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間接照明を設計するメリットは? 設計時・施工時に気を付けるポイントを大公開!

2022.7.21
間接照明を設計するメリットは? 設計時・施工時に気を付けるポイントを大公開!

眩しさを抑えながら、空間にきめ細かく柔らかい明るさをもたらす間接照明。人の目を楽しませつつ空間を効果的に演出するにはどのような工夫が必要なのだろうか。今回は、間接照明とは何かといった基本的な説明から、間接照明を設置する際に気を付けるポイントも紹介する。

間接照明とは

まず最初に、間接照明とはそもそも何なのだろうか。

間接照明とは、壁や床、天井などに光を照射し、あたかも被照射面が発光しているかのように空間を演出する照明のこと。

光源が直接目に入らない設計となるため、眩しさを抑えることができ、被照射面のテクスチャーや素材感を際立たせたり、空間に奥行きや柔らかいニュアンスを加えたりすることもできる。

間接照明のメリット・デメリット

次に、間接照明のメリットとデメリットをそれぞれ紹介する。

間接照明のメリット

間接照明の建築の一例

眩しさを抑えて明るさを得られる

光源が直接人の目に入ってしまうと、それが眩しさの原因となってしまうことも。光源と器具を隠して光だけを抽出する間接照明を導入することで、眩しさを抑えつつ空間を明るい印象にすることができる。

柔らかいニュアンスが得られる

間接照明のような陰影のコントラストが抑えられた空間では、ふんわりと角のない空間が演出できる。光に包まれるような魅力的な空間が実現可能である。

素材の質感を見せられる

間接照明は、光を被照射面に反射させる性質上、被照射面のテクスチャーや素材感を際立たせられる。特に、左官仕上げや塗装仕上げなどの有機的な凹凸がある素材との相性は抜群。美しい陰影が演出できる。

目を惹くデザインで距離感・誘導ができる

移動先の壁や床などが明るく照らされていることで、奥行きが生まれ、そこを通る人の気持ちを誘導できることも間接照明の魅力の一つ。光のストーリーを適切に組み立てれば、空間全体のデザインを最大限に引き立てることもできるはず。

間接照明のデメリット

照明の明るさの予測(照度計算)が難しい

しばしば、間接照明だけで空間の明るさを確保したいというお問い合わせを頂戴する。しかし、間接照明は飛翔斜面の素材や設置条件が大きく影響することもあり、単純な照明計算は難しい手法である。最近では3次元照明シミュレーションソフトでの検証も可能となったため、モックアップとの併用をおすすめする。

最新の3次元シミュレーションソフトはこちら

間接照明の光源が見えてしまうこともある

間接照明が窓に反射している
間接照明の光源が、反対側の窓ガラスに反射して見えてしまっている。思わぬ場所から光源が見えることもあるため注意が必要だ。

光源からの強い光が直接目に入ってしまうと、眩しいだけでなく、空間の雰囲気まで損なわれてしまう。遮光板や造作などでカバーし、どの角度からでも光源が直接見えないようにする必要がある。

メンテナンスが煩雑になる可能性もある

設計時に気を付けたいポイント
造作がメンテナンスを妨げる場合は、遮光板を後付けして取り外し可能にするという手段も検討しよう。

光の設計がうまくできても、器具を工具で取り付けられない位置に間接照明を計画してしまっては意味がない。工具や手が入る開口部を確保したり、遮光板を後付けしたりするなどして、後々のメンテナンスで困らないようにしよう。

間接照明の設計で特に気を付けるべきポイント

間接照明で空間をより美しく見せるため、設計時に特に気を付けたいポイントを紹介する。

ポイント1:被照射面の素材・ツヤ・色を把握する

設計を始める前に、被照射面の素材・ツヤの有無・色を確認し、光を当てて美しく見えるか見極める。

素材を把握する

継ぎ目が目立ってしまう壁の例
仕上げがクロスやシート貼りの場合、継ぎ目が目立ってしまうこともある。同時に、下地のゆがみや不陸(ふろく)も浮かび上がるので注意が必要だ。
塗壁は刷毛目に自然な陰影が生まれ、素材感が引き立つ。
塗壁は刷毛目に自然な陰影が生まれ、素材感が引き立つ。

平坦なシート貼りやパネル・クロス貼り仕上げは、継ぎ目部分に影ができて悪目立ちしてしまう。継ぎ目が光を受けないよう、継ぎ目に対して光が垂直に当たるよう調整すると良い。一方、塗り壁やカーテンなどの素材は、素材の凹凸で自然な陰影が表れて美しく見える。また、色の暗い素材は光を吸収する。素材の反射率を考慮し、採用する器具のパワーを決定しよう。

ツヤの有無を把握する

被照射面にツヤがあり、光源が映り込んでしまう例
被照射面にツヤがある場合は、隠したはずの光源が映り込んでしまう。
被照射面がマット仕上げの場合、映り込みはなく、美しい光のみが感じられる。

間接照明の被照射面にツヤがあると、思いがけない場所から光源や器具が反射して見えてしまう可能性もある。被照射面は完全にツヤなしの素材にし、光源を仕込むボックス内も必ずツヤなし仕上げにすると良い。なお、どうしても被照射面がツヤありの素材になってしまう場合は、カットオフをボックス内に設定し、反射光を被照射面に当てるというアイデアもある(後述)。

ボックス内の色を指定する

照明器具を納めるボックス内の色も、光の色や雰囲気を左右するため配慮が必要だ。明るさを確保したいときは白色、明るさを抑えたい場合やボックス内の反射面が目立つ場合はグレーや黒色、空間に統一感や特別感を持たせたい場合は壁面や天井と同じ素材を使用すると良い。ただし、明るさが不足する可能性もあるので、素材の反射具合をモックアップで見るなど、事前に器具と素材の相性を確かめておきたい。

ポイント2:間接照明のカットオフラインを調整する

カットオフラインとは、間接照明の遮光部分による光と影の境界線のことで、設計時の検討が特に難しいと感じる方も多いようだ。以下のポイントを押さえて洗練された間接照明を実現しよう。

カットオフラインの定義

カットオフラインの定義

カットオフラインは、間接照明の光源からの光が直接当たる部分と当たらない部分の境界線のことを指す。光源ごとのカットオフポイントと、遮光板の角を結んだ延長線上にある壁や天井との接点が、カットオフラインの生じる位置だ。

カットオフラインの始点の決め方

カットオフラインの始点

カットオフラインの始点となるカットオフポイントは、器具によって場所が異なる。しっかりと器具の仕様を確認しよう。また、カットオフラインは遮光板から遠い方のカットオフポイントが始点となることも注意が必要だ。

カットオフのとり方

カットオフラインは、光源の位置やボックスの深さ、遮光板の高さなどで位置をコントロールする。ボックス内でカットオフをとる場合は、人がカットオフラインを視認できないよう、ボックスの角でとると良い。また、ボックス内の反射面で反射させた柔らかい光を被照射面に当てるため、被照射面がツヤありの素材でもこのとり方は有効である。

カットオフをボックス内でとる例
ボックス内でカットオフをとることで、被照射面を間接光のみで照らすことができる。

ボックスが作れず空間でカットオフをとる場合でも、なるべく影を感じさせない光のグラデーションを得たいため、カットオフは部屋の隅などの1点でとるのが原則。また、点でカットオフをとりにくい間口の広い空間では、被照射面に対するカットオフラインを15°以下で入れると、影の印象が薄くなり効果的である。

カットオフを空間で取る例
空間でカットオフをとる場合は、被照射面に対するカットオフラインを15°以下で入れると、影を感じさせない光のグラデーションが得られる。

ポイント3:適切な器具の長さを決める

間接照明で使用する器具の長さと実際の壁の長さは必ずしも一致しない。適切な長さの器具を使用することで美しい間接照明を実現しよう。

器具は連続配置が基本

ダークスポットが生じてしまう例
照明器具間に空きをとってしまうと、器具と器具の間に暗がり(ダークスポット)が生じてしまう。

器具の間に空きをとってしまうと暗がりが生じてしまい、連続的で美しい光にはなりにくい。照明器具は基本的に間を空けず連続配置にし、明るさが多少落ちても目につきにくい端部に空きをまとめよう。ただし、端部に空きを作りすぎると暗がりが目立ってしまうため、壁と器具の距離は100mm程度に調整すると良い。

長さを組み合わせる

ラインタイプの照明器具では、複数の長さのモジュールが発売されている。壁面の長さに最適な長さを組み合わせて計画しよう。例えば、遠藤照明では1,500mmから100mmまで様々なラインナップが用意されている。

間接照明のバリエーションと施工のコツをチェック!

ポイント4:施工・メンテナンスを考慮する

出来上がった設計が、本当に施工可能な納まりになっているかを確認しよう。同時に、後々のメンテナンスが容易かどうかもチェックする。

手が入るか

工具や手で器具の取り付けを行うことを考えると、それらを容易に入れられる設計にすると良い。開口部の目安は、最低でもこぶしが入る80mm以上を確保すること。

器具が固定できるか

間接照明の器具を固定できないと、光源が波打ってしまう
カットオフラインが波打ち、直線でない。テープライトを扱う際は特に注意が必要だ。

遮光板などの障害物を避けてビスが打てるか確認する。遮光板が障害になり取り付けできないと予想される場合は、遮光板を後付けする設計も検討する。また、テープライトなどのフレキシブルな器具は、カットオフラインが波打たないよう平坦に固定できる設計にすると良い。

器具交換・電源交換が容易にできるか

器具交換などのメンテナンス作業が容易に行えるかも検討必須。

足場を組まなくても脚立などでアクセスできるかを確認。高天井や階段の直上などのメンテナンスが難しい場所は、昇降機やキャットウォークが設置できるか検討する必要がある。

電源ユニットが取り出せるか

別置の電源ユニットを納める点検口の位置を確認する。ユニットをボックス内に置く場合は、その大きさを考慮して十分なスペースを確保する。また、電源ユニットから器具の配線距離が長すぎると、電圧降下により明るさが減衰してしまう。メーカー推奨の長さに収まるよう、設置場所はあらかじめ検討しておく必要がある。



間接照明に最新LED照明を採用するメリット

間接照明がついたリビングルーム

今日、従来光源および初期のLED照明から最新LED照明へのリプレイスが進んでいるが、間接照明においても最新LED照明を採用・リプレイスするメリットは複数ある。ここでは間接照明に最新LED照明を採用すべき理由を挙げる。

コンパクトな施工が可能に

従来光源や初期のLED照明と比較すると、最新LED照明は全体的にコンパクトなサイズになっている。また、電源ユニットの設置スペースが不要な電源内蔵モデルもあり、よりコンパクトな施工が可能となった。これまで施工が困難だった造作や、什器などの狭いスペースでも、手軽に間接光を演出できるだろう。

間接照明の施工実例を見る

同じ設置数でも消費電力が少ない

最新LED照明は従来光源や初期型のLED照明と比較して、エネルギー消費効率(lm/W)が高い。つまり、同じ設置数でもより少ない電力で明るさを確保できることになるため、長期的なコスト削減につながる。

素材と相性の良い光を簡単に設定できる

以前の間接照明計画では、天井や壁の素材に合う光を演出する際、特定の色温度や光量を出す複数の器具を設置する必要があったが、調光調色機能付きのLED照明が登場した現在では、単体の器具で様々な色温度や光量を演出できるようになった。

また、天井や壁の素材が決まっていない場合や、急きょ素材が変更された場合でも、調光調色機能によりスムーズな修正が可能となる。

まとめ

今回は、間接照明に対する基本的な考え方や設計時に気を付けるポイントなどを紹介した。間接照明の設計の際は、今回のポイントを念頭に置くと良いだろう。

Writer
ヒカリイク編集部

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