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オフィスや商業施設などの節電・電気代削減に!照明の改善ポイントを徹底解説

2022.8.19
オフィスや商業施設などの節電・電気代削減に!照明の改善ポイントを徹底解説

エネルギー不足や電力のひっ迫が囁かれる現代だが、オフィスや商業施設の心地よい空間づくりにおいて照明は欠かせない。 今回は、節電対策や高騰している電気代の削減にも役立てながら、照明をより良く改善するためのポイントをご紹介する。

照明運用による節電の重要性

近年広がっているSDGs運動のひとつとして、不足するエネルギーに関する目標があげられている。日本でも2022年6月末、東京電力管内の電力需給が厳しくなる見込みであることから政府が「電力需給ひっ迫注意報」を発令したことは記憶に新しく、発令を受けて圏内の商業施設・百貨店は外構照明の消灯といった節電対策を強化した。

資源エネルギー庁の発表によると、2020年度の日本のエネルギー消費量のうち、家庭におけるエネルギー消費は15.8%であり、その他のエネルギーは企業・事務所等や運輸部門で消費されている(※1)。そのうち、照明の使用割合は、夏季の家庭で14.9%、オフィスビルでは23.1%を占める。(※2)。

節電が重要な課題となっている現代だが、家庭はもちろんオフィスや商業施設の運営において照明は大きな役割を担っている。消すことではなく照明の運用によって、節電対策をしながら高騰している電気代の削減まで叶えるには、どのようなポイントを改善していけばよいのだろうか。

オフィス照明

※1:資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書 2022)」第1章 国内エネルギー動向p.79より (https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/pdf/
※2:資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」夏季の省エネ・節電メニュー(ご家庭の皆様)8エリア版p.2、夏季の省エネ・節電メニュー(事業者の皆様)8エリア版p.3より (https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/shoene_setsuden/

節電に効果がある、施設照明の改善ポイント

POINT1:従来光源からLEDへの交換(リプレイス)

LEDと聞くと、省エネというワードを思い浮かべる方も少なくないのではないだろうか。

実際に電球を比べても、同じ明るさを得るのに白熱電球では60W必要なところをLED電球では10W程度と約6分の1、蛍光灯でも、通常のものでは40WなのがLEDでは3分の1程度の約13Wと、消費電力量の大幅なダウンが期待できる。通常の電球と比べて価格は高くなるが、かかる電気代も比例して減少する上に長寿命という特長もあるため、長期的に見るとお得だという点もメリットだろう。

LEDへの交換を行えば、現在の明るさを保ったまま、または更なる明るさの改善とともに節電・電気代削減に取り組むことができる。

LED

POINT2:LEDから新LEDへの交換(セカンドリプレイス)

2011年の東日本大震災を機に省エネの動きは加速し、LEDの普及は一気に進んだ。しかし、当時設置されたLEDもすでに10年以上経過している。LEDの寿命は約4万時間、1日10時間の点灯でおよそ10年ほどと言われており、それを超えると故障率は高くなり、明るさも衰えていってしまうのだ。さらに、LED照明自体もより高効率のものが開発されている。

現在LEDを採用している施設であっても、最新LEDへの交換を行うことでさらなる省エネに繋げられる。

POINT3:適光適所による照明運用

単純な消灯に頼らない節電のためには、適光適所というワードが重要になる。適光適所とは、空間全体を均一な明るさ・光色にするのではなく、作業ごとやエリアごとに適切な明るさ・光色を確保するということだ。

適光適所は、制御システムの活用でより効率よく実現することができる。高機能な調光システムを利用すれば、例えば人感センサーを利用して自動で使用状況に合わせた明るさにしたり、時間帯や使う人によって明るさや色を調節したり、といったことが、人の手を煩わせることなく可能になる。人手不足の施設でも、従業員に綿密な教育を行うことなく自動運用できるのも良いところだ。

適光適所
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POINT4:調光調色による照明運用

POINT3で説明した制御システムの利用に加えて、システムと連動した調光調色機能付きの照明器具を併せて活用するとさらに効果的だ。

調光調色器具による照明の運用を行えば、時間帯や光の色温度によって照度を変え快適性や生産性を高めたりすることができる。適切なコントロールをすることで施設を利用する人にとって心地よい空間を作り上げながら、過剰な明るさを抑えることで省エネ・節電につなげることができるのだ。

調光調色
「調光調色」機能とは? メリット・デメリットを紹介!

節電に成功している実際の空間事例

では、前項であげた改善ポイントを取り入れた照明計画で、実際に節電に成功した事例をいくつかご紹介する。

オフィスにおける節電事例

三菱マテリアル 本社オフィス

「三菱マテリアル 本社オフィス」

まずはこちらの事例。こちらでは最新LED導入に加えて、無線調光システムを利用しての時間帯にあわせた調光調色を行う照明運用で 24%節電に成功した。【調光調色】【適光適所】
「三菱マテリアル 本社オフィス」事例詳細はこちら

新宿センタービル 1階ロビー・ELVホール 照明改修

「新宿センタービル 1階ロビー・ELVホール 照明改修」

新宿の高層オフィスビルの1階ロビー。従来利用されていた光源(放電灯)から LEDへの変更によって省エネを図るとともに、昼光センサーによる太陽の明るさに応じての照度調整や人の流れに応じたコントロールなどの照明運用で、83%もの電力削減を実現。【リプレイス】【適光適所】

「新宿センタービル 1階ロビー・ELVホール 照明改修」事例詳細はこちら

商業施設における節電事例

ソフトバンク表参道

「ソフトバンク表参道」

ガラス張りの路面店であるこちらでは、従来光源(蛍光灯)からLEDへの変更で24%の節電に成功。加えて、店舗・商品を目立たせることや居心地の良い空間を目指して、時間帯やお客様の混雑状況等に応じた調光調色などの照明運用で結果的に46%節電。【リプレイス】【調光調色】

「ソフトバンク表参道」事例詳細はこちら

NewDays 秋葉原

「NewDays 秋葉原」

駅改札口に位置するこちらのNewDaysでは、24 時間の営業中の適切な照明運用のため、時間帯に合わせた24時間スケジュールによるLED照明の自動調光・調色で 31%の節電を可能に。【調光調色】
「NewDays 秋葉原」事例詳細はこちら

ソラリアプラザ 1F リニューアル

「ソラリアプラザ 1F リニューアル」

リニューアルオープンに合わせ、従来の光源(蛍光灯)からLEDダウンライトへのリプレイスで28%の電力を削減。さらに、長い開放時間の中でフロアの雰囲気を変えるため時間帯別の調光調色による照明運用を開始。心地よい雰囲気の演出と同時にあわせて60%の節電に成功した。【リプレイス】【調光調色】

「ソラリアプラザ 1F リニューアル」事例詳細はこちら

公共施設における節電事例

君津市本庁舎

「君津市本庁舎」

従来の蛍光灯から器具をそのまま活用したLEDへの交換、また調光制御システムを利用できるモジュールを導入し場所ごとのグループ設定を行い調光する照明運用で、LED化のみでは57%のところを70%まで削減することに成功。【リプレイス】【適光適所】

「君津市本庁舎」事例詳細はこちら

学校施設における節電事例

浦安市立堀江中学校 屋内運動場

「浦安市立堀江中学校 屋内運動場」

建物の耐震補強に伴うリプレイス事例。学校施設ということもあり、安全面も考慮し従来使われていた水銀灯から耐震性能の高いLEDへの交換が行われ、72%の省エネを実現。【リプレイス】
「浦安市立堀江中学校 屋内運動場」事例詳細はこちら

工場・倉庫における節電事例

株式会社縣鉄工所 本社工場

「株式会社縣鉄工所 本社工場」

既存の照明位置や配線はそのままに、従来光源(放電灯)からLEDの置き換えを行い71%の節電に成功した。作業効率を向上させるため明るさも改善しながら、電気代も年間約300 万円削減可能となる。【リプレイス】

「株式会社縣鉄工所 本社工場」事例詳細はこちら

株式会社ジョイフル本田 物流推進室 小川倉庫

「株式会社ジョイフル本田 物流推進室 小川倉庫」

従来の光源である水銀灯では点灯に時間がかかり、作業のタイムロスになっていたが、瞬時に点灯できるLEDに変更。作業効率をアップさせ、同時に65%の節電を実現した。 【リプレイス】

「株式会社ジョイフル本田 物流推進室 小川倉庫」事例詳細はこちら

まとめ

今回の記事では、照明の運用改善によって節電・電気代の削減を叶えるポイント、またそのポイントを踏まえて節電対策を行った実際の事例についてご紹介したが、いかがだっただろうか。

エネルギー不足の問題に直面する現代において、個人にとっても企業や施設の運営にとっても、節電は重要な課題となっている。だが、人々の生活のなかで照明がもたらす効果はとても大きい。

ただ節電のためと照明を消すのではなく、適切な照明運用によって、無理なく、照明環境をより良く改善しながら節電に貢献しよう。

Writer
ヒカリイク編集部

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