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「新聞や本の文字が読みにくくなった」「以前と同じ明るさなのに、暗く感じる」
——年齢を重ねると、そんなふうに感じることが増えてくる。
実は、高齢者の眼は、「暗く感じやすい」のに「まぶしさも感じやすい」という特徴がある。
一体、加齢によって眼にはどんな変化が起きているのだろう。その理由を知ると、高齢者にとって見やすい照明を考えるヒントが見えてくる。
では、なぜ高齢者は「暗く感じやすい」のに、「まぶしさも感じやすい」のだろうか。
その背景には、加齢に伴う眼の機能や生体反応の変化がある。
年齢を重ねると、水晶体や瞳孔などに変化が生じ、眼に入る光の量や光の感じ方が若い頃とは異なってくる。
| 加齢による眼の機能の変化 | 見え方への影響 |
|---|---|
| 眼の筋力(毛様体筋)と水晶体の弾力低下 | ピントの調節能力低下(老眼) |
| 瞳孔が狭くなる | 暗くなると見えにくくなる、暗さへの順応が遅くなる |
| 水晶体が白く濁る・黄変する | 青色の光が見えにくくなり、黄色いフィルター越しに色が見える |
| 水晶体が白く濁る・黄変する | 透過率が下がり、暗く感じやすくなる |
| 水晶体が白く濁る・黄変する | 光が散乱し、眩しさを感じやすくなる |
つまり、高齢者の眼では、「暗く感じやすい」「まぶしさを感じやすい」「色の見え方が変わる」という3つの特徴がある。
例えば、新聞を読むといった日常の些細な活動でも、若い人と同じ照度では暗く感じることがある。
こうした見え方の違いは、照明の工夫によって補うことができる。高齢者にとって見やすい光環境をつくるために、照明でできることを見ていこう。
暗く感じやすい
高齢者は、若い人と同じ照度でも暗く感じることがあるため、照度を一段階高く設定することを検討したい。
JIS Z 9110:2024「照明基準総則」では、視機能が低い場合、視対象のコントラストが低い場合、精密な視作業を行う場合は、照度を一段階※上げることが望ましいとされている。
例えば、病室の推奨照度は100 lxだが、高齢者や眼疾患を抱えた患者が療養する病室では、一段階高い150 lxにすることを検討する。
また、空間全体で適切な照度を確保するとともに、読書や細かな作業など、より明るさが必要な場面では、手元灯などで必要な光を補うとよい。
(参考)照度基準とは?JIS照度基準の一覧と用途別の明るさ目安・設計への活かし方まぶしさを感じやすい
高齢者の眼はまぶしさに過敏になる傾向があるため、グレア対策も必要だ。必要な明るさを確保しながらも、光源からの強い光が直接眼に入らないように気を付けたい。
特に、グレアを感じやすいのは、指向性のある光を出す器具や、光源が露出している器具だ。
そのため、光源が通常より奥まった位置に設計されたダウンライトや、グレアを抑えるパネルで光源を覆った照明器具など、グレアレスタイプの照明器具を用いることが有効だ。また、光源と器具を隠して配置する間接照明も、柔らかく均一な光環境をつくる有効な手法の一つとなる。
高齢者のための照明計画では、明るさや配光だけでなく、「光源が直接見えるか」「光がどのように眼に入るか」にも気をつけよう。
色の見え方が変わる
同じ光の色でも、20代と80代では見え方に違いがある。年齢が上がるほど、光が黄色く見えやすくなる傾向がある。
そのため、高齢者では、黄みの強い低色温度よりも、青みの強い高色温度が好まれる傾向がある。
スーパーマーケットなどでは、シニア層の来店が多い朝の時間帯は、見やすさを確保するために高い照度・高い色温度に設定するとよいだろう。
「暖かみのあるカフェ」「爽やかで明るいオフィス」など、空間の用途や雰囲気に適した光色が設定されるが、同じ光色でも利用者の年齢によって見え方が異なることは覚えておこう。
①〜③は「見え方」に関するポイントだが、高齢者の光環境を考える際には、生体リズムにも目を向けたい。
高齢者は、加齢によってメラトニンの分泌量が減少するなど、生体反応にも変化が生じる。生体リズム(サーカディアンリズム)は光による影響を強く受けるため、見えやすさだけでなく、いつ、どのような光を浴びるかという生体リズムに配慮した視点も大切である。
例えば、朝は明るく高色温度の光でメラトニンの分泌を抑制し、夕方から夜にかけては明るさや色温度を落とし光の刺激を抑えることは睡眠サイクルの安定につながる。
「見えやすい」に加え、「生体リズムに寄り添う」ことを考える。
それも、高齢者の光環境を考えるうえで大切な視点である。
高齢者の眼では、加齢によって光の感じ方や色の見え方が変わることがわかった。一方、子どもの眼は、大人とはどのように違うのだろうか。
| 子どもの眼の特徴 | 照明で配慮するポイント |
|---|---|
| 大人より水晶体の透過率が高い | 明るく感じやすいため、過度な照度を避ける |
| 目線が低い | 光源が直接眼に入らないよう、光源の位置や照明器具を工夫する |
| 生体リズムが未熟で光の影響を受けやすい | 光の量・色・時間帯に配慮する |
子どもは大人よりも眼に多くの光を取り込みやすく、明るさを感じやすい。
また、大人より背が低い子どもは、大人とは異なる高さから照明を見ることになる。そのため、大人には気にならない光源でも、子どもの目線では直接見えてしまうことがある。
さらに、子どもは生体リズムが発達段階にあり、光の影響を受けやすい。
高齢者に配慮した照明計画と同じように、子どもにも、その眼や身体の特性に合わせた光環境が必要である。学校や保育園・幼稚園など、子どもが長時間過ごす空間では、「大人にとって快適な光」だけを基準にせず、子どもの視点から照明を考えてみよう。
同じ空間、同じ照明でも、そこにいる人の年齢によって、光の感じ方や見え方は異なる。
高齢者の場合は、加齢による眼の変化によって、若い頃と同じ照明環境でも、暗く感じたり、まぶしさを感じたりすることがある。
高齢者にとって適切な光環境をつくるには、十分な明るさを確保しながらグレアを抑え、色の見え方や時間帯にも配慮することが大切だ。
空間の用途だけでなく、利用する人の年齢や眼の特性にも目を向ける。
この視点が、より安全で快適な光環境づくりにつながるはずだ。
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