『等価メラノピック照度』(メラノピックルクス、EMLともいう)とは、 聞き慣れないかもしれないが、「光の量」を表す単位の一つだ。WELL認証1)の評価項目にも掲げられているため、今後ますます重要視されていくだろう。 “健康のための光”を考える上で重要で、詳しく紹介する。
1) オフィス等の空間を、「人の健康」という視点で評価し、認証するシステム。
等価メラノピック照度とは
2014年に提唱*された「光の量」を表す単位。従来の照度とは異なり、 2002年に発見された新しい光受容体(内因性光感受性網膜神経節細胞、ipRGC)の感度を考慮し、体内リズム(サーカディアンリズム) に影響する明るさを定量的に捉えることができる。
照度と等価メラノピック照度の違い
照度
明るい所で色を識別する細胞(錐体細胞)が感じる明るさを表す。
等価メラノピック照度
メラトニン(睡眠を促すホルモン)の分泌を抑える 働きを持ち、体内リズムの司令塔を担う細胞(ipRGC)が感じる明るさを表す。
すなわち、等価メラノピック照度とは「体内リズムへの影響を考慮した上で表 現される明るさ」であると言える。 具体的には、等価メラノピック照度が高いほどipRGCによってメラトニンの分 泌が抑制されるため、覚醒や集中を促す光となる。低ければ、メラトニンが分泌されるため、「睡眠」や「リ ラックス」につながる光となる。
等価メラノピック照度の計算方法
一般的な照度計で等価メラノピック照度を計測することはできないが、照度 計で計測した照度にメラノピック比をかけることで、等価メラノピック照度を 計算できる。WELL認証のwebサイトには、メラノピック比計算 シートが公開されている。
参考:WELL認証webサイト(※メラノピック比の計算には、光源の分光分布 データが必要。)
等価メラノピック照度で“健康のための光”を考える
私たちの体内リズムは、「朝明るくなり、夜には暗くなる」という1日の光の変化に同調する。現代では、太陽の出ている日中も、日が沈んだ夜間も、屋内の人工照明のもとで過ごすことが多いため、日中は光不足、夜間は光を過剰に浴びている傾向にある。 体内リズムが乱れると、不眠などの睡眠障害に加え、高血圧や糖尿病など多くの病 気を引き起こす原因になるとされている。健康のための光を考えると、体内リズムへの影響を表す等価メラノピック照度は大いに参考になるはずだ。
等価メラノピック照度をコントロールする上で重要なのは、光の色すなわち色温 度だ。 1800~12000Kという色温度の範囲を持つLED照明で、色温度ごとの等価メラノピック照度を比較すると、1800Kでは5000Kの0.3倍、12000Kでは5000Kの1.5倍と全体では約5倍の違いがあり、色温度が大きく左右することがわかる。 同じ照度でも、色温度が高い(青に近い)光は等価メラノピック照度を確保しやすく、色温度が低い(赤に近い)と確保しづらいことがわかる。
※遠藤照明 次世代調光調色シリーズ「Synca」を同じ照度で比較した場合
それでは、健やかな体内リズムを光でサポートするべく、実際の照明計画に等価メラノピック照度を取り入れてみたい。
日中の照明環境(例:オフィス)
日中の光不足を防ぐためには、高いメラノピック照度が求められる。WELL 認証では体内リズムを整える目安として、作業面から18インチ(約45cm)の 高さにおいて、等価メラノピック照度で275EMLを少なくとも4時間(遅くとも正午までに開始)確保することが推奨されている。2) 前述の通り、高色温度の光は等価メラノピック照度を効率よく確保できるため、必ずしも高い照度は必要とされない。調色機能を上手に活用すれば、適切な等価メラノピック照度を確保できる。
2) *WELL v2,Q4 2021より
調色機能を取り入れたオフィス事例はこちら
夜間の照明環境(例:自宅、高齢者福祉施設)
夜に浴びる光は体内リズムの乱れを引き起こす原因になるため、夜間は等価メラノピック照度を極力抑えることが重要。とは言え、生活に支障が出るほど暗くはできない。低色温度の光を活用すれば、照度は確保しつつ、等価メラノピック照度を抑えることができるので、夜間に生理的に過剰な光を浴びることを防げる。
健康は体内リズムと密接な関わりがある。 体内リズムへの影響を表すことができる等価メラノピック照度を通して、自身の心身を見つ直すこともできるだろう。 照度に加え、等価メラノピック照度を適切にコントロールして、人の体や心に寄り添った光環境をつくり出すことを目指していきたい。
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