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「輝度」の大切さ

2022.5.26
「輝度」の大切さ

個人の感覚や感性が含まれる「明るさ」を客観的に数値化したものが「輝度」と「照度」だ。それぞれの関係と、適切な使い方をご紹介する。

照度 ≠ 私たちが感じている明るさ

そもそも“明るさ”とは何を指すのか?
私たちは、光環境を評価する際に、専門家であるか否かに関わらず、「明るい」「暗い」という言葉を使う。しかし、「明るい」「暗い」という言葉には個人の感覚の差や曖昧さが含まれている。
“明るさ”を心理物理量として数値化したものが「照度」と「輝度」だ。

照度

単位面積当たりに入射する光の量を示す。
光源によって照らされている面の明るさの程度が表される。
単位はlx(ルクス)。


輝度

光源や被照面が発するある方向への光度を、その方向への見かけ上の面積で割った値。
人の目に入る光の量を表す。
単位はcd/m2(カンデラ毎平方メートル)。

照度は「ある面にどれだけの光が到達しているか」を示すのに対し、輝度は「その面を反射した光が、ある方向から見ている人の目にどれだけ届いているか」の指標となる。
現在の照明計画で一般的に用いられているのは、水平面(机上面や床面など)の照度分布だが、私たちが実際に感じている“明るさ”を表現しているのは、照度分布ではなく、輝度分布である。

照度と輝度の比較表

照度・輝度

輝度とともに知るべきこと

輝度対比

薄暗い場所だと文字を読みづらく感じるように、私たちの目が視対象を認識するには、視対象とその背景に一定以上の輝度の違いが必要となる。この違いを比で表したものが「輝度対比」であり、違いを認識できる輝度の最小の差分を「識別閾」と言う。
輝度対比は、明視性や明るさの感じ方に大きく左右する。同じ輝度の視対象であっても、背景輝度が高いと対象は暗く見え、反対に背景輝度が低いと明るく見える。

グレア(glare)

たとえば、夜間、車を運転しているときに対向車のヘッドライトの光に目がくらみ、近くの歩行者が見えにくくなる。このように、極端に強すぎる輝度によって、見え方の低下や不快感が生じる現象を「グレア」と言う。グレアは照明環境の快適性を損なうため、グレアが起きないよう輝度が制限された照明器具もある。

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輝度の設計からできること

照度分布ではわからなかったことが、輝度分布を用いると見えてくる。
ここでは、輝度の設計によって“できるようになること”を具体的に紹介する。

(1) 明るさ感の向上

人間の視線は、下(=床などの水平面)ではなく前方(=壁などの鉛直面)に向けられていることが多い。つまり、床ではなく壁や柱を重点的に照らすことで、私たちが目にする明るい面を増やし、空間の“明るさ感”を向上させることができる。

明るさ感の向上
明るさ感をビジュアル・数値化できるアプリとは

(2) きらめきの演出

きらめきの演出

シャンデリアや夜景は近くで見るとまぶしく感じるが、遠くから見ると美しくきらめいている。このように、たくさんの細かくて強い輝度の変化によって、意識的にきらめきをつくり出すことができる。きらめきの演出は、ジュエリーや眼鏡、自動車など、光を強く反射する商品を取り扱う店舗等で、効果的に用いられる。

(3) 境界を消す

私たちの目が視対象を認識するには一定以上の輝度対比が必要だが、逆に輝度対比を小さくすれば、対象のエッジをぼかし、“境界を消す”ことも可能だ。
ミース・ファン・デル・ローエ設計のファンズワース邸は、入口手前から見ると、真っ白な天井とその背景に広がる空の輝度がほぼ等しくなる。これにより、通常感じるはずの建物と屋外との境界線がぼやけ、ファンズワース邸の魅力の一つである「内外の連続性」をつくり出している。

参考文献:『光の建築を読み解く』日本建築学会編/彰国社(2015年)


照明計画で照度分布が用いられてきた背景には、輝度計算の難しさがある。輝度は、視点と視線方向を決定しないと定義できず、かつては計画段階で恒常的に扱うのは困難だった。

しかし、照明シミュレーションソフトの発達により、簡易計算による輝度分布の算出が可能となっている。計画段階から輝度分布での検証を積極的に行えば、計画と現実空間とのギャップを小さくすることができるはずだ。

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