<オンラインセミナー>ZEBとウェルネスの両立を目指してー宇部市新庁舎を例として 画像

世界情勢に伴い、エネルギーの削減はますます喫緊な課題となっております。
そのような中、私たちが取り組まなければならないのは、省エネに優れたデザイン と 人にとって心地よいデザイン の両立であると考えます。

模索はつきないと思いますが、ZEBオリエンテッド認証 と CASBEE建築(新築)最高評価のSクラス(5つ星)を獲得された「宇部市新庁舎」を例とし、人にも環境にも優しいこれからの建築・光環境についてお話いただきました。

Guest speaker

篠原正樹

篠原正樹 Masaki Shinohara(建築家/株式会社佐藤総合計画 九州オフィス 副代表 シニアアーキテクト)

佐賀県佐賀市生まれ

九州大学工学部建築学科卒業

九州大学大学院人間環境学府都市共生デザイン専攻修了

2002年 株式会社佐藤総合計画 入社


主なプロジェクト:東京都北区中央図書館、アースビル立川、基山町立図書館、西南学院大学図書館、宇部市庁舎など

主な受賞:照明デザイン賞優秀賞、グッドデザイン賞、図書館協会建築賞。公共建築賞地域特別賞など多数受賞

https://www.axscom.jp/

アースビル立川 画像アースビル立川
写真:エスエス

西南学院大学図書館 画像西南学院大学図書館
写真:針金洋介


岩井達弥

岩井達弥 Tatsuya Iwai(照明デザイナー/Lumimedia lab Inc.CEO)

東京浅草生れ、千葉市育ち、江戸川区在住、しらけ世代

1996年 岩井達弥光景デザイン設立、2020年 Lumimedia lab 株式会社 設立


主な照明デザイン担当プロジェクト:国立新美術館、京都国立博物館 平成知新館、会津若松城天守閣ライトアップ、谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館、ショウナイホテルスイデンテラス、東京国際空港(羽田空港)第2ターミナルビル本館南側国際線施設、下瀬美術館など


主な受賞:照明学会照明デザイン賞最優秀賞 京都国立博物館 平成知新館、国際照明デザイナーズ協会照明デザイン賞アワードオブメリット 京都国立博物館 平成知新館、照明学会照明デザイン賞優秀賞 谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館、ショウナイホテルスイデンテラス、照明学会日本照明賞「サスティナブル社会に応える世界的著名3美術館の照明LED改修計画」など多数受賞

https://www.lumimedialab.com/

ショウナイホテルスイデンテラス 画像ショウナイホテルスイデンテラス
写真:平井広行

京都国立博物館平成知新館 画像京都国立博物館 平成知新館
写真:大川孔三

Host speaker

近藤秀彦><span class=

近藤秀彦 Hidehiko Kondou(株式会社遠藤照明 未来環境研究課)

東京理科大学 理工学部 建築学科 卒業

東京工業大学大学院 環境・社会理工学院 中村芳樹研究室 修了

2013年 株式会社石本建築事務所 入社

2022年 株式会社遠藤照明 入社

見逃し配信

参加者の声

  • ZEB化や省エネ化は設備投資をしなければ達成できないものと考えていたが、設計手法の工夫で達成できるということを学べてよかった。
  • 今まで輝度についての具体的な話がありませんでしたが 今回のセミナーでどのように取り組んでいくのがいいのか 方向性を示して頂いたように思います。
  • 現在照明設計は照度設計から輝度設計へ移り変わる転換点にあるが、輝度設計から更に人に寄り添った『明るさ感設計』が重要だという話が参考になった。明るさ感が誰でも扱うことのできる数値で表現できるようになれば、快適性を高める照明計画も更に広がると感じた。
                                  

イベントレポート

事務局「本日はZEBとウェルネスの両立を目指してと題しまして宇部市新庁舎様を例として進めてまいりたいと思っております。」

宇部市新庁舎
1社会的背景_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

社会的背景

事務局「まず私なりに予習をしてみました。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて「省エネの推進と快適性の向上の両立の実現」が今、社会的な課題であると言われております。それにより投資が集まりやすくなるとか企業の評価にもつながる仕組みになってきているそうです。省エネの推進としては、ESGとかゼロカーボンアクションとかZEBとか、あと快適性の両立としてはWELL認証とかLEEDなど、いろいろ調べていくと建築物の評価認証表示を行う制度っていうのは世界にこんなにいっぱいいろいろとあるのだなっていうのも今回の予習を通じて勉強させていただきました。



2各種認証_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

事務局「省エネの推進としては本日のキーワードZEB、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル。で、ZEBっていうのは省エネと創エネで消費する一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物で、ゼロエネルギーの達成状況に応じてこんな感じで4段階のZEBのシリーズというのが定義されているそうです。今回のお話を詳しくいただく宇部市の新庁舎様はこのゼブオリエンテッドを認証させておられる施設です。そしてもう1つ、快適性の向上、ウェルビーイングとしては建物の環境、エネルギー性能と利用者の建築快適性を評価するシステムとしてWELL認証というようなものもよく聞かれるようになってきました。省エネに優れたデザインと人にとって心地良いデザインの両立、その模索が尽きないと思いますけれども、ここから先はZEBのオリエンテッド認証とCASBEE、建築の最高のSランク五つ星を獲得された新庁舎様を例として、人にも環境にも優しいこれからの建築光環境について考えてみたいなと思っております。」



ZEBとウェルネスの両立を目指して取り組んだ宇部市新庁舎

建築の観点からどういうことをされたのかをまず篠原様の方から、それを受けて照明の観点でどういうことをされたのかを岩井様の方からお話しをいただきたいと思っております。

3コンセプト_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

これからの庁舎を考えるAXSの3つの視点

篠原「それでは佐藤総合計画九州オフィス意匠設計の篠原から、ZEBとウェルネスの両立を目指して取り組んだ宇部市庁舎についてご説明させていただきます。まず私から大きな取組方針についてお話しして岩井さんにバトンタッチさせていただければと思います。まず、私たち佐藤総合計画はこれからの建築を考える上で先程お話があったZEBやウェルネスだけでなくいろんな要素を考えているということをちょっとお話しさせていただければと思います。

まず、数値からひとへということなのですが建築都市作りにおいて脱炭素、省エネルギー、省CO2はこれから喫緊の命題になっています。ただし、脱炭素だけを絶対視していくと建築の価値も狭めてしまう危険性もあると。そこで当社はZEBの実現、ウェルネスの向上、エネルギーマネージメントをキーワードに人間の感覚と知覚を取り入れて、パッシブと最先端技術のバランスがとれた人間親和型の環境建築の実現を目指しています。 2点目が風土のポテンシャルを発見するということで今、自然と人間の関係の在り方が改めて問われていると思っています。そのためにも地域風土いうものの再認識が不可欠だと考えます。建築に関わる者がなすべき第一歩として一つ一つの風土、敷地だったり、地域だったりのポテンシャルを発見することと、そのポテンシャルを生かしてデザインを求めることが重要だというふうに考えています。 3点目、ポイントとなるのがそれぞれの課題へのシームレスな取り組みだと思っています。脱炭素やウェルネス、あと、非常時の環境確保を徹底的に追求することがこれから求められていると思っています。脱炭素でウェルネスな建築及び環境設備システムは非常時の機能継続に対しても重要な役割を果たす。そういった今後は日常時と非常時が脱炭素とウェルネスがシームレスにつながっていくことが求められているというふうに思っています。

このような試験のもと、宇部市庁舎の設計にあたって地域の特性や庁舎の特性を踏まえた上で100年の未来を見据えZEB化、多様なCO2対策や、人に優しい快適性や知的生産性にリンクするウェルネスの向上。そして庁舎としてはなくてはならない安心安全性、BCP性能の強化、これらをバランスよくシームレスにリンクするように取り組みました。その結果としてゼブオリエンテッドの認証取得であったり、CASBEE、Sランクの認証取得であったりといった結果につながったかと考えています。



4構想_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

なぜ、宇部市庁舎でZEBとウェルネスをテーマにしたのか

篠原「まず、なぜ、宇部市庁舎でZEBとウェルネスをテーマにしているかということですが、宇部市は2018年にいち早くSDGs未来都市に選定されています。SDGs未来都市っていうのは内閣府が2018年度からSDGsの達成に向けた取り組みを積極的に進める自治体に公募して経済、社会、環境の3つの側面の総合的な取り組みによって新たな価値を創造する提案を行っている自治体を認定する制度です。
このような背景もあって新しい庁舎の建設のまちづくりを先導し、次の100年の未来を創る庁舎と位置づけました。ちなみになぜ、ここの完成写真がパースを使っていないかというと、まだ奥にある5階建てのこの行政機能が入っており、1期庁舎しかできていないからです。現在手前にある2期庁舎はこれから工事を行う予定になっています。私のほうからまず01背景、建築概要、建築計画、そして環境親和計画というふうに順にお話しさせていただいて岩井さんにバトンタッチできればというふうに思っています。」



5宇部市_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

プロジェクトの背景

篠原「宇部市は山口県南西部に位置する約人口160,000人程度の街です。気候は温暖で雨が比較的少ない典型的な瀬戸内海式の気候になっています。古くから石炭で栄え、現在ではこの写真にあるような臨海部を中心に重化学工業地帯が形成されています。左の上にある赤い丸の部分が今回の宇部市の新庁舎の計画地です。宇部市の歴史を紐解くと明治から石炭産業で栄え埋蔵量に限りのある石炭を掘り尽くす前に、そのお金を活用して技術に投資することで石炭から工業への街へと成長しました。工業化したことで、左の上に写真にあるようにこのように公害が深刻しました。それに対して宇部方式といわれる自分達の住んでいる地域社会の健康は自分達で守ろうという自治意識のもと産・官・学・民による煤塵対策委員会を組織して煤塵対策を行ったというような歴史がございます。で、その結果、緑と花と彫刻の街という今の宇部市が作られたというような歴史になっています。」



6外観_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

宇部市庁舎の建築概要

篠原「1期庁舎が約16000㎡弱、2期庁舎が3000㎡となっています。1期工事は2022年2月に工事が終わって5月に開庁しました。なので、完成から今1年ちょっと経っているような状況です。これから2期庁舎の工事が始まるような状況です。手前に見えるのが既存の庁舎です。奥に見えるのが横のルーバー、横線に見えるのが新しい1期庁舎です。さらにこの1期の裏に立体駐車場があります。現在、この既存の庁舎が解体されて、これから2期庁舎の工事が始まります。」



7竣工写真_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

1期庁舎の完成写真

篠原「こちらが1期の北側、北東側のエントランスの写真です。右側に見えるのが立体駐車場で1期庁舎と立体駐車場は奥に見えるちょっと白く見えるブリッジでつながっています。1期庁舎、1階の総合案内の周りの写真です。4階の執務室の周りの写真になります。こちらは5階の議場です。」



8立地条件_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

建築計画の概要

篠原「まず計画地は宇部市の中心部にあり、このように周りには駅や大学病院、図書館、ホール、ホテルなどがあります。また、常盤通りという宇部のシンボルロードに位置づけられている緑豊かな並木道と青い線、川沿いに親水公園もある真締川の結節点に位置します。」



9新庁舎の目標_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

5つの大きな目標

篠原「新庁舎の整備にあたってこの5つを大きな目標に掲げて取り組みました。そのうち真ん中にあるのが環境先進都市、宇部市にふさわしい環境共生庁舎。こういったものを目標にして取り組んでおります。配置計画では、まちづくりを先導する庁舎を目指して街並みを作り、街に開かれた庁舎となるように取り組んでいます。施設構成は市民利用が多い窓口を1、2階に、執行部や食堂を3階、技術系や教育系の執務スペースを4階に、議会を5階に、そして設備スペースを6階に配置します。」



10計画1階_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

平面計画の概要1階

篠原「1階は図面の上側にある立体駐車場から図面の下、南側の常盤通りまで施設等を貫くプラムナード。平面でいうと黄色の部分なのですけど設けて、ちょっとパースが小さいですが特徴的なゆらぎのある天井にあるルーバーで来庁者を庁舎内部に誘う計画としています。プラムナードの中心には丸いカウンターを設けて総合案内としています。」



11計画2~3階_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

平面計画の概要2~3階

篠原「2階も立体駐車場とブリッジで接続し、2期庁舎までプロムナードでつながるような計画です。車の量が多い宇部市民にとって利用しやすい計画を心がけています。左部分2階の、この紫っぽい色が国の機関となる税務署です。3階は市長などの執行部や災害対策関係部署が入っています。災害時にはこのフロアがメインになるような考え方です。2期棟にはピンク部分に食堂があり、さらに食堂の下のほうに常盤通りや宇部港などを眺望するような展望スペースを設けています。1期庁舎の中心部に白く見えるエコボイドというものがあるのですが、これは1階から6階までを貫く吹き抜け空間で光や風を導くとともにちょっと上のほうにパースがあるのですが上下階の人の往来、コミュニケーションがしやすいような計画としています。」



12計画4~6階とR階_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

平面計画の概要4~6階、R階

篠原「4階は左下なのですが、ほぼ執務スペースです。4階の右上のグレーのところにリフレッシュスペースというのがあるのですが、こういった職員のウェルネス向上を意図した計画も行っています。5階は紫部分が議会ゾーン、水色は独立性が求められるICT部署やサーバールーム、監査などの部分が入っています。6階はグレー部分が屋内の機械室や電気室、その上下にある白いスペースがデシカント外調機とかコージェネレーションシステムまたは燃料電池、そういったものを配置しています。さらに右上のR階に太陽光発電パネルと真空管式の太陽熱集熱パネルを設置しています。」



13外観計画_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

外観計画

篠原「コンセプトは、宇部らしさを表現した積み重ねのデザインというコンセプトで計画をしています。飛躍的な発展を遂げた炭鉱の都、宇部の豊な地層表現をしています。と、共に産官学民の連携でご説明した宇部方式の精神、要は話し合いを積み重ねる、そういった考え方もこの外観デザインに取り込まれています。あとは右下のほうにちょっと小さく断面図、後ほど大きくご紹介するのですが、この外観計画っていうのは当初から環境計画を重要視した計画をしていまして、水平日射遮るような水平ルーバーやバルコニー。そういったものに外観とリンクさせながら計画をしていっています。」



14アートを楽しむ庁舎_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

その他

篠原「建築計画の最後なのですが、UBEビエンナーレ、現代日本彫刻展っていうのを開催している街にふさわしい庁舎とするために、庁舎内の各所にアートを設けた計画にしています。」



具体的な取り組み

15環境計画_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

環境計画

篠原「繰り返しになるのですが、私たちはZEB化とひとにやさしいウェルネスと安心安全、BCP、そして一番下にあるプラスアルファとして先進性。この4つを手段として、これらがシームレスにつながるような取り組みに確保を行っています。そのためにまず計画地ならではの気候特性などをどのように環境などから、どのような環境計画がこの市庁舎に必要かを考えています。たとえば、瀬戸内特有の安定した日射量を生かして太陽光や太陽熱のエネルギーを取り込む、そういったことをとり行っております。

先程の宇部ならではの特性に配慮した上で、このように4つの大きな項目に沿って具体的な取り組みをご紹介したいと思います。
1、負荷を元から絶ち、自然の恵みを生かすパッシブデザイン。
2、再生可能エネルギーを活用するアクティブ技術と高効率設備システム。
3、設備の適切な運転制御とワークスタイルの見直しによる運用効率化。
4、先進技術の波及、普及に向けた取り組み。
こちら断面図にいろんな環境の取り組みをご紹介したものになります。こういったことを1つ1つかいつまんでご紹介していきたいというふうに思っています。 」



16環境親和計画1_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

1、負荷を元から絶ち、自然の恵みを生かすパッシブデザイン

篠原「環境計画のセオリーで皆さんご存知だとは思うのですが、まず熱負荷をいかに抑えるかとか、そういったことが大事かなというふうに思っています。そういった意味で東西軸配置にするとともに東西面の負荷を抑えるために壁主体とした平面計画にして、南北面の開口部は必要最小限に抑えて、なおかつ、南面にはバルコニーや水平ルーバーを設けて日射に配慮した計画を行っています。

こちらが南面のファサードですが、このようにバルコニーや水平ルーバー、グラデーションブラインドを設けて直達日射を遮って、なおかつ、水平ルーバーやグラデーションブラインドで間接光を執務スペースの天井面に導く計画としています。このようにして昼光制御によって証明エネルギーを削減しています。

次に平面中央にあるエコボイドで、このような光の井戸として光を導くと共に各執務室の窓から取り入れる通風をさらに促進するような機能を持たせております。

このエコボイドを活用した換気システムなのですが、換気条件がよいときは右下にあるような緑に光っているおすすめランプで職員に換気を積極的に促して、自然換気のみでは外気導入量が不足するような場合とか、そういったときには小型ファンでアシストするようなそういった計画にしています。」



17環境親和計画2_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

2、再生可能エネルギーを活用するアクティブ技術と高効率設備システムについて

篠原「ちょっと私は意匠が専門なので概略だけ説明させていただくと太陽熱集熱器を屋上に162本を設置したりとか、マイクロコージェネレーションシステム、CGSと言っていますが、これを導入してガス発電によって電気と熱を作って、その熱は空調熱に活用したりとか。それ以外にも空冷ヒントポンプチラーや冷水蓄熱槽、そういったものに複数の熱源を活用して効率のよい空調運転を行っています。それ以外に太陽熱集熱や、コージェネレーションの排熱はデシカント外調機っていう除湿を行うような外調機があるのですが、そういったものに活用しています。」



18環境親和計画3_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

3、設備の適切な運転制御とワークスタイルの見直しによる運用効率化

篠原「まずタスクアンビエント照明、照明関係については後ほど岩井さんから詳しいお話があると思います。まず私が1で説明したパッシブに自然の力を生かすために、まずは私どもの計画としては、効率よく天井いっぱいまで窓を設けて自然光を室内、天井面に導く計画として照明エネルギーを削減するような取り組みを行っています。さらに天井面アッパー照明を併用して全体衝動を抑えていくこと、エネルギーを抑えること。そして明るさ感の向上、天井面が全体的に明るいとウェルネスの向上、そういったものの両立を目指して計画を行っています。さらに生体リズムに寄り添った照明計画として知的生産性を高めるようなそういった計画にしています。こちらはリフレッシュルームの照明です。先程ご紹介した4階にあるリフレッシュルームはこういった落ち着いたような照度、色温度にするような計画にしています。さらにオンデマンドといって、必要なとき、必要な場所にエネルギーを供給するっていうような考え方を設けています。無駄にエネルギーを使わないためにはこういった取り組みが必要なのかなというふうに思っています。ここで我々がやったのは、赤外線アレイセンサを用いて人がいるときに、いるところに空調を供給するようなそういった考え方です。もう1点ワークスタイルにも踏み込むというような提案ですが。視聴者の執務スペースっていうのは大空間なのですが、それが残業で大空間全部を空調するのではなく、どうしてもしょうがない残業のときに全体を空調するのではなくって、最近ノートパソコンが多いのでそういうノートパソコンを持っていって会議室でコンパクトにエネルギーを供給するなど、そういった取り組みも行っています。」



19環境親和計画4_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

4、先進技術の波及、普及に向けた取り組み

篠原「私たちは国際的な課題である安定したエネルギー確保と地球温暖化対策に向けて、CO2削減に取り組んでいます。その1つとして太陽光発電力、太陽光の発電を庁舎土日、使っていない電力を蓄電するのではなくて、水素に変換して貯めるとそういったグリーン水素燃料システムというのを取り組んでいます。小さな1歩ですが、これからのエネルギーの考え方にも踏み込んだ取り組みができたかと思っております。あとシームレスな話をさせていただいたのですが、こういったふうに脱炭素とBCPが、それぞれに機能していくような設備計画というふうに記憶しています。たとえば、太陽熱集熱装置であれば平常時は効率のよい空調運転。非常時はガスが途絶しても空調ができるような取り組みとかそういったことを行っています。」

21環境親和計画の評価_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

篠原「そういったいろんな取り組みを行ったのですが、ポイントとしては先程言ったように職員のウェルネス向上するためには働く環境をいかに作っていくか。これからご説明いただく岩井さんの照明の話ですとか、あと建築計画的に、リフレッシュ空間をきちんと儲けるとか、そういったことがCASBEE、ウェルネス性につながっていくのかなというふうに思っています。もう1つ、エネルギーについては必要なところに先程オンデマンドのお話をさせていただいたのですが、必要なところに必要なエネルギーをいかに計画的に導き入れるか。さらに自然のエネルギーを導けるか、そういったことを考えながら計画をしていっています。あと設計基準みたいなのがあるのですが、例えば空調冷房時だったら28度とか照明だったら700ルクスだったりとか。そういった基準っていうものにとらわれすぎずに、これからいろんな照明の話もしていただくのですが、適切な環境を提供するっていうことを見直しながら計画を行ってきました。」



宇部市市庁舎 照明デザインについて

23照明コンセプト_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

照明デザインのコンセプト

岩井「篠原さんから引き継いで、照明の話をさせていただきます。CASBEEのSランクってことで、それがきょうはテーマになっていますけれども。皆さん、専門家のかたいっぱい聞いてらっしゃると思いますけれども、実際には照明の関わるのはものすごく小さいわけです。なので、あまり偉そうには言えないんですけれども、この建物に関してはなにしろ佐藤総合さんの建築、設備さん含め非常に最初の取り組みからかなり真剣にやられていて、我々もそれの一端をお手伝いするというスタンスでこの仕事に関わっております。それで最初にコンセプトの段階ですけれども、非常に要約すると建築のコンセプトの一番主たるところは、まち・人・自然=宇部の環境と共生するかたちというキーワードが1番大きかったと思います。これの中で施設との考え方を、在り方を1番考えるとやっぱり市民ホールですから。市民が訪れる人と人との関わりというものを重視するということが重要じゃないかというふうにまず考えました。そういうふうに、なかで考えてみると、やはり今話題になっているウェルビーイングってことを意識した照明デザインと言うものを考えるということが必要なんじゃないかなというふうに思ったわけです。ウェルビーイングっていうのは皆さん大体知ってらっしゃるのであまり詳しくは言いませんが基本的にはその健康っていうことが病気とか弱っているっていうことではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも全てが満たされる状態ということを目指すということであるわけです。この内容を少し照明的に考察、我々がしたわけですけれども、この満たされている状態ということはどういうことなのかということを考えてみました。まず、その肉体的に満たされているということなのですけれども、照明で考えてみるとものが良く見えるとか、手元が明るいとか、あるいはまぶしさがない、いうようなことかなと。これはもう今まで我々仕事を始めてからも散々言われてきたことで一番ベーシックな部分である。で、それに対して次のこの精神的な部分です。これは空間の心地がよいとか明るく感じるとか、あるいは1日の移ろいに合っているとか、こういうような照明でいえば次のステップのことじゃないか。で、こういう肉体的な部分、それから精神的な部分が2つ合わさって初めて社会的な結果的に良好な人間関係を築ける。良好な人間関係っていうのは市庁舎ですから、市民のかたとやはり市のかた。あるいは市民同士、あるいは市のかた同士。そういうことを築いていくことじゃないかというふうに考えていました。」



24照明コンセプト_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

岩井「この精神的な空間が心地がよい明るく感じる1日の移ろい、こういうことがテーマになったわけですけれども、最初にブレインストーミングしていくなかで、我々がなんとなく佐藤総合さんに提案したことはあります。それをちょっと挙げてみると、1つにはやはり照度とかそういうのじゃなくて人の目線に立った見え方を重視した光環境。今で言うと明るさ感ですけれども、これを考えるべきだろうと。それから2番目に自然光の変化に呼応した光の移ろい。これはサーカディアンリズムにつながりますけれども、そういったものを取り入れていきたい。3番目にリフレッシュできる光の変化。例えば集中しすぎて少し疲れたときに雲が流れるような光の変化があって、それでリラックス。こういうようなことを最初にブレインストーミングのなかで言ったような覚えがあります。ただ、残念ながら最後の3番目はちょっと今回実現には至っておりませんけれども、今後のテーマとしてはありかなというふうに思っています。」



48タスク&アンビエント_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

1、人の目線に立った明るさ感を重視した照明のデザイン

岩井「明るさっていうことを非常に照明では1番重要なことなんですけれども、ちょっとここのプロジェクト、昔から我々は明るさについて2つの考え方を持っております。1つは書いたり読んだりするほどの明るさです。これは使う明かり、光って書いてあるんですけど、俗に言うタスクライトです。これは基本的に照度という数値でJISである程度方向性が決められています。ところが残念ながら最近はPCのモニターでの作業が多くなっているということで、この照度については、あまり多く必要ではなくなってきているという現実があります。ですから、今回の照明の中で、実は下向きのライン照明を使っていますが、これである程度の照度を実は取るんですけれども、それがあまり多く取る必要がなくなっていると。もう1つには壁や天井が明るく、空間が明るく見えると。これは見せる光と言ってますけれども、まあ、アンビエントライトです。これに関しては照度ではなくて、天井や壁がどのぐらい光っているかということが実は重要です。この、私たちは照明のデザインを始めた頃からもう40年になりますけど、その頃から照度じゃなくて輝度で設計しなきゃなりませんと言われてきたんですけど残念ながら、この輝度を検証する方法がなくてなかなか進まなかったんです。最近はシミュレーションができるようになってこういうものができる。それが考えてみればウェルビーイング空間の心地よさとか働く場所の環境である。そういうものにつながっていくんじゃないか。今回の場合は上向きの天井間接ライン照明がこの役目をしてます。よくよく考えてみればこの下向きのライン照明のタスクと上向きの天井のライン照明っていうのが合わさるということは、基本的にはタスク&アンビエントというその光の考え方になってます。」



25タスク&アンビエント_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

岩井「タスク&アンビエントっていうのは実は我々はいろんなとこでこの手法で照明をしていて、もちろんオフィスでもかなり古くからそういう1つの、これオフィスですけれども、天井のなかに天井をアップライトするものと下向きに光が出るものを入れて、こんなようなオフィスを作ってみたりとか。あるいはオフィスだけじゃなくて、これは国立新美術館ですけれども国立新美術館の天井は全て間接照明になっていて、これはアンビエントライトの役目をしています。現実的には、壁や床の照度も充分取れています。基本的にはアンビエントで企画展なんかをやるときはスポットライトが作品に当たって、それがタスクライトという考え。それからこれは前橋のほうの美術館でやった例ですけれども、商業施設ビルを改装したので天井が低かった。それを天井をなくして明るく見せるために天井アップライトをして明るさ感を取り入れて作品に対しては、今ここのアップライトをしているんですけども、ここにスポットライトが付いていて下向きに作品については照明しています。要は空間の用途は違いますけれども、基本はタスク&アンビエントの考え方っていうのは、非常に照明のデザインの中では重要な考え方です。」



26宇部市市庁舎の照明デザイン_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

岩井「それを今回話をいただいたときに、非常に空間として普通のオフィスと比べるとかなり豊かな天井の高さ、CH3200以上っていう。そういう豊かな空間を生かしていかない手はない、いうことで、ちょうど今、これで見ますと下から約2450の高さの部分に、2本照明器具を吊ってそこから情報に対しては先程の説明と見せるやつです。上向きのライン照明、これに関しては遠藤照明さんといろんな調光のできるシステムをここで採用しています。そして下向きについては、これはもうタスクライトでこれに関しては色温度を変えない4000ケルビンの固定の照明でしようという方針。基本的な方針はこういうかたちで進めております。」

27照度とシミュレーション_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

岩井「そうはいっても、やはり規定の照度を確保しなきゃいけないCASBEEのなんか今、照度の規定がやはりあります。基本的にはやはり最低限で明視の明るさ、明視の明るさっていうのは500ルクスですけれども、これを確保しなきゃまずいだろということで。基本的に500ルクスが得られる上下のバランスパワーを検討しました。これは水平面の照度なんですけれども、形状面で500ルクスが得られています。水平面の検討だけではなかなかこういうものは、やはり見た目がどうなるかっていうのをしなきゃいけないのでこの市庁舎に関しては、ほぼすべての空間でシミュレーションで検討を行いました。これは先程の執務室の空間なんですけれどもこれがイメージです。こちらが照度分布です。照度分布で見ていただいても床、机の面で500は充分出てるというのが分かります。このシミュレーションをやるとインテリアの反射率とかをちゃんと入れておけば輝度分布が、ですからここで輝度分布があるわけです。ところが、残念なことにこの輝度分布から我々は明るさ感を評価するっていうことがこの時点でできませんでした。本当でしたら、これを明るさ感評価に繋げたいということで後追いなんですけれども、そのあと我々はちょっと明るさ感評価を導入して後追いで明るさ感評価をしております。これがシミュレーション、これが明るさ感評価、ほとんどの天井や床、ほとんどの部分で緑の通常の明るさ、それから黄色が明るく見えるっていうところになりたいなと思います。こちらは昼間なんですけれども、この2つで1個問題はですね。この外、これは昼間ほとんどオフィスって昼間使うので明るいわけですけれども、シミュレーションだと外の明るさが再現できない。オフィスっていうのは基本的に昼間使うもんですから、今後はやはり昼間の表現ができなきゃいけないということで問題意識を持っております。今我々のほうでは、これはビジュアル・テクノロジー研究所の中村先生のほうとその辺の評価ができるように今、ディスカッションを進めていて。これは今普通の夜のシミュレーションですけれども、これ、こういうふうに昼間の光の影響も加味したシミュレーションができるようにしています。昼間の光が入ってくると少し明るさ感も室内側は下がったりして見えますから、そういうこともちゃんと評価できるようにしたいというふうに思っています。」

28シミュレーションと実際_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

岩井「こういう3Dのシミュレーションをやると、いいことはやはり平面図で見ているとここに照明器具がないから、暗く見えるんじゃないかなっていうようなことを全部検証していくことができる。これはちょうどきょうの告知の写真にも使われたカウンター部分なんですけれども、ここは実は照明はここに1本入っているだけなんです。で、このカウンターの上に入っている照明でこのサインを照らし、なおかつテーブルを照らし、これだけで通路大丈夫かなっていう懸念があったんですけれども照度分布、それから輝度分布をやってみると、ほぼ大丈夫であろうという結論になって今回に至っています。これも後追いで輝度分布、明るさ感評価をすると、やはりこう見たときに奥の執務室が明るいのと、この光で壁の方にも明るい要素ができるということで、たぶんこういうことを計画時にやっていれば大丈夫だろうということに達したんだろうなというふうに思います。最終的には、こういうふうに充分問題もなく機能しております。」



29サーカディアンリズム_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

2、自然の光の一日の変化に呼応した光の変化

岩井「そしてもう1個重要な要素として2番目のサーカディアンリズムです。やはり1日の変化というものを太陽光の変化っていうのは人の生活に密接に関わってる。これは遠藤さんの光のページを拝借しましたけども自然光というのは色温度。朝は色温度低いところから色温度高いところ、昼前に上がっていってまた下がると。照度ももちろんこれにいってるわけですけど、オフィスの照明っていうのはずっと同じものになっちゃう。こういうことでいいんだろうかという問題があります。私たちは実は照明デザインの中では、実はこれ1996年に建てた豊田市の美術館なんですけれども、僕は天井からも壁からも要するに外光が入ってくる。大きなすりガラスが入っている空間で、この空間で色温度が変わらないのはまずいっていうことで。実はこの当時、昔入ってきたルートの調光機や初めて入った、これで色温度の違う2本の蛍光灯を2時間ぐらいの長い調光をかけて色温度を昼間から夕方の間にかけて変えていくことをやりました。」

30調光調色設定_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

岩井「ですから、こういうことがオフィスでも当然応用できるだろうということで、今回のになってるわけなんですけれども。これは最終的にこのオフィスで佐藤総合さんの環境のかたと、それから施主さん、それから現場のサンテックスさん、あと遠藤照明さんもこういう色温度に対していろんな研究結果をお持ちですので、そういうとこで総合的に決めた色温度です。始業前は少し色温度が低いんですけれども、始業時になっていくとだんだん活動的になるように色温度を上げていく。ちょっとこの場合は少しショッキングに一旦昼間前に上げるんですけれども、で、その後に少しまた色を下げていって、昼休みはくつろぎの時間。そして、また色温度を午後モードで上げていく。で、だんだん夜になるに従ってまた色温度を下げていって。残業っていうのはないほうがいいですが。こういったことを計画していったわけです。実際に撮った写真を少しちょっと動くようにしてみました。こんなふうに変わるわけです。ていうようなことでこういうのがオフィスで働く人たちの体調だとか、あるいは訪れる人にとってもこういうものがあることによって何かいいことがあるんじゃないか、というふうに期待をしているわけです。」



31輝度設計_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

昼光を考慮した照明コントロール

岩井「あとは昼光ということが非常にCASBEEとかの中では昼光利用の影響があると思うんです。これは昼光を検知して調光をかけるということ、これは私というよりも設備系の皆さんにも一生懸命やっていただいて。これは佐藤総合さんのほうでやられた昼光のシミュレーションです。これをもとに今、こちら側が窓で奥が室内側なんですけど、これでこういうふうにいくつかシミュレーションしていくと、今赤い線と青い線が点線がある部分、この辺が境目になりそうということで、この部分に手前のほうの3台と奥のほうの7台をコントロールするためのセンサーを別々に配置して、その明るさをコントロールできるというようなやり方をしております。こんなふうに、非常に見た目はすごいスッキリとした空間ですけれども、細かい照度のコントロールですとか、そういうもの、明るさ感や省エネを達成していくことをしております。」



32リフレッシュできる光の変化_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

3、リフレッシュできる光の変化

岩井「最後になりますけれども、次世代の照明デザインということを考えるとやはり最後のさっきの3つの中の最後のリフレッシュできる光の変化です。これを実現することが必要じゃないか、雲が流れるとか、こもれびとか、ゆらぎとかです。これを実現していくためには、様々な研究とのコラボレーションが必要だったり、あるいは人の生理や心理を読み解いてベストなものを出してくれるような、何かAIの技術みたいなものを導入するというようなことが必要なんじゃないかな、というふうに思っております。すみません、ちょっと長くなっちゃいましたけど、これで照明のほうのお話を終わります。」



篠原様、岩井様ありがとうございます。近藤さん、質問ありますか。



46パネリスト_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「やっぱりタスクアンビエントのような明るさを使って設計される中で一番難しいのが、それをお客さんに対して明るさの説明、ちゃんと明るいですよと説得していくのが一番難しいのかなって思うんですけれども。そういったことをどうやって進められたかっていうのをお聞きしたいです。」


篠原「そもそもさっき宇部市の背景をご説明したんですが、宇部市自体が公害を乗り越えていくいかに環境改善していくかという取り組みに対して理解のある自治体なので、もう当社のプロポーザルの提案のときから我々提案したものに対してすごく市のほうも取り組んでいただけるようなご理解をいただいてます。さらに産官学、要は山口大学が宇部市にありまして、工学部が。山口大学の先生達と宇部市と我々で環境共創というワーキンググループを作って、月に1回ですかね。まず全体の環境計画から、それぞれの細部の環境計画まで共有しながら、コンセンサスを得ながらやってきましたので。そういったタスクアンビエントに限らず、環境全体の取り組みに対してすごく視野、大学の先生が理解いただいてうまく進められたかなと思います。もう1点、さらにいわば既存庁舎を調査していただいたんです、山口大学の桑原先生に。それで既存庁舎がどのぐらいの 明るさだから、今回はこのぐらいの明るさですよというのをすごくきちんと説明プロセスを得たっていうのがいい流れができたのかなというふうに思っています。」


岩井「私がプロジェクトに入ったときに、やはり他にない天井の高さ。普通にオフィスって効率のことを考えると天井低く作ったほうがいいって思うけど、今回の場合はそうじゃないじゃないですか。そこがすごく興味があったんです、プロセスとして。」


篠原「それも先程の環境共創の1つの流れで、まず全体の環境計画のご説明を共有したのも計画の大きな方針をみんなで共有して、じゃ、この環境計画を実現するためにどういったファサードデザインだったり、断面計画だったり、平面計画だったりがよいのかっていうのをその都度月1回程度皆でディスカッションしながら進めていって。その結果が今の天井高をできるだけ高く、窓側周りにははりを出さずに自然光を取り入れるにはどうしたらいいかとか、南側の日射を遮って光を取り込むにはどうしたらいいかとか。その結果が水平ルーバーで反射させてやるとか、あと天井に空調を設けないで床下から空調設けることでいっぱい取れるとか。そういった全体の計画の中で皆でコンセンサスを得て取り組んでいったかなというふうに思ってます。」


岩井「さっきも言ったみたいに、あの当時明るさの評価は我々の中でできなかったんです。それが1つのあのときの反省でもあり、でも、明るさ感評価っていかに必要かなっていうことがそのときに分かったっていうことです。1番はそこがポイントだと思います。」


事務局「今井さんちょっと補足なんですけれども今、照度、輝度、明るさ感っていう3つのワードが出てきてると思うんですが。輝度ってやっぱ人の目に近いのかなっていうふうに理解をしてるんだけど、それだとまだまだ足りなくって、明るさ感っていうほうがいいよっていうことをおっしゃってる、でいうことであってますか。」


岩井「そうですね、輝度っていうのは、輝度って数値じゃないですか、ただ単に。ここがこのぐらいの数値で光ってますっていうことで。それに対して明るさ感ってのは人の感覚がそこに入るわけだから。それはもちろん黒田さんが仰った通りです。だから、明るさ感と評価は別のところにないとダメ。明るさ感って簡単に計算、今はまだできない。それがもっと照度のように簡単に計算ができるようになって、その評価も非常に精度が高くなってくると、すごく一般のかたでも使えるようになると思います。」


事務局「あと私から篠原さんのほうに質問なんですけれども。ZEBって、取ったら終わりじゃなくてずっと改善というか続けていかないといけないと思うんですけれど、1年強実際どうなのかみたいなことをお話しいただけたらいいなと思うんですけどいかがですか。」


篠原「きょうは時間の限りご関係でご説明できなかったのですが、できている。まず我々設計が終わりましたと。それで終わりではなくて、現場の工事段階に入っても、施工者のやっぱりいろんな知識を持ち寄って、さらにバージョンアップしていこうっていうZEB検討委員会を現場のほうでも作って、設計の段階ではウェブプログラムという省エネ計算を使っているんですけど。現場段階では、施工者さんのいろんな力をお借りしてベストプログラムというので、ウェブプログラムでは評価できないようなエネルギーをさらに細かく検証していったというところです。それで我々はゼブオリエンテッドっていう標準が100パーセントだとしたら60パーセント未満に抑える認証をいただいてるんですけど。実際にはBEI値57パーなんですけれども、現場段階ではもう40何パー、要はベストプログラムではZEB Readyの数値までいってるといったところにある。さらに施工者のアイディアをもとにそこまでいくっていうのプラス、さらにできて1年間。 BEMSという中央監視装置そういうのがあって、要はいろんなポイントを測定できてデータ化できるんですけれども、そのデータをもとに検証していこうというのを検討委員会で引き続きやっていると。で、それで1年間数値を見たんですが、さらに現場段階から数値が下がって、今は60、30何パー、ごめんなさい、すぐパッと出てこないんですけども、38パーとか。今は100パーに対して38とかそんな数値のエネルギーで運用できているというような状況です。これを引き続きまた来年もやっていく予定になっております。」



照明におけるZEBとウェルネスの両立について

光環境の研究をしています遠藤照明の近藤のほうから、ZEBとウェルネスの両立について、照明としてどうお役に立てるのかご説明したいと思います。

33ZEBの考え方_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

ZEBの考え方について

近藤「ZEBなんですけど、ZEBの建物というと一般的にはBEI値が0.5以下の建物のことを指します。BEI値なんですけどもどういったものかといいますと、今、建物の用途や大きさごとにこちらにあります基準の一次エネルギー消費量という基準になるもの消費量がありまして。それから設計する対象の建物がどれぐらいエネルギーを消費して使うのかということで、どれぐらい基準から削減できているかというものを数値化したのがBEIというものになります。それが0.5なので約半分減っているものが基本的にはZEB、建物になりまして先程、黒田が冒頭から説明がありましたZEB Readyに対応するものになります。BEIが建物全体ですので、対象になる設備なんですけれども、こちらにある空調でしたり換気、あと照明、給湯、昇降機というものが該当してきます。今回は照明のBEIなんですけれども、それがBEIの計算が少し違って異なっておりまして。照明のBEIも、同じくこちらのように基準のエネルギー量というものがあるんですけれども。それに対象の建物の消費量としましては選んだ照明器具、で、あと、照明の台数からエネルギー量が出てくるんですけれども。照明はやはり制御というものがありますので制御が何を使うかによって、1以下の係数というものがかけられてBEI値というものが出てくるような仕組みになっています。なので、制御をかければかけるほどBEI値がふさがるような仕組みになっています。で、やはりこの照明BEI値というものをなるべく避けたほうがZEBに近づくんですけれども。まず1つ考えられるのがこの照明の選定する際に、なるべく高効率の器具を使って照明のエネルギーを削減していこうという考え方があるんですけれども。」

34ZEBの考え方_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「この場合は照明の高効率の器具を使えば使うほど、照明は器具自体がより強い光を発しますので照明自体の輝度が高くなりますので、やはり眩しさ感が強くなってしまうっていうことがあります。高効率の照明器具というものは基本的には調色機能が付いてないものがありますが、ほとんどですので調節はしますけど健康的にはサポートができないということがあります。なので、高効率の器具を使うっていうのだけでは快適な主環境とはいえないですし、あとあまりBEIの効果的な削減にはならないことが挙げられます。」

35ZEBの考え方_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「なので、なるべく快適な主環境を保ちながらBEIを効果的に下げることを考えると、こちら赤で囲っている照明制御を考えていく必要があります。」



36ウェルネスの考え方_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

ウェルネスの考え方

近藤「ウェルネスで一番広く知れ渡っているのがWELL認証というものがあります。WELL認証も評価項目として10項目あるんですけれども、その中の1つに光というものがあります。この光の中に光ですので、自然光と人工光を両方評価する加点項目がありまして。人工光に対する評価としましては、赤で塗っているところが人工光に対する評価の部分になります。」

37ウェルネスの考え方_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「この評価の項目はまとめますと、主にこの3つに分けられます。1つは光の質です。サーカディアン照明、演色性。2つ目が配光・器具形状によるグレアを設計しているかということになります。次に制御がありまして、どれだけグループを細かく分けているかとか、他あと、照明を調光とかしまして隣り合う部屋の輝度が10分の1以下にならないようにするとかというものがあります。で、これはクリアしていくと加点されていくというのがWELL認証の考えになっています。」



38無線調光調色制御_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

1、無線調光調色制御

近藤「先程のZEBの考え方とウェルネスの考え方を両立する1つの回答としましては、無線の調光調色制御を取り入れるっていうことがあります。まず、なぜ調光調色なのか、ていうことなんですけども。先程岩井さんからもありましたけれども、調光調色を取り入れることで生態リズムが整えられます。体内リズムが整えられますと睡眠が導入がしやすいというものがあるんですけれども、睡眠が導入がしやすいことにより健康的になるというものがあります。これの目安としましては、睡眠を促すためにはメラトニンというホルモンがより生成されますと睡眠が導入されやすいんですけど、それが照明計画に大きく関わっているということがあります。」

39無線調光調色制御_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「実験結果としましては、このメラトニンの分泌を促すためには日中に高照度高温色の光を浴びて夜間は低照度低温度の光を浴びる。メラトニンの分泌が増えるというエビデンスがありますので、このことから調光調色制御がエビデンスを考えると、やはり必要ということがあります。」

40無線調光調色制御_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「次に、先程のZEBでしたり、WELL認証っていうものに当てはめますと。まずZEBですと、この無線の調光調色制御を使うことによって、センサーも必要になってきますけれども、明るさ検知したり、タイムスケジュールっていうものに該当しますので係数としては高いものがかけられてBEI値が減っていくということになります。次にWELL認証としましては等価メラノピック照度の確保でしたり無線調光できますので、点滅区分がより細かく分けることができますので、よりWELL認証の加点項目としては、加点を取りやすい項目になっております。
この無線調光調色の問題点としましては、挙げられたものとしては無線調光調色機能の対応照明器具っていうものがやはり非対応の器具と比べますとワット数が若干上がるっていうことがあります。この調光システムを追加することによって、コストが上がるっていうのが1番問題なのかなと思っています。」



41輝度設計_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

2、輝度設計

近藤「なので、これを解決するためにもう1つの追加の解決案としましては、先程これは岩井さんが言いましたけども輝度設計というものがあります。こちらも今までずっと輝度設計という言葉はあったんですけれども、なかなか設計に使いづらいというか基準がなかったのでなかなか使いづらいものだったんですけれども。これが今年になってJISのほうが改定されまして、新たに輝度の基準というものが設けられました。こちら、JIS Z 9125というものになります。(赤枠)」

42輝度設計_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「これを詳しく説明しますと、JIS Z 9125のほうで新たに付け加えられたのがこの壁面の推奨輝度と天井面の推奨輝度というものになります。で、この壁面と天井面の推奨輝度を確保していれば空間が明るさを確保したこと、空間が明るいっていうことが確保できますので。その分、手元の明るさを少し和らげてもいいよっていうものがJISで規定されました。事務室ですと一般的には750ルクスなんですけれども、この輝度のほうを天井、壁の輝度をちゃんととっていれば500ルクスにしていいよというものになります。なので、設計の照度を下げることができますので簡単な計算だと33パーセント省エネになりますしその分照明等具も、器具数も減りますので、その分コスト減になります。そのコスト減のほうで無線の調光調色のコストを見いだすことができるのかなと考えています。」

43輝度設計_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

近藤「次にこの推奨輝度なんですけど、どれぐらいのものかといいますと、こちら簡単に一般的な事務室と考えまして反射率のほうを少し暗めの設定にした事務室で750ルクスになるように配当したものですと、低い反射率なんですけれども計算結果としましては推奨輝度を超える結果となっています。あとは、こちらのほう、下の500ルクスに下げた場合ですと少し天井のほうが輝度が推奨が足りないので先程の緩和の条件を使えないという結果になってしまっています。ただこちらシミュレーションが反射が低い場合なんです。なので、こちらのほうをオフィスは基本的には一般的には白い壁でしたり白い天井がほとんどかなと思いますので、こちらを計算し直しますと同じ先程の通り500ルクスの配灯でやってみますと結果としましては推奨輝度を大きく超える結果になって壁の熱75カンデラ以上でしたり、天井面だったら30カンデラ以上になっているという結果になっています。で、この結果から言えることとしましては、内装の反射率が、標準以上の反射率を持っている場合でしたらJISの推奨輝度を確保している可能性が非常に高いということがあります。なので、多くの場合で照度基準を1段階下げるっていうことが可能になりますので、この新しいJISの基準によって省エネでしたり、コストダウンが期待できるのかなと考えております。」



44輝度による照明制御_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

輝度による照明制御

近藤「あと他に輝度を考慮することによるメリットとしましては輝度による照明制御ができるということが挙げられます。先程の宇部市庁舎、タスクアンビエントを例にあげて示しますと、従来タスクアンビエント、アンビエント照明の制御っていうのが普通だと750ルクスという照度があるんですけど空間の明るさになりますので、空間の明るさをどの数値を用いて制御すればいいのかっていうのがなかなか決めづらかったですけど、これが20カンデラっていうのができましたので。たとえば上の場合ですと、天井面が20カンデラになるようになればいいので。たとえば上の場合ですと、天井面が白っぽい色になってます、大体反射率が0.8と考えますと。天井面の照度が80ルクスになるように光が入ってくれば、天井面が20カンデラになりますので、それになるように照度を設定する際に、このあと形状面に照度計置きながら設定するんですけども。天井面に照度をつけながら80ルクスになるように設定することによって、より調光と自然光とアンビエント照明を組み合わせて省エネになる制御をすることができるようになります。」



45昼光利用の設計と評価_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

昼光利用の設計・評価

近藤「あともう1つ輝度を使うことのメリットとしましては輝度を使うことで昼光利用の設計でしたり評価っていうのがよりやりやすくなるということが挙げられています。今ですと昼光をなるべく取り入れようとして昼光率の評価を使うことがほとんど、多いかなと思うんですけども。昼光率ですとより光を多く取り入れる、明るくなるというようなイメージかなと思うんですけども。実際は先程の岩井さんの話にあった通りに輝度対比というものがあって窓面が明るければ明るいほど空間が暗くなってしまうというものがありますので。実際は光を多く取り入れるイコール明るい空間ではないというものがあります。なので、昼光を設計する上でも輝度による評価は必要になってきます。左の絵のように人工光と昼光の両方同時にシミュレーションっていうのが可能になっています。これをすることによって輝度分析でしたり、あと先程の輝度対比を考慮することによって照明だけではなくて窓や遮蔽物とのルーバー等の形状等の最適化をすることができる。そういったのが今後の目標かなと思っております。あとは昼光を取り入れる際に光を多く取り入れなくても、明るくすることができれば、その分空調負荷も減りますので、建築全体の照明省エネにもつながるのかなと考えております。

近藤「まとめますとZEBとウェルネスを実現するポイントとしましては、まず1つ目としては無線調光調色制御を取り入れるということと、あとは輝度設計を取り入れるということが挙げられます。それを設計の上で実現する上で重要なこととしましてはコストが固まる。基本設計内での検討を開始していくというのがすごい重要なのかなと感じております。以上です。ありがとうございました。」



近藤さんありがとうございました。まだまだ上のほうの照明も改善の余地がありそうだなと聞いてて思いましたが、いかがでしょうか。



46パネリスト_ZEBとウェルネスの両立/宇部市市庁舎

岩井「今の話でJISの基準が壁面や天井の輝度によって下げられるっていうのが非常に朗報ではあります。我々は昔からそういうふうにできるだけ下げたほうがいいって言ってきたんですけど。ただやっぱり現状でまだCASBEEとかの基準は照度が上がってないとランクファイブが取れないっていう、ちょっとまだ若干矛盾点もあるからそういうものがもっとCASBEEとか、そういうところまで派生してくれるともっといいかなと思いました。」


近藤「仰るようにやっと輝度がJISのほうで設定されましたので、これからいろんなところに輝度っていうものが普及していくのかなと思っています。」


篠原「僕の勉強不足のだけなのかもしれないんですけど、僕は割と設計のときに照度っていうだけしか知識が少なかったので照度で岩井さんとかと話してたんですけど。今そういう輝度とか明るさ感、もう1つ、明るさ感の認識はしてたんです。ただ言われるように感覚なんで数字的には照度っていうのが1つの基準になるのかなっていう今まで思ったんですけど、やっぱ話聞いててちょっと明るさ感っていうのも少しこれから数値化されたりとか輝度とかそういったかたちで別の尺度っていうかもっと総合的に明かり、光環境っていうのが捉えられてすごくいいなっていうのは思いました。設計のときにとりあえずうちの設備担当から「できるだけ白い天井、壁にしてくれ」ってひたすら言われてたんで。」


岩井「あれですよね。佐藤総合さんの設備さんが偉いなと思うのは照度を上げてくれとは言わなかった。500という目標でいいと。500だとSランク、ランクファイブいかないんだけど、それはそこだけ突出してもたぶんダメだと判断があったのか500でいいっていう判断でした。そのかわり、ちゃんと室内のそういう色彩をちゃんとコントロールしようとしてるってのは非常に賢明だと思いました、私は。」


篠原「カラースキームのときからチェックを受けてました、設備の担当から。」


岩井「佐藤総合さんの設備は厳しい、すごく厳しいし非常にバランスよくいろんなことを見るので、いつも信頼はしてますけど。ですから、そういういろんな人の知見がうまく合わさってどこが突出してもいけなくて、バランスよくやるっていうことがやっぱり必要なんでしょう。」


篠原「そうですね。」



事務局「楽しくなりそうだっていう反面と、まだ難しいなって、私には理解が至ってないなと。考えていくことがたくさんあって、逆にワクワクしていくようなふうに自分は早くなりたいなとちょっと聞いてて思ったんですけど。」


岩井「どんどんいろんなことが難しくなるもんね。明るさ感だってさ、難しいんだよ。どこまでやればいいんですかって感じの。それで太陽光との関係なんか特に窓から太陽の光が入ってくると、その隣の壁は暗く見えるっていうのは大体みんな知ってることだし、じゃあそういうのってどうやって評価するのって、これも大変難しくなるだろうし。
だから近藤さんみたいなメーカー側にもそういう評価をちゃんとサジェスチョンできる人がいれば、そういう相談に乗れるわけです。最終的にシミュレーションできても評価ができないとどうしようもないから。だから我々はさっきのビジュアルテクノロジー研究所とか、そういうところでいろんな評価についてやっぱり相談をしたり知見を聞いてるわけです。そういう協力がないとできないよね、これからはね。」


篠原「その、照明に限らず、今、照明も照度以外の見方が出てきているという話があるんですけど。同じように空調の温度だけじゃなくて、そういう湿度の捉え方とか快適性とか。空調の専門じゃないので勝手に言いますけど、やっぱりいろんな尺度とかっていうのがあると思うんです。そういうものをそれぞれ多角的に捉えて、でもやっぱ難しいんですけど、最終的にはやっぱり感覚っていうのもすごく重要。自分の経験に基づく感覚っていうのもすごく重要かなって考えてます、やっぱ。」


近藤「本当、おっしゃる通りで岩井さんもガイドのほうであった数値ではなくて感覚っていうのはすごい大事になってくると思いますし。明るさ感っていうのはすべて物理的な量を感覚に近づけるような計算性もできてはいるんですけど、すごい確かにややこしいのでそれをちゃんともうちょっと分かりやすくしたいと思っていますし。あと設計で1番大事なのが数値じゃなくて自分の感覚、目で見た明るさっていうのを信じながらやっていくことが非常に大事なのかなと思ってます。」


岩井「研究結果っていろんなものがあるし、遠藤照明さんでも出してる光の中の、メラノピック照度、あれなんかにしても、あれって我々の感覚からいうと、かなり高い照度のほうが有効だっていう言い方になってるじゃないですか。それってたぶん、でも、多くの照明デザイナーからしてみると、あんまり高い照度にしたら大変なことになって、たぶん言うし。たぶん、そういうところの研究者と我々の感覚を重視するような人達がある程度ディスカッションしていかなければダメだと思うんです。たぶん、建築の空調だとか、そういうこともたぶん同じだと思う。」


篠原「そうです。」



最後に、省エネに優れたデザインというのを今回のお題として投げさせていただいたんですが「デザインが省エネに関係あるイメージが湧かない」という、(視聴者からの)事前質問がありました。その辺もう少し補足いただきながら、ZEBとウェルネスの両立を目指して、今後さらに取り組んでいきたいと思われることを教えてください。



篠原「デザインと形の、エネルギー、省エネ、快適性についてなんですけどちょっとデザインをすごくちょっと違う捉え方をされているのかなと。僕はさっき話したように窓を東西に壁を設けるだけでも、それもデザインだと思うんです。要はつくる行為だと思うんです。南に窓を設けて天井いっぱい窓を設けるのもデザインだと思いますし。光を遮蔽しながら反射させるっていうのもデザインだと思うんです。そういう一歩一歩考えて、自分なりにかたちを作っていくっていうのがデザインかなというふうに僕は捉えてまして。今後その、さっきの輝度だったり明るさ感だったりっていう話の中でもあると思うんですけど、要は500ルクスとかそういう単純な基準に捉われないでもっと多角的に自分の感覚も、今いろんなものをより多く見るっていうのがすごく大事なのかなと思うんですが、自分の経験値を増やしてそういう基準をもう1回見つめ直す。温度が28度、絶対に28度なのかって、今のこの暑い世の中ちょっと違うのかなとか。ただ全部が26度にすればいいかっていうとまた違って、たとえば入り口近く外帰って来た人だけが涼しいところを作ってあげるとか。そういういろんなケースとか、人とか、いろんなものを見たりとかして、自分の基準をもう1回見直しながら自分なりの感覚をより経験値を増やしてこれから設計に取り組んでいきたいのかなというふうに思っています。」


岩井「私もデザインというものが、必ずしもエネルギーを浪費したり華美にいろんなものを作ったりっていうものではないと思ってる、っていうかそうしてはいけないし。我々の仕事っていうのは要求されるものに対してフィットするものを作っていくと。たとえばうちはちょっと美術館が割と多いからあれなんですけど、たとえば家に100ルクスしか当てなくていいのにこんなでかいスポットいるかっていう話だよね。要するに100ルクスしか与えることがないんだったらこんな小っちゃいスポットだってオーケーですよね。そういうものをいかにその状況に合わせてコンサルしていくかっていうのが我々の仕事なんじゃないか。本当に一般的なセオリーだとこういうものが要りますではなくて、あなたに合わせるとこういうものでいいんですっていう、そういうことがいかにできるかどうかが我々の使命じゃないかなというふうに思ってます。」


近藤「やっぱり篠原さんが話されていた、ZEB検討委員会みたいなのをやられてた。やっぱりいい建築作る中で設計者だけじゃなくて施工者でしたり、あとお客さんも含めて全員で取り組んでいくことが非常に重要だと思いました。改めて再認識できましたので、その中に照明メーカーとして含めていけるように頑張っていきたいなと。」


冒頭申し上げた通り、模索はまだまだほんとに尽きないと思います。遠藤照明も人と地球に優しい光環境っていうのをスローガンに掲げてまして、先程近藤も申した通り、またあしたから頑張って精進して参りたいと思います。ありがとうございました。



当日ご案内いたしました次世代調光調色『Synca』に関する情報は、以下よりご確認いただけます。

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