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色温度(ケルビン)とは? 照明での効果的な使い方も大公開!
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ものに当たる光の色によって、その物自体の見え方はかなり変わってくるが、「色温度」に注目することで、素材の魅力を最大限に引き出したり、空間の印象を変えることができる。 今回は、「色温度」とは何か、照明での色温度の効果的な使い方もあわせて紹介する。
ケルビン(単位記号は「K」)とはもともと絶対温度を表す単位で、0K=-273.15℃であるため「絶対温度(K)=摂氏(℃)+273.15」となる。
照明や光源の「色温度」を表すときにも用いられ、ある絶対温度まで熱された黒い物体(黒体)が放つ光の色と等しい。この黒体が放つ光の色を色度図上で表したものを「黒体放射軌跡」と呼ぶ。
色温度は、低色温度では赤く、色温度が高くなるにつれて青白い光色になる。
LED照明では、白熱電球のようなオレンジ色の光(電球色)はおよそ2700K、温かみのあるやや白みがかった光(温白色)はおよそ3500K、昼の太陽光に近い白い光(昼白色)はおよそ5000K、青みがかった光(昼光色)は6000K以上と表記される場合が多い。
照明の「色温度」は、空間の雰囲気・印象を決定づける大きな要素である。例えば、ゆったりと過ごしたいレストランやBarは暖炉の火のようなオレンジの光(色温度低めの光)、逆に快活に過ごしたいフィットネスジムやテキパキと働きたいオフィスは青みがかった光(色温度高めの光)が、その空間の目的に添う。
照明器具の色温度を1台の照明器具で調整することは最近まで技術的な難易度が高かったが、技術の進歩により焚火のような赤い1800Kから晴天の青空に近い12000Kの色温度の光まで1台で再現できるLED照明が登場している。以前よりも色温度調整を駆使した空間づくりが簡単になったのは言うまでもない。
そこで、今回は色温度調整をフル活用した照明テクニックと、実際の事例をご紹介する。
なお、色温度が固定されている照明器具でも、設置場所や部屋に応じて異なる色温度の照明器具を使用するなど工夫することで、下で紹介する照明テクニックは実現できる。
ただ、現場の壁・床の色やオーナーのご意向などに合わせて調色でき、施設の改装やニーズの変化による再調整も簡単な照明器具を使用したほうが、より理想的な仕上がりを狙いやすくなるだろう。
空間に対する色温度選定は上述のように、その空間イメージを左右するものであるが、色温度調整により、さらにシチュエーション(行動や作業目的)に応じた変更が可能となる。
昨今の研究により、光が人の集中や作業効率に影響を与えることがわかってきた。例えば、高い集中力が求められる仕事や作業を行う際は、高色温度(約4000K以上)に調整するとよい。交感神経を活発にし、エネルギッシュな活動を可能にするとされている。
一方で、作業記憶(情報を一時的に記憶しておくこと)を要する読書や勉強などは、低色温度(約1800K~2700K)に調整すると、効率が高まる可能性があるそうだ。
人間に元々備わっている規則正しい1日の体内リズム(サーカディアンリズム)を整えるうえで、光は重要な役割を持っている。
室内で生活する時間が多い現代の環境でも、昼間は日中の太陽光に近い高色温度の白い光を浴び、夕方から夜間にかけては低色温度の温かみのある光に切り替えることで、睡眠を促すホルモンであるメラトニンが分泌されるようだ。
体内リズムの調整をサポートするためには、調色機能による色温度の調整によって室内に自然光と同じような1日の流れを作り出すことが有効である。
ランチを想定した24種類の料理に、色温度を調整した光を当てて、食欲がそそられるかどうかを調べた(※)。
結果は、赤や茶色の色要素が多い料理(ほとんど焼く、炒める、煮るといった方法で火を入れた料理)や肉料理は低色温度の方が食欲をそそられ、黄色や緑色の色要素が多い料理(サラダや冷製料理、ボイルした料理が多い)は高色温度のほうがそそられると分かった。
また、色のばらつきが大きい料理は被験者が注視した食材がそれぞれ異なるため、美味しそうに見える色温度のばらつきが大きいようだ。引き立たせたい食材によって色温度を変えるとよさそうだ。
※:遠藤照明による「Synca」を用いた食欲をそそる光の実験(2023)
異なる色温度の光を組み合わせるテクニックもある。光色の色温度に差異(コントラスト)をつけると、対比効果により見せたい光色を際立たせることも可能だ。
調整の際に気を付けたいのは、光の色が混ざらないようにすること。すべての光源を同じ色にすると、目が光の色に順応してしまい(色順応)、ペンダントライトの色を感じにくくなる(写真左)。印象的に見せたい場合は、ペンダントライトと空間に満ちている光を対比させることで、それぞれの光の色が鮮やかに見える。
サンフロンティア不動産株式会社が手掛ける「リプランニング®」とは、働く方々の状況をイメージしながらオフィス用不動産の再生を行う事業のこと。
次世代調光調色「Synca」と無線調光システム「Smart LEDZ」を活用した提案を行っている。
実際にテナントに入る企業からの声をヒアリングすると、昼間は全力で仕事モードなので色温度は高めに、ラウンジなどくつろげる場所では色温度を落とすなど、同じフロアにいながら数歩歩くだけで集中とリラックスを切り替えることができるため、照明の色が変わるだけモチベーションが上がるのだとか。仕事の効率も上がったとの声も届いているようだ。
2002年の丸ビル開業時より営業していた地下1階のフードゾーン「マルチカ」が全面リニューアル。その共用部に採用されたのが次世代調光調色「Synca」。
オフィスエリアで働く方が出社時・お昼・帰宅時に利用されることを想定し、まるで外光のように時間帯で色温度と明るさが移り変わるように設定されている。
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