藤本壮介さんへ照明家からのプロポーザル


「液体のような明かり」

光の原点

光には波長がある。
目に見える波長を可視光線と呼び、
虹を見て解るように波長の短い紫系から長い赤系まで
多くの色を含んでいる。
青空は、短い波長が細かな大気に反射し見えて来るもので、
夕日は、短い波長が途中で反射してしまったため
長い赤系の光が届く現象だと考えてもらえば良い。

もしも、雲の中で生活をしていたら、
どんな感じになるのだろう…。
もしも、その中小さな太陽があったならば、
どんな感じになるのだろう。
光の位置・光の大きさ・光の強さ・他、などの違いで、
様々な表情を感じる事が出来ると思う。
ミスト空間になるのか?それとも、
細かな遮膜で構成するか??

空間の中で液体のような明かりは
物理的には当然存在しませんが、
そんな感覚に近い空間というものは
あり得るのではないでしょうか。

実体験でイメージに近いのは、
薄雲りの雲の中を高度を下げながら飛行する機内から
濃淡のある雲の表情を見ている感じでしょうか。

ダイレクトに表現しようとすれば
霧に満たされたような空間を作ることになりますが、
生活空間の中では現実的ではありません。

経験がないのでうまくいくかどうかわかりませんが、
二つの提案を考えてみました。

ひとつ目は人間自体を発光させることで
動きに光がついてきて、
空間の反射条件によって居心地のよい場所や、
その時の気分に合った場所が
発見できたりする可能性があります。

体全体が発光する人間はSFチックになってしまうので、
例えばLED冠のように本人から光が見えない部分に
発光体を取り付けて歩くなんてことはどうでしょう。

二つ目は空間全体を白色の2重ドット幕にして
裏からバックライトでモアレをつくること。
動きにしたがって微妙な光の変化が生じます。

住宅の中で「空間の表情を楽しむあかり」としてのヒントに。

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