぽくなってるの分かりますか? これで自然に中に導いていくような形です。あとはこのファサードの、暖簾の演出も中間色になってます。3500Kはここに入ってます。このきわに。ギャップをあえて見せるっていうやり方もあるんですけど、シームレスにできるだけつないでいくっていう見せ方が今回のプロジェクトでははまったかなと思っています。ケースバイケースだと思うんです。ギャップを良しとするってところもあるし、いい意味での違和感てところを持ち味とするプロジェクトもあるとは思うんですけど、今回の場合はそこをグラデーションでつないでいきましょうっていうところです。

今回の内装材、新幹線の外装であったりとか、特に柱のこういった細かい意匠。こういったところがどういうふうに光るのか、榎並さんの照明シミュレーションのやり方を教えてください。

榎並:シミュレーションはもちろんやります。例えば僕らのソフトの中で3Dで照度検証だとか光の広がりを見れるような「Dialux」っていうソフト、そういうデジタルな検証もしますけど、うちの場合は実際の器具をそれぞれのメーカーさんにお借りしてだとか光の確認をすることは多いです。どうしても数字だけでは目に見えなかったりだとか、CGだけでね、もちろんすごい最近精度が上がってきてるんでかなりリアルなCGにはなるんですけど、やっぱり実際見て感じた事っていうのは、非常に説明するうえでも納得感はあると思うんで、できる限りサンプル等で実際の光を見るようにはしてます。


発想の原点

こういった素晴らしい作品をイメージされるときのインスピレーションの源を伺いました。

榎並:日常の中でいろんなものにアンテナを張るようにはしてるんですけど、例えば自然現象であったり街にある空間だったりとかはあるんですけど、強いて言うなら最近は僕、映像かなって思ってます。映画だったりドラマだったりっていうのはあるんですけど、特にCMだったりとか、音楽のPVだったりとか。今挙げたものって、計算や検証をしつくして世の中に配信してるものじゃないですか。なのですごい参考になるものもあったりして、この演出どうやってんだろうっていう見方もするし、あのプロジェクトで今度はああいう演出使えるなってことも出てくるので、割とここ数年、映像からっていうのは多いです。


事務局「榎並さん、今日は楽しい時間をありがとうございました。ちょうどお時間になりました。この照明デザイナーさんのオンライン実践講座、あと1回予定をしております。次は照明デザイナーの田中圭吾さんをお迎えしてお届けしますので引き続き、宜しくお願いいたします。」 ※このページは、2022年2月17日(木)に行われたオンライントークイベントのレポートです。

自然光と共存し、空間を豊かに魅せる、次世代調光調色『Synca』は、以下WEBページで詳細をご確認いただけます。

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