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空間を長く活かすために。変化に強い照明計画へ

2026.8.7
空間を長く活かすために。変化に強い照明計画へ

近年、サーキュラーエコノミー(循環経済)やリユース(再使用)・リペア(修理)といった考え方の広がりを背景に、「今あるものを活かしながら長く使う」という価値観が社会全体で定着しつつある。
建築分野においても、建設費の高騰や2050年カーボンニュートラルへの対応などを背景に、建物を壊して建て替えるのではなく、既存ストックを活用しながら価値を高めるリノベーションやコンバージョンは、もはや特別な取り組みではない。

一方で、建物や内装が更新されても、照明のスイッチ区分や明るさ・光色の設定は、竣工時の計画のまま使われ続けているケースが少なくない。
空間を長く活かすために、照明はどのような役割を果たせるのだろうか。
本記事では、リニューアル事例を通して、これからの時代に求められる「変化に強い照明計画」の考え方を紹介する。

1章|空間は、変わり続ける

空間づくりは、完成した瞬間がゴールではない。
特にオフィスや商業施設では、組織変更や働き方の変化、テナントの入れ替わりなどに合わせて、空間は何度も更新されていく。

例えば、オフィスでは、

  • レイアウト変更やフリーアドレス化
  • 会議室や集中ブースの増設

商業施設では、

  • 店舗の売場構成や動線の見直し
  • テナントの入れ替わり


こうした変化は、日々の運用の中で比較的短いサイクルで繰り返されている。
そのため、これからの空間づくりでは、「完成時に最適な状態」をつくるだけでは十分ではない。
空間を長く生かすため、将来の変化も見据えながら、柔軟に使い続けられる空間を計画することが重要である。
では、照明はその変化に応えられるよう計画されているだろうか。

2章|空間は更新できても、照明は更新しづらい?


照明はこれまで、「変化すること」を前提に計画されてきた設備とは言い難い。 スイッチの位置や回路計画、照明器具の配置は竣工時に決まることが多く、その後変更するには配線工事や器具交換が必要となる。
そのため、空間のレイアウトや用途が変わっても、照明だけは最初の計画のまま使われ続けているケースも少なくない。

例えば、

  • オフィス内の執務エリアの一部を会議スペースとして利用するようになったが、スイッチ区分は以前のまま
  • 商業施設のテナントが入れ替わったが、新しい店舗に合わせた明るさや光色に調整できない

といった状況である。

しかし、空間が更新されるたびに照明設備を更新することは、コストや工事の面から現実的ではない。
だからこそ重要なのは、新築時やリニューアルのタイミングで、その先のレイアウト変更や用途変更まで見据えた照明計画を行うことである。

3章|変化に強い照明計画を実現したリニューアル事例

オフィスや店舗のリニューアル、LED化など、照明設備を更新するタイミングは、将来の運用変化まで見据えた照明計画を取り入れる絶好の機会でもある。
その考え方を実践した事例が、1966年竣工の既存オフィスビルを大規模リノベーションした「WORK VILLA MITOSHIRO」である。

「WORK VILLA MITOSHIRO」外観

このプロジェクトでは、建物を壊して建て替えるのではなく、既存ストックを活かしながら「ZEB Oriented」を獲得するなど、新たな価値を創出する取り組みが行われた。
照明においても、蛍光灯から高効率LEDへの全館リニューアルに加え、無線制御システムとダクトレールを採用している。

  • 入居者専用ラウンジや貸会議室、エントランスでは、無線制御システムによる調光調色を採用し、時間帯に応じて光環境を変化
  • ダクトレールを設置し、将来的なレイアウト変更やテナントの要望に応じた照明器具の移設・追加ができる計画を採用
1F/地下フロアの入居者専用ラウンジ
「WORK VILLA MITOSHIRO」事例をさらにくわしく見る

また、この建物の1~3階に入居する安井建築設計事務所 東京事務所「美土代クリエイティブ特区」では、こうした照明計画を活かし、執務、打ち合わせ、イベントなど、多様な利用シーンに応じて光環境を切り替えることが可能になっている。

安井建築設計事務所 東京事務所「美土代クリエイティブ特区」
安井建築設計事務所 東京事務所「美土代クリエイティブ特区」事例をさらにくわしく見る

同様の考え方は、商業施設のリニューアルでも活かされている。
イタリアンレストラン「MONDO 相模大野」では、リニューアルを機に、時間帯に応じて照明シーンを切り替える運用を取り入れ、日中から夜へとレストランの表情を変えることで、オールデイダイニングの魅力を増している。

「MONDO 相模大野」メインダイニングエリア
「MONDO 相模大野」事例をさらにくわしく見る

このように、照明設備を更新する際は、「今」だけではなく、「将来」の変化や多様な使われ方まで見据えて計画することが重要だ。それにより、空間は変化に柔軟に対応しながら、長く価値を維持し続けることができるのである。

4章|変化に強い照明計画を実現する、「無線制御」という選択

では、こうした「変化に強い照明計画」は、どのように実現すればよいのだろうか。
その鍵となるのが、無線制御システムである。
有線で行っていた従来の照明制御では、照明グループやスイッチ区分を変更する際は、配線工事が必要となることが一般的だった。一方、無線制御システムであれば、以下のように柔軟な対応が可能だ。

  • レイアウト変更の際、配線を変更することなく、照明グループの再構成・用途に応じた照明シーンへの切り替えができる
  • 入居するテナントに合わせて、必要な明るさや光色に調整できる


つまり、新築時や照明設備を更新する際に無線制御システムを採用することは、現在の空間に最適な光環境を実現するだけではなく、将来の変化にも柔軟に対応しやすい環境をあらかじめ整えることにつながる。

――空間を長く活かすために。
「変化に強い照明計画」を実現する手段として、無線制御システムは有効な選択肢の一つといえるだろう。

Writer
ヒカリイク編集部

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