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遠藤照明『Synca U/X Lab』オフィス
現在、住宅はもちろんのこと、オフィスや商業施設などさまざまな空間で、植物を取り入れたデザインの価値が高まっている。 こうしたデザインには植物の生育に関する視点が欠かせず、室内で植物を健やかに育てるための光が必要となる。 今回の実験では、観葉植物に必要とされる照明環境について探ってみた。
観葉植物を室内に設置する場合、植物の生育の観点では、植物に向けてスポットライトなどを照射して「約2,000lx」の明るさを確保することが理想的だと言われている。一般的なオフィスの机上面に求められる明るさが約750lxであることを考慮すると、植物に対してはその3倍近くとなる高い照度が必要とされる。
葉や茎の成長に必要とされるのは、400~500nmの波長を多く含む青い光だと言われている。一方で、光合成に必要なのは、600~700nmの波長を多く含む赤い光だと言われている。青い光と赤い光、どちらの波長も植物の生育には欠かすことができないのだ。
上述の通り、「葉や茎の成長」と「光合成」では、求められる波長すなわち光色が異なるようだ。
今回の実験では、光色と明るさが異なる6つの照明条件を用意し、「葉や茎の成長」と「光合成」それぞれに対して、光色がどれだけの影響を与えるのか確かめてみた。
以下の条件で植物を照射し、約一か月半後の葉や茎の育成状態を評価した。
まず、「葉や茎の成長」のみに着目した結果をご紹介しよう。
白い光(5,000K)と赤の光では、低照度(750lx)で葉や茎の徒長(※1)が見られ、高照度(2,000lx)では大きな変化がなかった。一方で、青い光(12,000K)では、低照度でもしっかりと葉や茎が伸長し、落葉もほとんど見られなかった。
したがって、青い光(12,000K)であれば葉や茎の成長につながる光を効率的に確保できるため、2,000lxより低い照度に抑えても、他の光色の2,000lxと同等の効果を得られる可能性があることが確認された(※2)。
また、変化なしの高照度の白い光(5,000K)も一見良いように思えるが、成長しない状態は植物にとって不自然な状態であり、将来的に生育不良に陥る可能性も考えられるため、今回は△の評価を付けた。バイオフィリックデザインの醍醐味とも言える、植物の成長を実感できる喜びが得られないという心理的な要因もある。
※1:徒長とは、不足した光を求めて葉や茎が伸びること。ヒョロヒョロとして見た目が悪い上に、害虫などに対する抵抗力も弱く、葉を落とすこともある。
※2:植物の樹種や個体差により結果が異なる可能性がある。
次に、「光合成」に着目した結果をご紹介する。ここでは、いずれの光色でも徒長が見られなかった2,000lxの明るさで、光色ごとに水分量(※3)を評価した。
※3:植物は光合成によって水を循環させることから、吸収された水分量から光合成の活性度を測った。
吸収された水分量は、「青い光 < 白い光 < 赤い光」と、赤の波長が多い順に並んでおり、光色が赤いほど活発に光合成が行われた(※4)。
※4:植物の樹種や個体差により結果が異なる可能性がある。
本実験によって、以下のことを確認することができた。
一般的に、オフィスは太陽光が入りにくく、植物を育成するには過酷な環境であることが多い。
また、通常の白色光の場合、2,000lxという強い光を当てても、実験期間中は成長が見られなかった。もし今後成長が見られたとしても、2,000lxの白い光は、オフィスの視環境としては明るすぎる。
バイオフィリックデザインは、植物が成長する楽しみも重要な要素のひとつである。そのため、バイオフィリックデザインをオフィスに導入する場合は、植物の成長を効率的に促す、赤い光と青い光が出せる調光調色機能付きの照明器具を導入すると良いだろう。
また、植物の成長を促す青い光は低照度(750Lx)でも高照度(2,000lx)と同様の効果を発揮したため、青い光は照度を下げるなどの工夫をすれば、植物を育成しながら省エネを両立できる可能性もある。
今回は、オフィスでバイオフィリックデザインを取り入れる際の光環境についてお伝えした。植物について少しでも理解を深めたうえで、室内でも人と植物が共存できる光環境を取り入れてみてはいかがだろうか。