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自然の“不便さ”にある、人が心地良いと感じる光
parkERsが考える植物と光の関係

2022.6.1
自然の“不便さ”にある、人が心地良いと感じる光<br><span>parkERsが考える植物と光の関係</span>

パーカーズのオフィス。植物に囲まれた空間の心地良さを、同社の社員が自ら体感するため、オフィス全体が実験的な場となっている。

植物と光のコントロールできない魅力を取り込む

近年、商業施設やオフィスなど様々な場所において、植物を始めとする自然的な要素が求められる中で、空間デザインと一体感を持ってコンセプトを引き立てる植栽計画の価値が高まっている。そして、植物を建築やインテリアに取り込む際に、デザイン性だけでなくメンテナンスや植物の生育など、ノウハウを持ったプロの視点は欠かせないだろう。
全国でフラワーショップ「青山フラワーマーケット」を展開するパーク・コーポレーションが、2013年に立ち上げた「parkERs(パーカーズ)」は、店舗や住宅、公共空間において植物や自然の心地良さを表現することを目指すデザインチームだ。今回は、パーカーズのクリエイティブディレクターである城本栄治さんに、同社が目指している植物を取り入れた空間づくりと、そこでの光の考え方について聞いた。

「風景+人」がつくる公園の魅力を室内に

「私たちは、都市生活者に向けて『日常に公園のここちよさを。』をテーマとして、室内緑化を始めとする空間づくりに取り組んできました。ここでいう公園とは、単純な遊具や開放的な場所の表現ではありません。公園を訪れたときの気持ち良さの理由を考え、その要素に焦点を当てて、空間に取り込もうとしています。居心地が良い公園には、緑や花、池、川、石、樹木、あるいは木漏れ日の光といった様々な要素があり、加えて、そこに集まる“人”の存在によってより豊かな空間体験が生まれると考えています」と城本さん。この「公園=風景+人」という考え方を基に、住まいやワークスペースといった日常空間へ向けた、植物を始めとする自然物や現象を取り込んだデザインを行っている。

parkERsオフィス
同オフィスでは、自然の中で感じる心地良い自然や光の体験を取り込むことを目指した。

城本さんが、商業施設やオフィスにおける照明の検討で気を付けているポイントの一つが、照明器具が持つ機能性を一旦、度外視して、植物と光の関係を探ることだという。
「照明メーカーでは、照明器具の演色性や光のコントロールといった利便性や機能性を高める努力を日々されていると思います。実際に器具の性能向上によって、省エネや用途の多様化、表現の幅が広がるなど、空間デザインにおける利点は多くあります。しかし、日常の中の心地良い光、公園や自然の中で感じる光の体験を思い返すと、そういった光の機能的な部分とは少し違うところに魅力があるのではないでしょうか。例えば、木々の枝や葉が重なった隙間から落ちる木漏れ日は、その下で読書をしようとすると、光が揺れて、文字が読みにくいかもしれない。あるいは、夜の山中での焚き火は、火を見ていると心が落ち着くけれど、周りが見えずに草むらからの物音に怯えることもあったりする。このある種の不便さの中で、人が工夫して心地良さをつくり出すことが必要だと考えています」

parkERsオフィス parkERsオフィス
パーカーズのオフィスでは、公園や自然の心地良さを表現するために、不便さが内包する空間の魅力をデザインする試みがなされる。

機能とは違う体験のデザイン

同社が運営するフラワーショップを始め、物販店などの照明は、演色性が高く、商品がよく見える性能は当然必要だ。一方で、飲食店やオフィスでは、「全体にフラットに明るくするのではなく、陰影や植栽による光の揺らぎがあるような場所の方が、人が集まり、リラックスできる空間として活用されることが多いはず」と城本さん。
同社のオフィスでは、機能を超えた心地良さを探るためのデザインが試みられている。天井から吊られた脚のないデスクや、ヒールでは歩きにくいウッドチップを敷き詰めた床、誤って足を踏み入れてしまいそうな水溜まりのような大きな水盤まである。
「先述した木漏れ日のように、植物や自然のコントロールできない部分の面白さ、魅力を拡張した表現にも力を入れています。スポット照明による一方向からの光では、植物の上の部分にしか当たりません。かといって全方向から光を当てても不自然だし効率が悪い。その立体的で有機的とも言える陰影や、水や時間による移り変わりといった、自然的な要素を組み合わせてデザインした方が、空間に付加価値を生み出していける。そういったコントロールできないもの、不便なことの中にある美しさや魅力は、今後デジタルテクノロジーや照明器具の性能が向上するほど、よりうまく表現できるようになる可能性を感じています」

いばらきフラワーパーク内部
同社がリニューアルによる魅力向上の策定を担い、運営にも携わる「いばらきフラワーパーク」(茨城県石岡市)。宙に吊られた植物を伝った水が下の水盤に落ちて循環する灌水システムを採用し、その水や植物の揺らぎを引き立てるためのライティングとなっている。

parkERs(パーカーズ)

事業主体:株式会社パーク・コーポレーション
業務内容:空間プロデュース(トータルコンセプト設計)、空間デザイン(内装設計・外構設計・環境計画)、
施工(監理)、植栽メンテナンス、植物を使った企画 やブランディングなど
https://www.park-ers.com/

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