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バイオフィリックデザインとは、人間が本能的に求めている自然や生命とのつながりを人工空間に取り入れた空間デザインのことを指し、アメリカの生物学者エドワード・O・ウィルソンが1984年に提唱したバイオフィリアという概念を語源とする。
狭義には、特に緑化を施した空間や建築を指すことが多い。
今日では、ウェルネス改善の観点からバイオフィリックデザインを導入する企業が増えている。しかし、導入後数か月から数年で植物が枯れてしまう事象が発生することも多い。それは単に植物への水やりや肥料やりなどのケアが徹底されていなかったという原因もあるが、実は「光量」の問題も見落とされがちである。
そもそもオフィスは、構造上の制約で天窓や採光窓がない場合が多く、窓から遠い場所に植物が配置されることも多いため、植物は慢性的な日照不足に陥りやすい。
それでは、室内のバイオフィリックデザインでは、基本的な水やりなどのケアの他にどんな対策が必要になるのだろうか。
まずは植物に合った量の光を照射することだ。植物の維持には一般的に1,000lx~3,000lxの照度が必要であり、種類によって光が当たる窓際を好むものと、直射日光を当てると枯れてしまうものがある。必要な照度は植物によって異なることは覚えておきたい(参考論文1)。
十分な光が差し込まない場所ではそれぞれの植物に適した照度で光を補うとよい。光が足りていない場合は夜間に常夜灯で補うこともできる。
・ディフェンパキア
・テーブルヤシ
これらの植物は、耐陰性が高く、500lx~1,000lx程度の空間でも成長できる。窓際から離れたテーブルなどに置いてもよい。
・ポトス
・モンステラ
・サンセペリア
これらの植物は、1,000lx~2,000lx程度の空間を好む。
・ゴムノキ
・パキラ
・ユーカリ
これらの植物は、2,000lx~5,000lx程度の空間を好む。
・ヘンヨウボク(クロトン)
・アロエ
これらは、窓際のカーテン越しの日光など、強い光を好む。日中の照度を十分に確保できない場合は、5,000lx以上に照明設計すべきだろう。
植物に適切な量の光を当てるだけではまだ不十分で、照射する光の波長にも注意が必要だ。
葉や茎の成長に必要とされる400~500nmの波長を多く含む「青い光」と、光合成に必要な600~700nmの波長を多く含む「赤い光」が植物の育成には欠かせない。
詳細は下記リンクからご確認ください。
バイオフィリックデザインはあくまで人間が利益を享受するものなので、植物が元気に育成すればそれでいいというわけではない。植物が人間の目に美しく見える必要がある。そのためには、色温度や色偏差(Duv)を調整することが効果的だ。
色温度に関しては、全般照明よりも少し高い色温度の局部照明で植物を照らすときれいに見え、Duvについては、緑色を強調したい場合はDuvの数値を大きくする(Duv+にする)ときれいに見える。
電球色3000Kの空間(飲食店)と、昼白色5000Kの空間(オフィス)で、植物を照らすスポットライトの色温度とDuvを変えて実験したところ、飲食店では3800K・Duv-(マイナス)~0( ゼロ) が、オフィスでは5400K・Duv+(プラス)が、それぞれ植物が美しく見えるという回答が多かった(*1)。
同じ色温度でもDuvによって植物の色味が違って見えるので、調光調色できる照明器具を導入し、空間デザインの意図に応じて調整するとよい。
*1:遠藤照明による「Synca」を用いた植物の見え方の実験による
室内のバイオフィリックデザインに欠かせない要素である「照度の調整」「光の波長の調整」「色温度やDuvの調整」だが、これら全ての条件を満たすためには、「調光調色」機能やカラー切り替え機能のある、遠藤照明の「Synca」の導入が最適だろう。
「Synca」は、0%~100%の細やかな調光や、121色の幅広いカラー切り替え、1,800K~12,000Kの幅広い色温度の再現やDuv調整を1台で実現した次世代のLED照明だ。
室内の環境や植物の種類に応じて、最適な光環境を作り出せるため、室内のバイオフィリックデザインでの採用例も多い。今回はその中でも特徴的な3例を紹介する。
「HITOHACHI 成城コルティ店」は、植物観賞を手軽に楽しめるように、植え替えしやすい状態で引き渡す観葉植物専門店。人間と同じように、植物のバイオリズムに見合う光を提供すべく次世代調光調色「Synca」を採用した。
朝は色温度4000K・調光率80%、昼は色温度6000K・調光率100%、夕方は色温度3500K・調光率80%、夜は色温度3000K・調光率50%というように、細やかに調整している。
東京の主要エリアの中心地に建つ、地下2階、地上27階の超高層オフィスビル。人が行き来する11階のスカイロビーに「Synca」を採用し、最長の60分のフェードタイムで、なだらかに光が推移するように設定している。また、スカイロビーのシンボルである植栽には1,500lxの照度を確保。夜間のみ2500K・Duv-6で調光することで、植物によいとされる波長の光を当てて育成も試みている。光の演出で植物を美しく保ち、オフィスワーカーに潤いを与えている。
東京・新宿区にある遠藤照明の体験型オフィス「Synca U/X Lab」では、照明を駆使した実験的なバイオフィリックデザインが施されている。
観葉植物が植えられている「アウトドアリラックスゾーン」では、あえてブラインドを閉じて昼光をほとんど入れず、「Synca」の人工照明のみで植物の育成を行っている。夜間“植物育成の光”として、植物の光合成を促す赤色の光と、茎の形成を促す青色の光を照射することで、植物の適切な成長を促しているのだ。
また、フェイクグリーンが施されている緑化壁は、照明のDuv調整をすることで、まるで本物の植物のようにいきいきとした見た目になっている。
[参考論文一覧]
1: 洞口公俊(1995)「インドア・グリーナリーの光放射環境」『 照明学会誌』, 79, (4), 155-159. https://doi.org/10.2150/jieij1980.79.4_155
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