■ヨコミゾマコト■


パネル

真壁
 最後、ヨコミゾマコトさん。これもやはり、ある種のミニマリズムの考えです。やはり、ここに妙な世代感覚が出ているなという感じがしますね。彼が一番、年が上なんですけれども。今までの世代と、光に対するコンセプチャルというのが、少し違いますね。


 これは遠藤照明のショールーム4Fを使った、光源が一切目に飛び込まないで、様々なオブジェクト、あるいは床や椅子がぼうっと光っているような生活感、そういうものをスタディーしたい、つくり出したいということですね。おそらくこれもかなり、ある種のポエティックな暮らし方、作品になっていくんだろうと思います。


 ちなみに冒頭で、今、建築が大きく動き出したと申しましたが、つまり、この軽い時代の中でも、何か心の再生、あるいは人とのつながりだとかということに主眼が置かれた、ある種の新しい社会性を持ち出した建築が増えてきたと思います。その中の一つとして、こういうとらえ方も、今はやりの言葉でいうとシームレスというあかりのとらえ方ではなかろうかと思いますね。


イメージ

石田
 そうですね。時には全体が光ったり、時には部分的に光ったり、また色が変わったりということで、やはり、ここにもまた光が住んでいる。ここでは、井上さんとは少し違って、住人のためにもともといる、もともと彼が住んでいる部屋に入り込んでしまったような、そんな感じがあったほうがおもしろいかなという気がしています。


真壁
 この中に、パートナーとしてのあかりがついているというようなことですか。


石田
 そうですね。時には全体が光ったり、時には部分的に光ったり、また色が変わったりということで、やはり、ここにもまた光が住んでいる。ここでは、井上さんとは少し違って、住人のためにもともといる、もともと彼が住んでいる部屋に入り込んでしまったような、そんな感じがあったほうがおもしろいかなという気がしています。


真壁
 ここへ光が進入してきたということですか。


石田
 もともと光の住んでいる家に住んじゃったという感じです。先に住人がいたという感じですね。この真っ白で何が何だかわからないというのが、まず一つ魅力ですよね。ですから、本当はそこにだれかいるんだよというような、そういうイメージを持ったものですから、このプロポーザルを読んだときは、井上さんのものと似ているんじゃないかなと思いました。


 そういう意味で、全体が真っ白く輝いたり、部分的にどこかが光ったり、たまに自分の思いどおりのところに光が来てくれたりというような、光の遊びができると思います。でも、すごくやわらかい光で、空間全体が常に明るいので、生活にはいいんですけれども、何かもう少し遊んだ光があれば、おもしろいなと思っています。


真壁
 一般的には、天井面に光があって床面を照らしているのですが、ここでは逆に、あかりの上に一枚被覆されているものがあるということで、様々な種類のあかりが出てくるんだろうね。


石田
 本当に様々なことができてくるだろうなと思われます。ここに生活したいかしたくないかというのは、また別問題ですが、色が変わるとか、強さが変わるとか、光る面積が変わるだけではなくて、パターンが出たり、すごく真っ赤になって嫌な空間をつくってみたりというのもあるのかなと思ったりしています。


伊藤
 このヨコミゾさんの案は、作品的にはもうこれで完結してしまうようなプロポーザルだとは思うんですけれども、照明で何かやるとすれば、やはりプログラムを組んで、光と影を動かすということが考えられますね。しかし、ただいたずらに動かすのではなくて、かなりパターン化された、美しく光と影がゆっくりと動くような効果をねらいたいですね。


 何が言いたいかというと、太陽が1日のうちに動いて、住宅空間の中の光と影が徐々に変化しながら夕暮れに移っていくという、光と影の動きですね。そういう太陽の動きによって、住宅の中に光の動き、影の動きがつくられるということをもう少し意識して、その中で照明や住宅を考えていく一つの大きなきっかけになればいいと考えています。動かすとかなりおもしろい動きをのではないかと思いますので、ぜひやってみたいです。


真壁
 最後に、村角さん。


村角
 ヨコミゾさんのこの画面が、ものすごくファンタジーを感じさせるような写真だったので、妖精のイメージでやったらどうだろうと思いました。


 例えば、家具の中にLEDが入っていて、それがただふわふわするというのもすごくきれいなんですけど、人にくっついてくるという意味で、寝転がったときには、ふーわ、ふーわとしているけれども、ただ座っているときにはキラキラキラキラッとしているなど、人の座り方に光の動きが連動する、点滅が連動する。ちょっとしたことでも、光の動きと座り方がデリケートに連動するのもおもしろそうだなと思いました。


 それから、家具の上に布をかぶせるので、家具の陰影も、やはりきれいに見せられたほうがおもしろいと思ったので、影がきれいに出るような、上からの光もあるといいかなと思いました。


真壁
 少し抽象的な言い方をすると、呼吸するあかりというニュアンスですかね。


村角
 私の頭の中では、「風の谷のナウシカ」とお姫様みたいなイメージだったんですけど。


■最後に……■


真壁
 さて、大変長時間、6人の建築家によるプロポーザル、及びそれに対する6人の照明家のコメンテート、プロポーザルをかいつまんでご説明申し上げました。


 冒頭申し上げたように、今、「くらしとあかり」を考えていく中で、共通する主題がどの作品にも織り込まれていて、実際どういうようなプレゼンテーションとして皆さんにご披露するかというのは、これから大変悩ましいところではあるけれども、その間に何か学んでいくことも大いにあるのではなかろうかと思います。


 そして建築家と照明家のこういうコラボレーションというのが、今後さらに活発になっていけば、もっと豊かな作品、心に残る作品ができてくるだろうなと思っております。


 今日は、このあと少し懇親をしながら、壁のパネルをもう一度見て、いずれにしましても、あかりというのは互いにセンスを要求するものでありますので、建築家のセンスと照明家のセンスを見て、どのマッチングがいいかというのを、アンケートでお答えいただき、事務局の資料にさせていただけたら幸いです。


事務局
 どうもありがとうございました。今日は本当に中身の濃いお話をたくさん聞かせていただきました。建築家の皆さん、照明家の皆さん、どうもありがとうございました。企画会議そのままを見ていただこうということで、お客様にはちょっと見づらいシチュエーションだったかもしれませんけれども、話の中身は非常にレベルの高いものだったのではないかと思います。


 今、真壁さんのほうからご案内がありましたように、入り口でお渡ししましたアンケートにご協力をお願いします。


真壁
 建築家同士、結ばないように(笑)。


事務局
 お帰りの際には、受付のほうでお出しいただけるようにお願いいたします。それでは本当に長時間、どうもありがとうございました。(拍手)


-終了-