照度と色温度には、人間が感じる快適性と関わる「クルーゾフ(クルイトフ)効果」と呼ばれる法則がある。今回は、クルーゾフ効果とは何かを紹介するとともに、そこから応用されるエネルギーに類する効果を紹介する。
クルーゾフ効果とは?
クルーゾフ効果の説明をする前に、「色温度」と「照度」について解説する。
「色温度」(K[ケルビン])は、光の色を表す単位で、黒体に高熱を加えた際に放出される光の色を、その時点の黒体の温度で表したものである。色温度が低いほど赤みがかり、高いほど青みがかった光色になる。
「照度」(lx[ルクス])は、光源によって照らされた面の明るさを表す単位である。正確には、単位面積あたりに入射する光の量で、日本のJIS規格「JIS Z9125」では、場所の用途や作業内容によって照度の基準が定められている。
この色温度と照度の関係を表したものが、オランダの物理学者A.Aクルーゾフによって1941年に発表された「クルーゾフ効果」であり、その光が快適、もしくは不快だと評価される傾向がある色温度と照度の領域を表している(上図参照)。
例えば、自然の風景を思い浮かべると、昼の青空(高色温度×高照度の空間)や、夕焼けの空(低色温度×低照度の空間)は快適で心地よい。したがって、上図の2つの点線に囲まれた「快適な」領域は、快適であると想像しやすい。
一方で、曲線から上にはみ出ると、一般的に「暑苦しく不快な印象」の空間になると言われており、逆に、曲線から下にはみ出ると「冷たく不快な印象」になると言われている。
クルーゾフ効果における「快」「不快」の領域とは?
実際に、不快とされる領域の色温度×照度の光を再現してみた。なお、再現には色温度と照度を自在に変更できる、次世代調光調色シリーズ「Synca」を使用している。

下の4画像にて、それぞれ上記グラフ上の①~④の部分に相当する領域の光を再現している。

①低色温度×高照度(床面照度2,000lx、色温度1,800K)
上の写真は、①の「低色温度×高照度」の領域で、少し圧迫感と暑苦しさを感じた。

②低色温度×低照度(床面照度60lx、色温度2,400K)
②は「低色温度×低照度」の領域で、夕暮れの日の光のような落ち着きのある空間だと感じた。

③高色温度×低照度(床面照度62lx、色温度12,000K)
③は「高色温度×低照度」の領域で、作業や業務を行うには物足りない印象だった。

④高色温度×高照度(床面の照度3,200lx、色温度12,000K)
④は「高色温度×高照度」の快適な領域で、清潔感があり、目が覚めるような空間だと感じた。
このように、色温度と照度には、人間が感じる快適さという点で密接な関係がある。さらに、このクルーゾフ効果を応用すれば、人間にとって快適な環境を維持しながら節電もできるようになるのだ。
クルーゾフ効果を応用した節電効果について
クルーゾフ効果を応用することで、消費エネルギー量の削減が実現する。上で述べた通り、低色温度の光は低照度の環境で快適だと感じられるため、調光調色機能付きのLED照明で低色温度時の照度を下げることで、快適性の向上とエネルギーの削減につながる。
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「HUE-HEAT効果」を応用した照明設計
さらに「HUE-HEAT効果」も応用した照明設計も考えられる。
「HUE-HEAT効果」とは、同じ室温でも、オレンジ色などの低色温度の照明下では暖かく感じ、青などの高色温度の照明下では涼しく感じるという効果のこと。この効果を応用することで、室温を上下させず照明の色を変化させるだけで体感温度が変わるため、冷暖房費の削減を狙うことも可能となる。
照明設計においては、夏は高色温度、冬は低色温度に設定し、暖かくしたい・涼しくしたいといった要望が出た際に、都度色温度を切り替えられるような調光スケジュールを組むことで実現できるだろう。
【出典】『日本建築学会東海支部研究報告書2018』(岡田祥,三木光範ほか)より
おわりに
約80年前に提唱されたクルーゾフ効果であるが、定義の分かりやすさと実体感との近さから、今の照明計画においても大切な指標である。さらに調光調色が容易になったことで、この関係性を活用することで、照明の消費電力だけでなく、空調負荷を最適化する効果も発揮する。「快適性」と「エネルギー」を両立した照明設計に役立ててほしい。
一方で、この80年の間の技術革新により、現代のLED照明の環境下ではクルーゾフ効果に当てはまらないケースもあるようだ。気になった方は下記『クルーゾフ効果を再検証する』を確認してほしい。
『クルーゾフ効果を再検証する』を読む
Writer
ヒカリイク編集部
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